日経平均は2万3,289円。相場の意識は上向きに

 連休明けで4営業日となった先週の国内株市場ですが、週末8月14日(金)の日経平均は2万3,289円で取引を終えました。節目の2万3,000円台に乗せてきた他、6月9日の直近高値(2万3,185円)も超えてきました。前週末終値(2万2,329円)からは960円と上げ幅は大きく、週足ベースでも2週連続の上昇です。

 前回のレポートでは、「為替の円安が進めば2万3,000円までの上値余地はある」としていたものの、上値の重たさに比重を置く説明がメインだったため、結果としてお読みいただいたみなさんの投資判断の足を引っ張ってしまう格好になってしまいました。

 まずは、前回の反省の意を込めつつ、足元の状況から確認していきます。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2020年8月14日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ると、前半と後半の2日間ずつに分けられます。

 前半の11日(火)~12日(水)は、為替市場で米ドル/円が106円台から107円台をうかがう円安となったことで、株価が切り返す動きを見せました。前週の嫌なムードを吹き飛ばすように25日移動平均線も回復してきました。

 そして、後半の13日(木)になると、いわゆる「窓」空けで2万3,000円台を一気に超えてきます。円安傾向が続いたことに加え、抗コロナウイルスのワクチン開発への進展期待、および追加経済政策などへの期待で上昇した米国株市場の流れや、国内企業の決算動向を手掛かりとする売買、節目の2万3,000円台に乗せたこと自体による先物・オプション取引のポジション調整を招いたことも追い風となりました。

 これにより、日経平均は6月半ばから抜け切れなかった上値の「ブレイクライン」を上放れしてきました。翌14日(金)も、上値をあまり伸ばせなかったものの、始値と終値がともに、6月9日の直近高値から上を維持して取引を終えており、相場の意識は上方向に傾きつつあるような印象になっています。

目先の上値メドは2万3,806円。循環物色の継続は難しい?

 実際に、先週取引された銘柄の動きを見ると、前半は景気敏感株や決算で悪材料出尽くしと受け止められた銘柄など、「バリュー」中心の買いが目立ち、後半はIT・半導体関連株などの「グロース」にも買いが入っています。いわゆる「循環物色」と呼ばれる動きですが、こうした好循環が続けば、株式市場はさらに上昇してもおかしくはありません。

 とりあえず、目先の上値メドとしては、コロナ・ショック急落前の高値である2月20日の2万3,806円、そして次の節目とされる2万4,000円になります。

 まずは2月21日~25日に空けた「窓」埋めをしつつ、2万3,000円台前半での値固めが今週の焦点になりますが、一応、6月以降の日経平均は2万2,000~2万3,000円のレンジを抜けかけては戻されるという、「ダマシ」の連続だったことは注意しておきたいところです(下の図2)。

■(図2)日経平均(日足)の動き その2(2020年8月14日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 とはいえ、リクツで考えれば、先週までの循環物色の継続は難しい状況です。

 その理由の一つが、先週で国内企業の決算シーズンが一巡し、企業業績への手掛かりが減少することです。今後は国内外の経済指標や政治動向などに関心が向かいやすくなると思われます。今週は国内では4-6月期GDP(国内総生産)(17日)、米国では米7月住宅着工件数(18日)や、FOMC(米連邦公開市場委員会)議事録公表(19日)などが予定されています。また、米大統領選挙に向けては、民主党の党大会が行われます。

 続いて、二つ目の理由ですが、そもそもグロース株とバリュー株に対する買い意欲の背景が異なるという点です。グロース株は「稼ぐチカラ」による成長期待、バリュー株は「割安度による見直し」の視点で買われます。前回のレポートでは、日経平均のPER(株価収益率)を紹介しましたが、先週末14日(金)時点では22.08倍でした。前週末の8月7日が20.18倍、さらにその前の週の7月31日が17.90倍ですので、着実に割高となっています。コロナ禍以降の経済正常化が加速する等の動きがないと、バリュー株への物色は続きにくくなると思われます。

NYダウは2万8,000ドル台乗せの場面もあったが、やや減速気味

 また、先週の日本株のけん引役となった米国株市場の動きについても見ていきます。

■(図3)米NYダウ(日足)の動き(2020年8月14日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 NYダウ平均株価は、6月8日と7月15日の高値を結んだブレイクラインを上抜け、先週8月11日に2万8,000ドル台に乗せる場面を見せていますが、終値ベースでは2万8,000ドル台に乗せきれていないことや、11日以降の上値が伸ばせていないなどやや減速気味であることは気掛かりです。米国株が伸び悩んだ時に、企業決算が一巡した日本株の反応が底堅さを維持できるかも試されることになります。

 したがって、株価の上値への意識は強く、無理に見通しをネガティブにする必要はないものの、足元の相場の地合いは、「強いか弱いか」で見れば強いのですが、「高いか安いか」で見ると割高気味になっていることには配慮する必要があります。失速に転じる展開への備えは欠かせないと思われます。