投資家の中に、会社を使って株式投資をしている方がいます。個人より会社の方が税率は高いのにあえて会社で株式投資をする、そのメリットはどこにあるのでしょうか。

株式投資ができるのは個人だけにあらず

 多くの投資家は、個人で株式投資をしていますが、株式投資は個人だけでなく、会社を使って行うことも可能です。楽天証券でも、法人口座を開設することができます。

 株式投資を会社で行う場合、新たに会社を設立してそこで株式投資をすることも、すでにある会社で証券口座を作って株式投資をすることも可能です。

 株式以外にもFX投資をするために会社を設立するようなケースや、高い運用成績をたたき出す上手な投資家は、会社を使って投資をするケースがあります。

単純に税率を比べれば個人の方が得のように見えるが……

 なぜ個人ではなく会社を使って株式投資をする人がいるのでしょうか? もちろん会社を使うことによるメリットがあるからです。

 実は、単純な税率だけをみると、個人の場合売却益や配当金にかかる税金の税率は20.315%、対して会社の場合は30数%の税率ですから決して会社が有利なわけではありません。

 しかし、会社という器を使うことで、実質的に税率が個人の税率20.315%を下回る形にすることもできるのです。

 例えば、個人の株式投資では、必要経費に含めることができるものは売買手数料など非常に限定的です。一方、会社ではいろいろな経費を使うことができますから、その分所得を圧縮して税金を抑えることが可能となります。

 役員報酬を自身や家族に払うことで、会社ではそれを経費にできますし、所得分散および給与所得控除の活用による個人・会社を含めたトータルの税額の圧縮が実現できます。

 経営セーフティ共済など、課税の繰り延べが可能な制度を使うことで、利益を合法的に先送りすることもできます。
 生命保険についても、個人で入れば生命保険料控除で最大12万円が所得から差し引かれるだけです。

 しかし、会社で保険に入れば、商品にもよりますが保険料の40%ほどを経費に算入することができます。さらに、生命保険を使って将来自身が受け取るべき退職金を積み立てておくことも可能です。

損失繰り越し期間は9年間

 個人で投資をする場合は、例えば株式投資の売却損益とFXの売却損益を通算することはできません。株式投資と先物・オプションの売却損益も同様です。個人の場合は所得の種類がいくつにも区分され、種類が異なるもの同士は損益通算できないからです。

 会社で投資をする場合は、そうした心配はありません。会社の利益は不動産の賃料でも、FXの利益でも、株式投資の売却益でも、すべて同じ利益として扱われるからです。

 つまり、株式投資で損失が出ていてFXで利益が出ているようなときも、両者を損益通算することが可能です。

 さらには、損失の繰り越しができる期間も異なります。個人であれば3年間が限度ですが、会社なら9年間の繰り越しができます。

 これにより、繰り越した損失を将来の利益と相殺できず切り捨てられてしまうリスクも会社を使えば軽減できることになります。

会社を使った株式投資・ここに注意

 このように、さまざまなメリットがあるのが会社を使った株式投資ですが、一方で注意しなければならない点もあります。

 1つは、会社では特定口座を開設することができないという点です。個人の場合、特定口座を開設すれば、売買損益は証券会社が全て計算してくれます。

 しかし、会社は特定口座を作れませんので、すべての取引を集計・計算して損益を自分で出す必要があります。売買の回数が多い方の場合は計算がかなり大変だと思います。

 もう1つは、株式の含み益に課税がされてしまう可能性があるという点です。税法上、有価証券は「売買目的有価証券」と「売買目的外有価証券」に分類されます。

 このうち、「売買目的有価証券」に該当したものは、期末に保有している有価証券の含み損益を実際の損益として加える必要があります。
 まだ売却しておらず利益も実現していないのに、税金だけはかかってしまうのです。

 この点については、税理士と事前によく相談したうえで適切な対応をとるようにしてください。