日経平均は2万3,000円を回復

 先週の日経平均株価は、1週間で959円上昇し、2万3,289円となりました。6月以降、2万1,500~2万3,200円の範囲で行ったり来たりの相場が続いてきましたが、先週は、6月の戻り高値(2万3,178円)を少しだけ超えました。

日経平均日足:2020年2月3日~8月7日

 

 あまり売買高が増加していないので、まだボックス圏から上へ抜けたと判断できる状態ではありません。ここから上値トライするには、もっと売買が活況になる必要があります。

 なぜならば、年初来高値(コロナ・ショック直前、1月20日の2万4,083円)を目指すには、以下の【1】【2】【3】、3つの局面で日本株を買い付けた投資家の「戻り売り」をこなす必要があるからです。以下、2017年以降の日経平均チャートをご覧ください。

日経平均の動き(週次):2016年末~2020年8月14日

 2018年以降、2万4,000円超えをトライして、以下の通り、3回失敗しています。

【1】2018年1~2月
 世界景気は好調だったが、米長期金利が3%に迫ったことを嫌気して、世界株安に。

【2】2018年10~11月
 米長期金利が3%を超えて上昇したことを嫌気、さらに米中貿易戦争により世界景気が急速に悪化してきたこが嫌気され、世界株安に。

【3】2019年12月~2020年2月
 米中協議が「第1段階の合意」に達し、世界景気回復期待が出ていたところで、コロナ・ショックが起こり、世界景気は奈落の底に突き落とされ、世界株安に。

強弱材料の綱引き続く。ワクチン大量供給のメドがたちつつあることはポジティブ

 6月以降、日経平均には膠着感が出つつありました。以下の通り、強弱材料がきっこうした状況は変わっていないと考えます。先週は、米国でワクチン開発が想定以上のピッチで進んでいく見通しとなったことが好感されたことが、株高につながりました。

強材料

【1】世界景気回復期待
 中国・米国・欧州・日本で経済再開を進めることで、世界景気が回復に向かう期待が出ている。4~6月が世界景気の最悪期で、7~9月から米国・欧州・日本が回復に向かう見込み。中国は1~3月が最悪期で、4~6月から回復している。

【2】世界中で財政・金融政策の大判ぶるまい
 米国を中心に世界中の政府・中央銀行が、巨額の財政・金融政策の大判ぶるまい。日本銀行は、当面年間12兆円のペースで日本株ETF(上場投資信託)を買い付ける方針を維持。米国で、7月末に期限切れとなった失業給付の継続法案が、与野党対立で成立しなかったことが不安視されていたが、トランプ大統領が大統領令を発動し、給付継続を指示。

【3】ワクチン開発
 米国・英国・中国で予防ワクチンの開発が、想定よりも早いピッチで進展。日本は、塩野義製薬・アンジェスなどが開発を進めているものの、ワクチン開発では大幅に出遅れている。ただし、米英から供給を受けることで基本合意。米ファイザーから来年6月までに1億2,000万回分(6,000万人分:1人2回の接種が必要となる見込み)、英アストラゼネカからも来年1億2,000万回分(1人1回か2回か未定)、2回ならば6,000万人分)の供給を受けることで基本合意。

弱材料

【1】感染再拡大
 経済再開を進める米国・欧州・日本で感染が再び拡大。感染爆発を避けるために、経済活動が一部制約され、結果として経済回復が遅れるリスクも出ている。インド・ブラジル・トルコなどの新興国で、感染が急拡大。

【2】米中対立激化
 中国は、海洋進出強化、インドとの国境問題でも積極策。周辺国と摩擦が強まっている。さらに、香港の支配を強化。

 これに対し、米トランプ大統領は対中国強硬姿勢を一段と強めている。8月6日には、中国の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」と対話アプリ「微信(ウィーチャット)」を運営する企業(バイトダンスとテンセント)との取引を45日後から禁止する大統領令に署名。米アップルや米グーグルが両社と取引できなくなれば、事実上、米国から両社のアプリが締め出されることになる。これまでトランプ大統領は、中国通信大手ファーウェイなど通信機器メーカーを米市場から排除してきたが、さらに、通信アプリまで排除を広げる構え。こうして米中による世界経済分断が強まると、コロナが収束しても、世界経済の分断が続く懸念が強まる。

【3】債務問題
 世界中で過去に例のない大規模金融緩和をやっている副作用として、債務残高が急拡大している。潜在的なクレジットリスクが高まっている。

今年、日本株を一貫して売り越してきた外国人投資家が、8月に入り買い越し

 コロナ・ショックで日経平均が急落した局面も、その後の急反発局面も、6月以降の膠着局面も、外国人は一貫して日本株を売り越してきました。ところが、8月に入り、外国人はようやく日本株を買い越しに転じました。

外国人投資家による日本株現物・日経平均先物の売買動向(売買差額):2020年1月~8月(7日まで)

今年、日本株を一貫して売り越してきた外国人投資家が、8月に入り買い越し

 外国人投資家は、株式現物と日経平均先物の売り越しを合計すると、1-7月に6兆弱売り越していましたが、8月第1週に、ようやく1,876億円の買い越しとなりました。

 ただし、現時点で、日本株を積極的に評価した買いとは考えられません。6月以降、日経平均先物を約1兆円買い戻していますが、これは、空売りの買い戻しと考えられます。8月に現物も買い越しに転じましたが、米国株が強いので、日本株も少しだけ買い戻してみたといったところでしょう。

日経平均は、年内に2万4,000円を超えるか?

 日経平均が2万3,000円台の戻り売りをこなして、上昇するには、2つ条件が必要であると思います。

【1】来年にかけて新型コロナを克服、世界景気が回復に向かう見通しが強まること。
【2】外国人が日本株の本格的買い戻しに入ること。

 外国人投資家から見て、日本株は「世界景気敏感株」です。米国および中国の景気が回復し、世界景気が本格的に回復に向かう見通しが強まれば、外国人は日本株も積極的に買ってくるでしょう。今後の、世界景気次第ということになります。つまり、【1】の条件が満たされれば、【2】の条件も自動的に満たされると考えられます。

 私は、現時点では、まだ条件がそろっていないと考えていますが、年内に、【1】の期待が高まり、年末に日経平均が2万4,000円を超える可能性は十分あると予想しています。

 来年になれば、米国・欧州・日本・中国で、ワクチンの大量供給が可能になる見通しが強まると思います。今年はウィズ・コロナで経済活動を続け、緩やかな世界経済の回復を続ける見通しがたてば、日経平均は年末までに2万4,000円を超えていくと思います。

 最大のリスクは、米中対立の激化です。新型コロナへの対応がいったん落ち着くと、米中対立が激化するでしょう。世界経済を悪化させるリスクには、注意が必要です。

日本株の投資判断

 結論は毎回述べていることと、変わりません。日本株は割安で、長期的に買い場との判断を維持します。ただ、短期的には急落急騰を繰り返すと思います。時間分散しながら、割安な日本株を少しずつ買い増ししていくことが、長期的な資産形成に寄与すると考えます。

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