S&P500が新値まであと一歩

 米国を代表する株価指数であるS&P500種株価指数が、2020年2月19日のザラバの最高値3393.52まで、あと一歩の3349.16で引けました。

S&P500指数

出所:ヤフー・ファイナンス

悪い米国経済

 率直に言って米国の経済は悪いです。7月30日に発表された第2四半期のGDP(国内総生産)は前期比▲32.9%でした。これは第2次世界大戦以降、最悪でした。

米国のGDP(前期比)推移

単位:%
出所:セントルイスFRB

なぜ株式市場は悪い経済を無視している?

 これほど経済がひどいのに、なぜ米国株式市場はまるで何事もなかったかのように過去最高値に挑戦しているのでしょうか。

 その理由の一つは米国政府からの経済支援によります。第2四半期の米国のGDPは約4.2兆ドルでしたが、それにほぼ匹敵する景気刺激策が議会の予算、ならびにFRB(米連邦準備制度理事会)からの支援によってもたらされました。つまりGDPの統計には現れていない支援金が、1930年代の大恐慌の二の舞いになることを防いでいるのです。

行き場を失った資金が株式市場を目指す

 新型コロナウイルスは今でも米国にまん延しています。スポーツ・イベントやコンサートもいまだ再開されておらず、旅行も面倒です。デパートで買い物をするのも何となく楽しくありません。

 そんな折、政府からもらった一時金や失業保険上乗せ金をすぐに使ってしまうのではなく、消費者は貯蓄に回しています。

 株式市場がブームになっている一因は、この「行き場のない個人投資家の資金」が株式市場に押し出されてきたからだと説明することができるでしょう。

金利は当分低く固定される

 米国の政策金利であるFF(フェデラル・ファンズ)レートは現在0~0.25%が維持されています。これは当分変更されることはないと思われます。

FFレートの推移

単位:%
出所:セントルイスFRB

 銀行に預金しても利子は限りなくゼロに近いわけですから、有利な運用を心がけようと思えば株式などへ資金をシフトせざるを得ないのです。

生活防衛としての株式投資が若者に大人気

 いま米国ではスマホでカンタンに株式投資ができるアプリ「ロビンフッド」が大変人気を博しています。古くからの株式ファンは、そういう若い人たちの株式市場への参戦を見て、(そろそろ相場の天井が近いぞ)と、辛らつなコメントをしています。

 しかし、新しい投資家のすべてが株式トレーディングの魅力にとりつかれて、熱にうなされたかのように短期トレードをしているわけではありません。むしろ大部分の新しい投資家は、S&P500に投資するETF(上場投資信託)のような、ベーシックな投資対象に投資しているのです。すなわち「生活防衛のための株式投資」と思ってやっている人の方が多いということです。

 この点を理解せず、ただ「いまの米国株式市場はバブル相場だ」と批判するのは、上っ面だけしか見ていない意見なのです。