12日の日経平均は、前日比177円高の15,928円でした。外国人の売りが減る中、国内投資家の押し目買いか出て上昇したと考えられます。為替は、1ドル108.20円前後で小動きでした。8日に「急激な円高に必要なら措置を取る」との麻生財務相発言があったことから、日銀の介入があるかもしれないとの警戒が続き、円高進行が止まっている状態です。

為替は、4月13日の日本時間午前7時現在、1ドル108.60円です。12日のCME日経平均先物(6月限)は、16,065円でした。

昨日、短期的な相場予想には、外国人の売買動向を知ることが大切と書きましたところ、「どうやって外国人動向を知るのか」と質問をいただきました。今日は、それを書きます。

(1)「外資系証券の寄付前注文動向」を見るだけで分かる時代もあったが、今は情報価値が低い

かつて「外資系証券の寄付前注文動向」を聞くだけで、外国人の売買動向が手に取るようにわかる時代がありました。欧米の投資家にとって東京市場は、夜中寝ている間に開いている市場となります。東京市場で日本株を売買する欧米の機関投資家は、外資系証券に1日分の売買をすべて預けておくことが多いといえます。それを集計して、寄付前に発表すれば、それは日本の投資家には価値の高い情報となります。

今でも「外資系証券の寄付前注文動向」の発表は続けられていますが、以下の4つの理由により、最近は情報価値が低くなりました。

  1. 発表に参加する外資系証券の数が減っている

「外国人の注文を執行前に、日本の投資家に伝えるのはルール違反」という考えが広がり、発表をとりやめる外資系証券会社が増えてきました。かつては、10社以上が発表に参加していましたが、今は5社だけになっています。

そもそも、これは公式の統計ではありません。外資系証券にヒアリングしたデータを集計したものです。国内機関投資家への情報サービスの一環として、外資系証券会社が朝の寄り前に、注文を集計して発表していたものです。コンプライアンス面で不透明な要素があり、将来は発表されなくなる可能性もあります。

  1. 売買注文株数だけ発表する方式で、売買金額がわからない

100株で約160万円の任天堂(7974)の注文も、100株で約1万6000円のみずほFG(8411)の注文も、同じ100株の注文としてカウントされます。株数で売り越しでも、金額で買い越しということもあり得ます。

  1. 外国人投資家の注文を洩れなく含んでいるわけではない

外国人投資家が、注文をすべて外資系証券に出すわけではありません。国内証券に出される注文は集計対象になりません。また、寄付前に入っている注文だけが対象で、後場から入ってくる中東マネーなどの注文は集計対象外です。また、寄付前に外資系証券に発注する国内投資家の注文も含まれているという問題もあります。

  1. 本当に執行される株数かわからない

価格がかなり離れた指値注文の場合は、注文が入っていても執行されない可能性があります。

外資系証券の寄付前注文動向(株数単位:万株)

日付 売り株数 買い株数 差し引き
3月14日 620 860 240
3月15日 1,220 1,340 120
3月16日 1,230 1,110 -120
3月17日 1,210 710 -500
3月18日 1,910 2,180 270
3月22日 1,690 1,510 -180
3月23日 1,770 1,520 -250
3月24日 1,760 1,300 -460
3月25日 350 270 -80
3月28日 350 700 350
3月29日 910 690 -220
3月30日 1,720 1,290 -430
3月31日 900 1,880 980
4月1日 1,390 2,310 920
4月4日 1,180 850 -330
4月5日 1,610 1,620 10
4月6日 1,150 1,400 250
4月7日 880 1,350 470
4月8日 860 870 10
4月11日 1,170 1,430 260
4月12日 880 870 -10

(注:楽天証券経済研究所が作成)

4月に入ってから、株数ベースで買い越しの日が増えています。東証が発表する主体別売買動向は、まだ4月1日までの分しか発表されていませんが、4月4日以降、週間で小幅買い越しになっている可能性もあります。ただし、注文株数の差は、信頼性の低いデータで、外国人の売買実態を表していないこともよくあります。

(2)東証が発表している主体別売買動向が、一番信頼できるデータである

東証が発表している「2市場1・2部主体別売買動向」が、一番早く入手できる、信頼できるデータです。外国人が買い越している週は、日経平均が上昇する傾向が強く、外国人が売り越している週は、日経平均が下落している傾向が強いことがわかります。日本株が外国人の売買で動いていることが良くわかります。

日経平均の動きと、外国人投資家の売買動向(売買差額):2015年1月5日―2016年4月12日

(出所:東証データより楽天証券経済研究所が作成)
(注:外国人の売買動向は、プラスが買い越し、マイナスが売り越しを表す)

欠点は、発表までに時間がかかることです。1週間の売買データがわかるのが、次の週の木曜日の夕方となります(月曜日が祝日の場合は金曜日発表になる)。1週間以上遅れて発表されるとは言え、正確性が高いことから、情報価値は高いといえます。

(3)外国人売買データの利用の仕方

昨日のレポートに書いた通り、次のように考えます。

  1. 外国人が毎週連続で買い越している時  →  強気
  2. 外国人が毎週連続で売り越している時  →  弱気
  3. 外国人が1週間ごとに買い越したり売り越したり変わる場合 → 中立(判断不能)

相場の転換点は、外国人の売買動向が変わるところから、始まります。売り越しが続いていた外国人が、ある時、週間で買い越しになったことがわかった時、どう判断するかが重要です。ここから毎週買い越しに変わると判断するか、あるいは、売り越し・買い越しが交互に出るパターンが始まったと判断するか、読みが重要です。

それを判断する決まった方法は、ありません。物色動向や売買のやり方、市場の噂などを総合的に判断して、新たな買いトレンドが始まったか否かを考えなければなりません。

本レポートでしばしば、「産油国が売ってきている」「海外ヘッジファンドの売りが出ている」「日経平均リンク債からみの先物売りが出た」「公的年金の買いが止まった」などのコメントを載せていますが、それは、私独自の情報の取り方と読み方から出ています。東証が公表するデータに加えて、こうした市場を動かす投資家の動きを観察することが、外国人の売買トレンドをなるべく早く掴むことにつながります。