世の中のスポットライトを投資に生かすには?

 今回注目するのは「テーマ株」についてです。

 テーマ株とは、話題性や注目度などに焦点を当てて、それらに関連する銘柄(群)を指します。よく、「〇〇関連銘柄」と呼ばれたりもします。

 一口にテーマと言っても、新技術や世の中の流れから、政治的な動きや社会問題など、その対象とするものは多岐にわたります。報道や会社のプレスリリースをきっかけにテーマとして浮上することもあります。

 人々の耳目を集めてスポットライトを浴びた銘柄はグイグイと株価が上昇することが多いため、テーマ株を切り口に銘柄を探す・選ぶというのはかなり一般的です。個人投資家向けの情報誌やウェブサイトでも、「これからの注目テーマは?」といった特集は人気の企画です。

 楽天証券の「マーケット・スピードⅡ」でも、前回紹介した『銘柄ナビ』の中に「テーマ別銘柄検索」という機能があり、ざっくりとしたジャンル(業種)からキーワードでテーマを絞り込んだり、直近で注目度の高いテーマをランキングから探すことが可能です。

図1:マーケット・スピードⅡの「テーマ別銘柄検索」画面

 例えば、7月29日時点の人気ランキングを見ると、DX(デジタルトランスフォーメーション)やテレワーク、新型コロナウイルス、サイバーセキュリティー、5G(第5世代移動通信システム)などが上位に並んでいます。

「にわか」テーマに注意

 テーマ株は売買が盛り上がりやすく、信用取引の資金も流入して短期間のうちに株価が2倍・3倍、もしくはそれ以上になることも珍しくありません。大きな利益がねらえるチャンスがあるわけですが、その分だけ株価の下落も速くなりがちです。人気化によって株価が過大評価される傾向も加わるため、値動きのスピードについていくのが意外と難しく、「テーマで銘柄を選んで投資したものの、なかなかうまくいかない」ことも「あるある」です。

 本来、テーマ株には技術や政策、世の中の動きなど、その背景に「説得力や納得感を与えるもの」を持っています。描かれる成長ストーリーが分かりやすく、成長に伴って中長期的に株価が上昇していくようなイメージなのですが、実際の相場では、株価が期待を先取りする格好で早い段階のうちに上昇してしまう他、降って湧いて出たような「にわか」のテーマだと短命に終わってしまうこともあります。

「にわか」テーマの例を挙げれば、「北朝鮮から飛翔体が発射された」など日本周辺で軍事的緊張が高まると防衛関連銘柄が物色されますが、大抵は長く続きません。また、「解散総選挙が行われる」とか、「日本人がノーベル賞を受賞した」といった場合に反応する関連銘柄も同様です。

 したがって、テーマ株投資は思っている以上に短期投資向きで、「テーマの賞味期限」への意識とスピード感が必要と言えます。

テーマ株は裾野が広がりやすい

 また、「テーマ株は裾野が広がりやすい」という特徴を持っています。これについては足元のコロナ関連銘柄が分かりやすい例です。マスク関連銘柄をはじめ、ワクチン・治療薬関連銘柄やテレワーク関連、リモートによる学習や医療・エンターテインメント関連銘柄、巣ごもり消費関連銘柄、サイバーセキュリティー関連銘柄など、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、テーマが次々と連想的に派生していきました。

 つまり、「コロナ」という大きな枠組みで見ればテーマの賞味期限は比較的長いと言えますが、その中にある細かいテーマ同士では資金や銘柄が移り変わり、それぞれの売買の盛り上がりや賞味期限に差異が出てきます。もちろん、こうした性質を逆手にとって、連想力を働かせてうまく流れに乗ることも可能ではありますが、日頃から市場の動きをウオッチできる環境でないとかなり難しいと言えます。

 もちろん、先ほども触れた通り、テーマ株には技術や政策、世の中の動きなど、その背景に「説得力や納得感を与えるもの」を持っています。きちんと成長という結果を出している銘柄は、一時的に乱高下を見せる場面があっても長い目で見れば株価を上昇させていく傾向があります。

 そのため、企業の売上や営業利益などが順調に伸びているなど、ファンダメンタルズ面でしっかりした銘柄を中長期の視点で拾うのも一手です。とはいえ、一度大きな相場を作った銘柄は再上昇するまで時間が掛かることが多いため、割安となっている銘柄をリストアップし、上昇し始めたものから買っていくなどの工夫が必要になります。