ファンダメンタルズ堅調と株価がミスマッチ、電力需要も回復傾向に

    マーケットが出遅れ銘柄の物色に動く中、BOCIはそのうちの一つ、火力発電セクターの投資機会に目を向けている。ファンダメンタルズ面では、電力各社の在庫補充の動きが一段落するのに伴い、一般炭価格は短期的にピークを打つと予想。一方の電力販売価格は安定的に推移する可能性が高いとみている。ダークスプレッド(石炭と電力の価格差)とROE(株主資本利益率)がヒストリカル平均を超える水準で推移する中にあっても、火力発電各社の株価バリュエーションは依然低水準にあると指摘。華能国際電力(00902)、華電国際電力(01071)の投資判断を中立から強気に引き上げるとともに、華潤電力控股(00836)と中国電力国際(02380)に対する強気の判断を据え置いた。

 7月6日には電力銘柄が一斉に買われたが、その後も株価の20年予想PBR(株価純資産倍率)は0.3-0.6倍と、ヒストリカル底値に近い水準にとどまっている。BOCIは現在の香港市場では、投資家は電力セクターを含め、ファンダメンタルズの手堅い出遅れ銘柄を物色する傾向にあると指摘。現在の金利環境の下では、6-10%の高配当利回りも魅力が大きいとしている。

    BOCIは火力発電各社の株価水準とファンダメンタルズのミスマッチが投資機会につながるとみている。まず、電力販売価格については、20年上期にほぼ横ばいに推移したとの見方。一方、コスト面では、一般炭スポット価格が上期に前年同期比11%低下したと報告した。国内の供給寸断や輸入制限を受け、一般炭価格はこのところ1トン=600元の大台に向けて上昇しているが、BOCIは短期的にピークを打つと予想(一般炭先物は低めの564元で推移)。その結果、各社のダークスプレッドは20年に1MW当たり平均162元と、過去15年超のスパンでみたパーセンタイル値で60(データを大きさ順で並べた時に最小値から60%の場所にある値)と、相対的に高水準になるとした。それにもかかわらず、セクター全体の株価バリュエーションは、ダークスプレッドがほぼ過去最低の約100元だった11年を下回る水準にあると指摘している。

    一方、東部沿海地区における火力発電各社の石炭消費は4-6月に前年同期比3.6%増と、1-3月の17.9%減から回復した。7-9月以降は大手3社がデイリーベースの石炭消費データの発表を打ち切るとしており、詳細データの継続的な参照は難しくなるものの、BOCIはエネルギー集約型産業(鉄鋼、セメントなど)の生産活動の活発化を受け、電力需要の伸びは下期も続くとみる。

 個別では、相対的に低バリュエーションの華電国際電力と華能国際電力の短期的な勢いを見込む半面、華潤電力控股に関しては長期の投資価値を指摘。バランスの取れた事業ポートフォリオと炭素放出コストに絡む相対的なリスクの低さを理由に挙げ、現時点では華電国際電力、華能国際電力、華潤電力控股の順で選好するとしている。