人気の株主優待銘柄には、コロナ直撃で業績不振が多い

 小売り、外食、空運、サービス業には、個人投資家に人気の株主優待銘柄が多数あります。しかし、小売り、外食、空運、サービス業には今、コロナ・ショックで業績に深刻なダメージを受けている銘柄がたくさんあります。中には、「減配」「優待の改悪」を発表し、株価が下がる銘柄もあるので、注意が必要です。

 新型コロナが去れば業績が急回復すると期待できる銘柄はまだいいですが、コロナ後も構造的に収益低迷が続くと考えられる銘柄には投資すべきでありません。

 一部の優待投資家に、優待内容の魅力だけ見て、業績をほとんど見ない方もいらっしゃいますが、今は、業績・財務内容・ビジネスの中身(コロナに強いか)もしっかり見て、投資銘柄を選別すべきと思います。

まずは、人気トップ60【注】をご覧ください。
【注】人気トップ60
8月19日現在、日本の上場企業で、株主優待を実施している銘柄は1,484。楽天証券の中で保有している株主の数が多いほど、人気が高いと判断し、保有株主数の上位60社をピックアップ。

株主優待を実施している銘柄の人気トップ60

出所:楽天証券「株主優待検索」

 上記は、推奨銘柄ではありません。楽天証券株主優待検索で得られた情報をそのまま掲載しています。上記には、筆者が投資すべきでない」と考える銘柄も含まれています。また、第3位に入っている楽天について、筆者は投資判断を述べることはできません。

コロナに強いと筆者が判断する4銘柄を選別

 2020年4-6月期決算がほぼ出そろいました。4-6月は、日本のGDP(国内総生産)の速報値が前期比年率▲27.8%と戦後最悪の落ち込みとなり、企業業績もかなり厳しい結果となりました。8月17日の日本経済新聞によると、東証一部の純利益が前年比で▲57%落ち込みました。

 その4-6月でも業績堅調、収益基盤が堅固、財務に問題ない銘柄を、優待人気上位60社の中から選別しました。具体的には、以下3条件を満たす銘柄を抽出しました。

【1】    業績堅調: 4-6月の連結営業利益が前年同期比で増益または5%未満の減益
【2】    収益基盤が堅固: 4-6月の営業利益率が10%以上
【3】    財務に問題なし: 自己資本比率35%以上

優待人気トップ60のうち、上記3条件を満たす4銘柄:2020年8月19日時点

人気順位 コード 銘柄名 優待月 優待内容
5 2914 日本たばこ産業 12月 優待内容
12 9433 KDDI 3月 優待内容
17 2702 日本マクドナルドHD 6月・12月 優待内容
30 9432 日本電信電話 3月 優待内容
出所:楽天証券「株主優待検索」および各社決算資料より、楽天証券経済研究所が作成

 表の優待内容をクリックすると、優待の詳細が確認できます。

 日本たばこ産業の優待は、1年以上保有している株主のみに贈られます。従って、今から投資しても優待が得られるのは2021年12月からとなります。他の3銘柄は保有1年未満でも、優待は得られます。

 なお、優待内容は、予告なく変更されることもあります。常に最新の情報をチェックしてください。楽天証券ウェブサイトでは、1カ月ごとに優待内容を更新しています。
 上記4銘柄を選別した根拠となるデータは以下の通りです。

上記4銘柄の、業績および財務関連データ

銘柄名 4-6月期営業利益増減率 4-6月期営業利益率 自己資本比率
日本たばこ産業 ▲4.4% 24.1% 48.0%
KDDI +13.7% 23.4% 45.8%
日本マクドナルドHD +12.6% 10.5% 71.9%
日本電信電話 ▲1.5% 18.0% 39.4%
出所:営業増減益率は、2020年4-6月の営業利益を2019年4-6月の営業利益で割って算出。営業利益率は、2020年4-6月の営業利益を2020年4-6月の売上高で割って算出。自己資本比率は、前期末ベース。楽天証券経済研究所が作成

4銘柄の配当利回りをチェック

 優待投資をする時、優待内容だけ見て投資銘柄を選ぶのではなく、必ず、予想配当利回りも見ましょう。優待品とは別にもらえる配当金が多ければ、それで自由に何でも好きなものを買うことができるからです。以下が、上記4銘柄の配当利回りです。

上記4銘柄の配当利回り(会社予想ベース)

銘柄名 配当利回り 1株当たり配当金:円会社予想 株価:円 最低投資金額:円
日本たばこ産業 7.7% 154 2,010.0 201,000
KDDI 3.6% 120 3,350.0 335,000
日本マクドナルドHd 0.6% 33 5,240.0 524,000
日本電信電話 3.8% 100 2,608.5 260,850
出所:配当利回りは、今期1株当たり年間配当金を8月19日株価で割って算出。今期とは日本たばこ産業・日本マクドナルドは2020年12月期、KDDI・日本電信電話は2021年3月期。最低投資金額は8月19日株価で100株を買うのに必要な金額。楽天証券経済研究所が作成

 日本たばこ産業(JT)とKDDI、日本電信電話(NTT)は、配当利回りも高く、高配当利回り株としての投資魅力も高いと思います。日本マクドナルドHDは、優待の魅力は高くても配当利回りが低いので、総合的な投資魅力は他の3銘柄より劣ると考えています。

 なお、配当利回りは、確定利回りではないことに注意が必要です。業績が悪化すると、配当金が減らされるリスクがあります。ただし、上記の4銘柄については、財務良好、収益基盤が堅固なので、減配リスクは低いと筆者は判断しています。

コロナ後に回復を期待するイオンモール

 優待人気ランキングの21位にあるイオンモ-ル(8905)は、コロナ禍で、イオンのショッピングセンターが国内外で営業停止となった影響で、今期(2021年2月期)の第1四半期(2020年3-5月期)の最終損益は▲134億円の赤字に転落しました。年後半に業績回復を見込みますが、それでも通期の最終損益は▲40億円の赤字と会社は予想しています。イオンモールは、「コロナに弱い銘柄」でした。

 ただし、コロナが収束した後は、国内外ともに、業績は急速に回復すると予想しています。コロナ前の2020年2月期に、同社は売上・営業利益・経常利益・純利益とも、過去最高を更新していました。コロナ収束後に、再び最高益をあげていく力があると判断しています。

 イオンモールは、優待に加え、配当利回りも2.9%と高く、投資魅力が高いと判断しています。配当利回りは、今期1株当たり配当金(会社予想)40円を、8月19日の株価1,392円で割って算出しました。

 詳しくは、後日リリースする、イオングループのレポートに記載します。

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