THE S&P 500 MARKET: 2020年7月

 米国では、新型コロナウイルスの1日当たりの新規感染者数が77,000人と過去最多に増加しました。国内の感染者数は460万人を超え(世界の感染者数は1,750万人)、死者数も15万3,000人を上回っています(同67万7,000人)。

 決算シーズンの最初の月はゆっくりとしたスタートから徐々に加速し、S&P 500指数構成銘柄の62%、時価総額で75%に相当する企業が第2四半期の決算発表を終えました。企業はパンデミックに伴う状況について把握し、世界(株主、競合他社、顧客)に向けて何を伝えるかを判断するのに少し時間がかかったようです。決算発表を終えた企業の82.1%が、47.9%下方修正された後の利益予想を上回りましたが、どんな状況でも予想を上回るというのは良いものです。

 企業業績は常に第1面で取り上げられ、来週も96銘柄が決算発表を予定しているために第1面を賑わせると思われますが、第1面のトップ見出しを飾ることはありませんでした。

 人々は休会明けの議会に注目していましたが、それもトップ見出しではありませんでした。議員らはコロナ対策について審議するために議場に戻ってきましたが(議員を街から追放し、さらに国から追放する休会案があれば、私ならそれぞれに賛成票を投じます)、それはもちろん感染症の治療法を考えるためではなく、コロナ対策第4弾となる追加法案について「交渉」するためです。上院(共和党)が提示した1兆ドル規模の法案は、下院(民主党)が可決した3.5兆ドル規模の法案とともに審議される予定です。

 この審議について、トランプ大統領の自伝『The Art of the Deal(芸術的な交渉)』になぞらえて「交渉術」と呼ぶ声もあります。追加法案の重要項目は、7月31日に期限を迎えた、失業保険給付を週600ドル上乗せする連邦政府パンデミック失業補償の延長(恐らく内容の修正を伴う)です。下院法案は2021年1月までの延長を求め、一方の上院法案は上乗せ額を200ドルに減額して2020年9月までとした上で、その後は賃金の額に応じて上限を設けるとしています。また、州に対する直接支援も重要項目であり、下院法案では州と学校に対して1兆ドルを支援し、上院法案では学校に対して1,050億ドルを支援して州に対する追加支援はしないとしています。

 その他の注目ニュースとしては、米中間の緊張はまるでテスラの株価のごとく急速に高まり、米ドルはテスラ株の空売り筋が倒れる(これで株価の上昇が加速しました)のと同じくらいのスピードで下落し、メジャーリーグは通常の年間162試合から60試合に縮小して開幕しました。球場のシーズンシート購入者には残念ですが、今年はアメフトの観戦で我慢してください。

 では、何がトップ見出しを飾ったのでしょうか。それは5月や6月と変わらず新型コロナウイルスそのもので、この状況は8月も続くと思われます。実際のところ、ウイルスの長期的なライフサイクルや影響は科学的にも、政治的にも(知っている人がいたら間違いなく吹聴していることでしょう)、最新の占いアプリですら、誰にも分かりませんが、有効なエビデンスに基づいた憶測は散見されます。とはいえ、治療法やワクチンの開発に関してはPfizer、Moderna、BioNTechといった企業で続けられており、いずれ成功すると大方の人は信じています(これらの企業に投資したら成功するでしょうか)。

 市場もそうした信者の1人であり、13.3%と2桁が続く失業率や、前期比年率でマイナス32.9%、前年同期比でマイナス9.5%という悲惨な結果となった2020年第2四半期GDP成長率を受け流したのか、市場は7月に5.51%上昇、3月23日の安値からは46.20%上昇と、以前の上昇分をほぼ回復し、年初来では1.25%の上昇となりました(配当込みのトータルリターンはプラス2.38%)。明日以降も決算が次々と発表される予定であり、市場予想に基づくと、企業利益は2021年第4四半期に過去最高を更新する見通しです。Googleはその3カ月前の2021年7月から、20万人の従業員のオフィスへの出勤を再開する方針です(社内は一方通行で、エレベーターは4人定員でお願いします)。

 市場では現在、損失を恐れる個人投資家、数字をつくらなければならない資産運用マネジャー、そして市場全体の信じたい気持ちといった感情が支配しているとみられます。悲観論者やショックを受けた空売り投資家の考えが正しかったと言える日が来るかもしれませんが、それがいつになるかは分かりません。

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