新型コロナウイルス感染症の影響で、働き方にさまざまな変化が出てきています。今後の人生について見つめ直す一環として、転職という選択肢を検討している人も少なくないのではないでしょうか。「コロナ不況」といった言葉も聞かれ、求人数の低下も伝えられる今、はたして転職による収入アップは見込めるのでしょうか。キャリアアドバイザーとして1万人以上の転職を支援してきた藤井佐和子氏に、この時代の転職を成功させるために見極めるべきポイントを聞きました。

◆お話を伺った人

株式会社キャリエーラ 代表取締役/キャリアアドバイザー
藤井佐和子氏
>>キャリエーラ公式サイト

 

▼Profile

 大学卒業後、カメラメーカー海外営業部を経て、大手総合人材サービス企業に転職。派遣事業部、人材紹介事業部の立上げに携わる。数多くの転職を支援。その後、独立。延べ13,000人以上のキャリアカウンセリングを行う一方、企業に対し、研修や人材育成コンサルティングを行う。その他、大学の非常勤講師、講演、キャリアセミナー、執筆など幅広く活動。

コロナ禍で転職市場に変化あり?なし?

 近年、慢性的な人手不足といわれていた日本ですが、新型コロナウイルス感染症の影響で転職市場の現状はどうなっているのでしょうか。まずはその点から、藤井氏に聞きました。

「求人市場自体は動いています。もちろん業種にもよりますし、コロナ不況を受けて今後変わってくる可能性はありますが、私のもとにも転職相談や職務経歴書の添削といった依頼は継続してあるので、求人自体のニーズは減っていないというのが私の感触です」(藤井氏)

 求人市場は停滞してないのであれば、転職を検討している人がコロナ禍を理由に立ち止まる必要もありません。では、年収アップやポジションアップ、望む業務や企業への転職を成功させるためにはどうすればよいのか、以下、解説していきましょう。

転職 Hack1 転職エージェントの求人をチェックする!

 転職先を探す際、ハローワークなど無料の職業紹介などではなく、転職エージェントに登録して探すほうが、効率も求人先の信頼性もアップします。

「転職エージェントを通して求人を出している企業であれば、エージェントにフィーを支払うだけの採用予算を組んでいるので、中長期的な戦略に即した採用を行っていると判断できます。また、転職エージェントだと職務経歴書の添削や面接トレーニングなども行ってくれるため、的確に自分アピールする方法を学ぶことができることもメリットです」(藤井氏)

転職 Hack2 職務経歴書をパワーアップさせる!

 新型コロナウイルス感染症の影響で、採用ステップに変化が見えてきた、と藤井氏はいいます。

「傾向として、オンライン面接が主流であること、面接回数が減っていることが挙げられます。つまり、面接回数を減らしたいため、書類審査の時点でスペックがマッチしているかどうかが、今までより厳しい目で精査されます。職務経歴書の時点で自分を明確にプロモーションできるかどうかがカギ。社内でしか通用しない用語や略称を連ねた、知らない人に伝わりにくい職務経歴書では見切られてしまう可能性があります。シンプルにわかりやすく書くことを心がけ、自分だけではなく転職エージェントなど第三者のチェックで、内容を精査するといいでしょう」(藤井氏)

転職 Hack3 20代以外は同職種  or  同業界転職が安全

「求人募集が増えていると感じるのはIT系の企業です。この業界はもともと中間管理職やマネージャー職が不足しているので、十分なスキルや実績がある方にはチャンスといえるかもしれません。未経験の若手を採って育成したいという意識が高い企業もあります。しかしその場合のニーズは、若手=20代で、成長ポテンシャルを感じさせる、優秀な人材に限られます。30代以上の方にとって、未経験の業界や業種への応募は狭き門。また、採用されたとしても年収が下がるケースも。正社員の採用に慎重で、契約社員からスタートという企業もあります。また、人手不足を理由に未経験の採用に踏み切る業種は、もともと年収が低めの傾向にあります。年収アップを狙った転職を検討するのならば、同職種のほうが無難でしょう」(藤井氏)

転職 Hack4 変化に柔軟な企業を選ぼう

 転職を成功させるには、業種だけでなく、企業をしっかり選ぶことも重要です。コロナ禍の今、転職してもいい企業を見極めるポイントはどこにあるのでしょうか。

「端的に言えば、変化への対応です。例えば、コロナ禍でスムーズにリモートワークに移行できている企業ならば、コロナ前から働き方改革も含めた時代の変化に対応できていると判断できます。同じ業種のなかでも、変化に柔軟な企業を選ぶことが重要。知名度や企業規模が大きくても、固定観念の強い旧態依然とした企業だと、転職できたとしても先細りの可能性があります」

 変化に柔軟かどうかは、入り口である採用時の対応に如実に表れます。

「オンライン面接を実施しているかどうかはもちろん、在宅勤務が何割くらいか、社内のITインフラやオフィスの在り方を確認するのも、変化への対応力を見極めるポイントです。私のところへ転職の相談に来た方のなかには、すべての面接がリアル面接で行われるのを知り、その企業の面接を辞退した方もいました」(藤井氏)

転職 Hack5 多角経営の企業を狙おう!

 会社の経営方針をチェックする際、新しいことに常に挑戦しているかどうかも重要なポイント。専業企業ではなく、他業種参入や経営の多角化に積極的な企業への転職は、よい選択肢といえます。

「軸足が多ければ、特定業種の業績が落ちても、他の業種での収益でカンパニー全体をカバーできます。また、新規事業立ち上げの経験などがある方は、そこを重点的に売り込めば、今後の事業展開を見越して採用される可能性も高まります。入社したあとに別部門に異動することになっても、新しいことに挑戦できるチャンスと、前向きにとらえていくとよいでしょう。また、多角化企業の良い点は、働き方が変わっても社内に受け入れ先があること。転職後、諸事情で働く環境が変わっても、他の事業への異動でライフワークバランスを調整するなどして、長く働ける可能性も高まります」

転職 Hack6「なくならないビジネス」を狙おう!

 時代ごとに経済にもトレンドがあり、現在は盛況でも、今後も盛況が続くかどうかは断言できません。しかし、大きく儲かることはないけれど、時代が変わっても「決してなくならない業界」を狙うのも一つの手です。

「例えば教育関連の産業は、少子化となっても、経済が悪化しても、今後も業界としては消滅しません。そうした業界に転職し、長く堅実に働き続けることも選択肢の一つ。さらに農業関連の産業も消えることはありません。しかし、この場合でも、オンラインへのシフトやIT技術の活用などにしっかり対応できているかを見極める必要があります」(藤井氏)

転職 HackIターン/Uターンで実質生涯年収をアップさせる!

 テレワークで働く場所自体も限定されなくなった今、都会で働くというこだわりを捨てるという方法有効です。

「決まった場所に出勤しなくても仕事ができる今、都会を捨てて地方を選択するのも有効。地方にもニッチな業種で利益を挙げている優良企業や、地域に根付いた堅実な企業は多数あります。今後伸びていきそうな産業が根強い地域などに転職すると、多少年収が下がっても、家賃や生活費が安いぶん、実質的な年収アップにつながる可能性もあります。Iターン/Uターンを優遇している自治体も多いため、働く場所自体を考え直すことも良い選択だと思います」(藤井氏)

転職 Hack8 自分自身も「こだわり」を捨てる!

 企業側だけでなく、転職者の側にも、柔軟性や変化への対応力が求められている、と藤井氏はいいます。

「働く側も“この職種でないと嫌だ”、“今以上のポジションでないと嫌だ”など、こだわりを捨てたほうが、転職も、働き方も、うまくいきます。例えばベンチャー企業などを選択し、一時的に年収は下がっても、将来性がある企業を選んだり、将来の独立を見据えて、自分にとって有益な経験が積めそうな企業を選ぶといった戦略的転職もありです」(藤井氏)

 コロナ禍の転職においては、転職する業種や企業を選ぶうえでも、転職活動を成功させるうえでも、「変化への対応力」をキーワードに見極めていく必要がありそうです。

コロナ禍ならでは!オンライン面接を制する4hack!

 最後に、昨今増えているオンライン面接で、最大限に自分を売り込むコツを伺いました。

オンライン面接hack 1:第一印象下手でも大丈夫!落ち着いてアピール!

「オンライン面接は、内容や人柄をしっかり見てもらえるため、第一印象で勝負することが苦手な人でも勝ち残れる可能性大。受け答えに詰まったとしても焦らず落ち着いて、自分がしてきたこと、できることを堂々とアピールしましょう」(藤井氏)

オンライン面接hack2:ネット環境の整備とオンラインツールに慣れよう

「オンライン会議に必要なツールをひととおり揃えておき、何度か試しに使ってみるなどして練習しておくとベスト。また、途中で回線が切れるなどのトラブルは、相手にストレスを与えてしまうため、通信環境などを強化して、スムーズに面接が進められるよう環境整備しておきましょう。また、念のために家電やインターフォンは切っておくと、邪魔が入りません」(藤井氏)

オンライン面接hack3:女優ライトで見た目盛りもOK

「一番自分がきれいに見えるカメラやツールを駆使して、自分の見た目を120%増しにすることも可能。暗い部屋、見にくい画面ではなく、明るい画面できれいに見えるよう、最大の努力をしましょう。自分の顔がきちんと全部映っているか、カメラの位置なども事前にチェック。顔色がよく映る服装などもテストして選んでおくと◎」(藤井氏)

オンライン面接hack4:背景に話題を仕込む

「新卒の方々が良くやるテクニックとして聞いたことがあるのですが、背景にファンのサッカーチームのユニフォームを貼るなど、面接官が話題にできるようなネタを仕込んでおくのが流行っているそうです(笑)。堅い話だけでなく「XXXが好きなんですか?」など、気軽なやり取りは緊張をほぐします。好き嫌いが少なく、癖のないジャンルのアイテムを仕込んで、試してみるのもよいかも」(藤井氏)