保険は環境が変わったり、制度が変わったりするので見直しは定期的にしていきましょう。その際、同じ保険でも安くなる場合があります。

◆お話を伺った人
ファイナンシャルプランナー:小沢 雅人(おかねの相談室 嶋田商事株式会社)

Money Hack 1 終身払いは安くなる?

手持ちのお金が心配ならプラン変更を 難易度★★☆

 保障が一生涯続く「終身医療保険」「終身ガン保険」などでは、保険料払込期間を「60歳まで」「65歳まで」「終身払い」などから選ぶことができます。

 もし「60歳まで」「65歳まで」を選んでいて、途中で支払いが厳しくなってきたときは、「終身払い」に加入しなおすと、年齢や加入してからの年数によりますが保険料を減額することができます。

 ある「終身医療保険」(30歳男性)では、保険料払込期間「60歳まで」の場合、保険料は月額約5,000円ですが、「終身払い」にすると保険料は約3,200円まで下がります。

 ただし、「60歳まで」「65歳まで」の場合は、年金生活に入る前に保険料の支払いが終わりますが、「終身払い」では、年金生活になってもずっと月額3,200円を払い続けなければなりません。

 では、保険料の総支払額では、どちらがお得なのでしょう。この例では損益分岐点はおよそ77歳。それ以上長生きするのなら保険料払込期間「60歳まで」がお得です。日本人男性の平均寿命が81歳なので、慎重に検討する必要がありそうです。

Money Hack 2 タバコをやめた人は安くなる

健康体は安い! 難易度★★☆

 禁煙に成功すると、生命保険料が安くなることがあります。その商品はリスク細分型保険と呼ばれるもの。喫煙、非喫煙の他にも血圧、BMIなどで保険料が増減します。つまり健康優良体の人は死亡リスクが低いので保険料を安く、喫煙者や高血圧、肥満の人は保険料を高く設定しているということ。

 喫煙者と非喫煙者の毎月の保険料(30歳男性保険金1,000万円、10年更新)を比較すると、ある保険会社では喫煙者は保険料月約930円に対し非喫煙者は約840円という違いになりました。1年以上禁煙を続けられた人は(自己申告ではなく唾液検査があります)、非喫煙割引が適用される保険に入り直しをしましょう。

Money Hack 3 2018年以前に入った保険に要注意

新プランの料金確認をしよう 難易度★★☆

 2018年以前に加入した死亡保険(定期保険・収入保障保険など)は、新しい保険に入り直すことで、保険料を安く抑えることができるかもしれません。それはなぜか? 生命保険の保険料を決める指標に大きな変化があったからです。 

 どの保険会社も保険料を「予定死亡率」「予定利率」「予定事業費率」という指標を使って決めています。大きな変化があったのは「予定死亡率」です。

 2018年、「標準生命表」が11年ぶりに改定されました。これは年齢・性別ごとに「死亡率」「平均余命」を算出した金融庁の統計表のことで、前回の2007年版に比べると死亡率が大きく減少しました。例えば70歳男性の死亡率は、2007年21.93%に対して2018年15.44%と、約30%も改善。その分、日本人が長生きするようになったわけです。

 そのため「予定死亡率」が変更され、多くの保険会社が死亡保険料を2割程度引き下げました。保険会社や契約者の条件にもよりますが、2018年より前に死亡保険に加入した人は、現在販売されている商品と比較してください。保険料を節約できるかもしれません。

 逆に保険料が引き上げられた商品もあります。それは貯蓄性の高い終身保険や個人年金保険など。市場金利が下がったことを受けて2017年に金融庁が「標準利率」を引き下げました。それを受けて保険会社が「予定利率」(標準利率を参考に保険会社があらかじめ決めた運用利率)を引き下げたため、保険料が上がったのです。こちらは入り直さないほうがお得なはずです。

Money Hack 4 会社の団体保険は安め!

特に40代以上の方は、要確認 難易度★★☆

 会社の福利厚生制度の一つとして「団体保険制度」があります。これは、企業や団体で働いている人が加入できる保険制度のことで、保険の説明や保険料の徴収など保険業務の一部を会社や団体が保険会社に代わって行います。

 そのため保険会社は経費の削減(保険料を構成する純保険料と付加保険料のうち、付加保険料の削減)ができるため、個人で契約する場合に比べると、保険料が割安になります。どのくらい割安なのかは会社や団体によって異なりますが、数%から50%程度といわれているので、個人で生命保険に加入している人は見直す価値があります。特に40代以上の方は、団体保険のほうが安くなるケースがあります。ぜひ確認してください。

 ただし、保険料が安い代わりに大きなデメリットが一つ。原則として会社や団体を辞めると、保険も解約しなければならないこと。転職先に団体保険がなかったり、フリーランスになったりすると、個人で加入することになり、(当然年齢を重ねているので)団体保険に加入する前の保険料よりも高くなる可能性があります。また、病歴によっては加入できないことも。

 転職の可能性がある人は、条件を確認して加入してください。

Money Hack 5 選ぶなら貯蓄型保険!?

貯蓄型か掛け捨て型かは永遠のテーマ 難易度★★☆

 生命保険には「貯蓄型」と「掛け捨て型」があります。せっかく保険料を払うのだから、お得な方に入りたいもの。

 そこでまず、「貯蓄型」と「掛け捨て型」の違いを見てみましょう。

 貯蓄型保険は保障機能と貯蓄機能を併せ持つ保険で、保障期間は「終身」や満期のある「養老」があります。「終身保険」や「養老保険」は、支払ったお金が貯まっていくのですが、保険会社は契約者や受取人に保険金の支払いや解約金を支払う必要があるためその分準備できる保険金は少なくなるのが特徴です。

 掛け捨て型保険は、満期になっても支払った保険料が戻らない保険です。安く大きな保険金が準備できる特徴がありますので、例えば子どもが独立するまで、稼ぎ頭である夫の死亡リスクに備えたい(大きな保障を得たい)というときに活用する保険です。

 上記のようにメリット・デメリットがあるため貯蓄保険VS掛け捨て保険+運用どっちが良いと議論されるのですが、考え方次第で人それぞれです。

 十分な預金・資産がある人や運用リスクを取りたくない人は、貯蓄型を選んで、お金を捨てない(掛け捨てしない)判断もありだと思います。

 一方、まだ貯金の少ない人、ゆとりがない人で、保障が必要であるのなら掛け捨て型を上手に利用しましょう。

 なお、貯蓄型は保険料払込期間中に解約をすると解約返戻金を受け取ることができますが、予定利率が低い大部分の保険では解約返戻金が払い込んだ保険料の合計よりも少ないことがあるため、どうしてもお金が必要なとき以外の解約は避けるようにしましょう。

Money Hack 6 環境が変わったら保険も見直そう

守りたいものに保険をかけよう 難易度★★★

 ライフスタイルに変化があったときは生命保険の見直しもしていきましょう。子どもが生まれたので死亡保障の大きな保険に入ったという人は、子どもが成長して大きな保障が不要になったときが見直しのタイミングです。また離婚して配偶者がいなくなったら、妻(夫)を受取人とした死亡保険などは不要ですね。

 もう一つ、見逃しがちなのが住宅ローンを借りてマイホームを購入したとき。賃貸マンションやアパートに住んでいた頃に加入した保険は、稼ぎ頭の夫の死亡後も発生する月々の家賃の支払いを想定して保険金を決めていたはず。マイホームを購入すれば、家賃の負担がなくなるので、保険金を減額しても大丈夫。

 でも、夫に万が一のことがあったら住宅ローンの支払いが残るのでは? それは住宅ローンを借りるときに原則加入する団体信用生命保険でまかなえます。この保険は住宅ローンの契約者が返済中に死亡したり、高度障害状態になったりすると、ローンの残額が保険金によって肩代わりされて、以後のローンの支払いがなくなるというもの。もちろんマイホームは残ります。

最後に

 家計の見直しというと真っ先に上がるのが保険ですので、基本的には、お金があれば保険は要らないというスタンスで見直しを考えてください。

 しかし安易に安くするのだけは避けてください。いざという時に一番頼りになるのも保険です。万一の時に役に立たなければ家計は破綻してしまいます。

 こんなコロナ禍の時だからこそ改めて自分のリスクと向き合って保障と保険料のバランスをとって保険の見直しをしていただければと思います。

ファイナンシャルプランナー:小沢 雅人
おかねの相談室|宇都宮 FPによる保険・投資信託・住宅ローン相談