資産形成を始めるために、新規に口座を開設し、投資信託や日本株の個別銘柄を買うことを検討されている方が増えています。今日は、株式投資の基礎として、株の買い方、売買注文の出し方を解説します。

「指値(さしね)注文」の意味を復習

 株式を売買するときの注文の出し方は、いろいろあります。もっともよく使われるのが、指値注文と成行注文です。この2つの注文方法を、しっかり理解して、適切に使い分けられるようにすることが、大切です。

 指値注文とは、「銘柄」「価格」「株数」を指定して、「買い」または「売り」の注文を出す方法です。たとえば、取引時間中、801円の株価がついている以下のA社株に対し、以下のような指値注文が入っているとします。

A社株の取引時間中の板(いた)情報

 板(いた)情報とは、売買注文がどう入っているか示すものです。上記、A社では、801円で9,200株、802円で12,500株、803円で13,200株の売り指値注文が入っています。また、799円で2,300株、798円で5,200株、797円で8,400株の買い指値注文が入っています。

買い注文の入れ方:5つの戦略

買い注文の入れ方【1】 下値に買い指値を入れる

 上記の板状況でA社株を買おうとするとき、「797円で100株の買い」のように、現値よりも下に、買い指値を入れることもできます。ただし、その場合は、株価が797円まで下がらないと、買えません。株価が797円まで下がっても、すぐに買えるわけではありません。先に入っている買い指値注文8,400株がすべて約定(やくじょう)した後、さらに797円で売り注文が入れば、その時、797円で買えます。

 もっと早く買いたい時は、どうしたら良いでしょう?

買い注文の入れ方【2】 先頭に買い指値を入れる

「800円で100株の買い」というように、今、見えている買い指値よりも上に買い指値を入れることもできます。こうすれば、800円以下の売り注文が入ったときに、最初に約定します。ただし、800円以下で売る注文が入らないと、買うことはできません。

 すぐに買いたい場合は、どうしたら良いでしょう?

買い注文の入れ方【3】 売り指値のあるところに買い指値する

「801円で100株の買い」というように、今、売り指値が入っているところに、買い指値することもできます。場にある指値注文が変わらなければ、801円で100株買えます。

 ただし、一瞬先に、801円以上で9,200株以上買い注文が入ってしまうと、801円の売り指値はなくなりますので、買うことはできません。その場合は、801円で100株の買い指値注文として、場に残ります。

 より確実にすぐ買いたい場合は、どうしたら良いでしょう?

買い注文の入れ方【4】 上値に買い指値を入れる

「803円で100株の買い」というように、上値に指値を入れることもできます。場にある指値注文が変わらなければ、801円で100株買えます。

「803円で買い指値したら、803円で買えてしまう」と勘違いしている人もいます。803円の買い指値注文とは、正確に言うと、「803円以下のもっとも有利な価格で買う」注文です。801円に売り指値があれば、801円で買えます。801円に買い指値するのと、結果は同じです。

 それでは、801円ではなく、あえて、803円に買い指値する意味は何でしょう?それは、一瞬先に、801円や802円の売り指値を買われてしまった時でも、803円で買うことができるということです。

 価格を指定しないで確実に買うには、どうしたら良いでしょう?その場合は、指値ではなく、成行(なりゆき)で買い注文を入れます。

買い注文の入れ方【5】 成行(なりゆき)で買い注文を入れる

 確実に100株買いたければ、指値ではなく、成行(なりゆき)の買い注文を入れるべきです。成行で買いを出せば、その時点で場にでている指値売り注文のうち、一番安いものにヒットし、即座に買いが成立します。上記のA社で、板が変わらなければ、801円で100株買えます。

 成行ならばほぼ確実に買うことができますが、まれに、成行買いが一時に大量に入り過ぎて、約定しないまま終わることもあります。

トンでもない高値の買いを避けるには、成行でなく、上値に指値した方が良い

 今日中に、必ず買いたい銘柄には、成行で買いを入れるのが普通ですが、成行注文には、欠点もあります。高速取引が普及している今日、一瞬先に大量の成行買いが入って、板に出ている安値の売り物が全部取られてしまうこともあります。そうなると、一瞬後に入ったあなたの成行買い注文は、とんでもない高値で約定することになります。

 以下のような板のときは、要注意です。

B社株の取引時間中の板(いた)情報

 798円に1万2,600株もの買い注文が入っています。一方、売り指値は少ししか入っていません。下値の買い注文の一部が成行に変わると、見えている売り指値はすべて取られて、あっという間に、株価が急騰することもあります。

 804円までならば買いたいが、それ以上、高値では買いたくないならば、成行ではなく、804円の指値で買いを入れるべきです。

 運よく、板が変わらなければ、801円で買えます。801円の売り物が先に取られても、804円の売りが残っていれば、804円で買えます。

売り注文の入れ方:5つの戦略

 考え方は、買い注文の入れ方と同じです。以下の5通りを、うまく使い分けましょう。

売り注文の入れ方【1】 上値に売り指値を入れる

売り注文の入れ方【2】 先頭に売り指値を入れる

売り注文の入れ方【3】 買い指値のあるところに売り指値する

売り注文の入れ方【4】 下値に売り指値を入れる

売り注文の入れ方【5】 成行(なりゆき)で売り注文を入れる

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