為替は月曜から金曜まで24時間動いています。その中でも特によく動く時間帯、あるいはマーケットが盛り上がる時間帯があります。

 代表的なのが米国雇用統計の発表後(毎月第1金曜日)は非常によく動きます。

 また、米国の中央銀行にあたるFRBの理事会(FOMC)の後も動きます。FOMCは、特に中長期トレンドを作るきっかけになるため、注目されます。現在のマーケットでは、この二大要因が特に注目されています。

 では、1日、1週間、1カ月、四半期、1年のタームで、為替が動きがちな注意すべき時間帯、時期を解説していきます。

為替 外国為替、FXのこと。マーケットのプロは日常的に「為替はどう?」などと話題にする
FRB
(米連邦準備制度理事会)
FRBは、米連邦準備制度理事会(Federal Reserve Bord)の略。 この理事会は7名の理事から構成され、議長は日本で言えば、日銀の黒田日銀総裁にあたる。同じ略称表記に、米連邦準備銀行(Federal Reserve Bank)があり、米国の中央銀行制度である連邦準備銀行制度に基づいて設立された機関となる。米国12地区にFRBはあり、 ニューヨーク連邦準備銀行が要となる
FOMC
(米連邦公開市場委員会)
米連邦公開市場委員会(Federal Open Market Committee)の略称。 米国の金融政策を決定する最高意思決定機関。年8回開催している

 

1日の中で動く時間帯は?

 1日24時間の中で、日本、欧州、米国と主戦場が移っていく中で、市場が盛り上がる時間帯も動いていきます。それでは分かりやすくするため、日本時間軸で見ていきます。

午前8時30分 日本の経済指標発表。月末のCPI(消費者物価指数)は注目材料
午前8時50分 日本の経済指標発表。特に日銀が発表する「短観」は注目。日銀短観は四半期に1回発表される
午前9時 東京市場開始の時刻。輸出や輸入企業が9時と同時にマーケットに参加する場合があり、その時に相場が動く
午前9時55分頃 東京市場で、銀行がその日の公示レートの仲値を決定する時間。9時50分ごろから動きだし、輸出企業の決済が多いとドル売りに動きやすく、輸入企業の決済が多いとドル買いに動きやすい。公示決定後も10時過ぎ頃までは、調整ポジションの売り買いが出やすく、相場が動く
午前10時30分 豪州の経済指標発表時間。豪ドルに絡んだ通貨ペアが動く場合が多い
午後3時 東京オプションカット時間。東京市場のオプションの判定時間。午後3時数分前から動きだし、しばらく動く
午後4時 ロンドン午前8時フィキシング時間(Fixing time)。日本の公示決定のようにロンドンで基本価格を決める時間。日本の投資信託がこのフィキシング・レートを使うことがあるため、相場が動きやすい
午後4時〜7時 欧州、英国の経済指標発表時間。欧州、英国の経済指標が予想を大きく外れると、ポンドやユーロを中心に大きく動く
午後9時30分 米国経済指標発表時間。雇用統計やGDP(国内総生産)など米国の主要経済指標はこの時間に発表される。予想を大きく外れると、ドルに対してすべての通貨が動きますので最も注目される時間
午後11時 米国の経済指標は午後11時頃までにほとんどの指標が発表されるため、午後9時半から11時までは相場がよく動く
午前0時 ロンドン午後4時フィキシング時間。実感的には、ロンドン午前8時のフィキシングタイムよりよく動く。これで、マーケットはしばらく休憩する。おそらくロンドン市場のディーラーは、大半が帰宅すると思われる。
午前3時から4時 シカゴ先物市場の取引清算に合わせ、相場が動きやすい時間帯
午前6時 ニューヨーク取引時間終了

 まとめますと、東京市場で午前8時半から10時、欧州市場で午後4時から7時。ニューヨーク市場で午後9時半から12時が相場の動く中心時間帯となります。最も動くのは欧州の午後とニューヨークの午前が重なる午後9時半から12時の間になります(全て東京時間、冬時間の場合は1時間後倒しとなります)。

 

1週間の中で動く時間帯は?

 これまで1日の中で動く時間帯を見てきましたが、少し時間軸を伸ばして1週間の中では何か特色があるのでしょうか。

 基本形は週初に作ったポジションを週末に閉めるという動きがあります。つまり、月曜日にその週の高値(安値)をつけ、金曜日にその週の安値(高値)をつけるという動きになります。また時々、三日ひと相場なのか、水曜日あたりに反対方向の動きが出る時があります。

 輸出や輸入の実需の動きで見ますと、月曜日、つまり週初めに動きが出やすいということもあります。おそらく、月曜日に社内会議で先週の動きと今週の予想、売買戦略が議論され、月曜日の公示タイム以降に実行されるということだと思われます。これらの動きは基本形であり、いつもそのように動くということではないですが、頭の中に入れておいて損はないと思います。

1カ月の中で動く時間帯は?

 1カ月の中ではどうでしょうか。

 毎月最も注目すべきは、第1金曜日に発表される米国の雇用統計(日本時間午後9時30分)で世界中が注目し、その月の相場のトレンドを為替のみならず、株、債券、商品と全てにわたって方向付けする要因です。

 米経済指標の中で次に注目される住宅関連指標は月の下旬に発表されます。

第1週

第1週 RBA、ECB、BOEなど主要中央銀行の金融政策委員会が開催
RBA Reserve Bank of Australia オーストラリア準備銀行の略。原則、毎月第1火曜日に開催(日本時間午後12時30分)
ECB European Central Bank 欧州中央銀行の略。原則2週間に1回開催、その月の1回目の理事会(原則第1木曜日)で金融政策を決定(日本時間午後8時45分)
BOE Bank of England 英国中央銀行の略。原則第1水曜、木曜の2日間開催(日本時間木曜日午後8時に発表)

不定期

 FRBと日銀は特に曜日が定まれておらず不定期ですが、事前に開催日を公表します。

FRB

約1カ月半に1回(年8回)前年終わりに翌年の開催日を公表

日銀 原則月2回開催。決定発表時間は定まっておらず、平均午後1時前後

 さらに、BOE、FRB、日銀は金融政策員会の数週間後に議事録を発表します。この議事録の内容によっては相場が動くときがあるので、マーケットでは注目されています。

5、10日や月末

5日、10日決済 日本の商慣習でその月の5や10のつく日に、つまり5日毎に決済が行われるという商慣習がある(ご・とおび決済)。一般的には輸入決済が多い。従って、公示タイム(午前10時前)にかけてドル買いが出やすくなる
投信設定 外貨型投信の設定が月初や月末近くになると多くみられ、設定額が大型だと相場が動くことがある(公募が大型でも応募が少ない場合もあるので注意)。設定日は事前にわかる
月末 輸出や輸入の実需では月末で取引される決済が多く、月末の公示タイムは大きく動く時がある。ドル円の取引は、通常2営業日後渡なので(これをスポット取引といいます)、月末の2営業日前から注意が必要。また、半期末や年度末の月末は、更に大きく動く時がある。10年に一度ぐらい、3月31日に非常に大きく動く時があるので、3月31日は要注意日というのが経験則

 

四半期の中で動く時間帯は?

 四半期の中でよく注目されるのが、外債の利金、配当の円転です(ドル売り要因)。2月、5月、8月、11月の各15日に集中しており、これも数日前から出やすくなります。

四半期末 外国の企業やファンド、機関投資家は四半期決算を重視するところが多いため3月末、6月末、9月末、12月末近くは相場が動きやすくなる。特に、利食いなどが多くみられるため、それまでのトレンドの反対に動くことがある
15日 ヘッジファンドの解約ルールで45日前ルールというのがある。解約したければ、その45日前までに連絡が必要というルール。特に1年の決算である11月や12月決算(11月決算も多い)の45日前、10月15日や11月15日は要注意日。これまであまり意識されていなかったが、リーマンショックの時に相場が大きく揺れ、利食いだけでなく損切りの解約が多く出たことから注目されるようになってきた。通常は、あまり意識されませんが、相場が大きく揺れるとこの話が出やすくなりますので要注意
第4四半期 四半期の中で一番注目されるのは第4四半期です。大恐慌やブラックマンデーがあった10月があり、その年のすべての成績、着地が意識される四半期。例えば、それまで成績が振るわなかったファンドなどは、クリスマスまでに最後の一勝負に出てくることも考えられる

年度や年の中で動く時間帯は?

 1月は、年はじめということで一気に相場が動くことがあります。5月に一度だれて、夏場に向けて盛り上がり、9月、10月は波乱の月。そして11月下旬からクリスマスモードに入り、 12月は閑散というのが基本的な流れです。気になる月を見てみます。

3月 3月31日の期末日の数日前から相場が動きやすくなる。年度末はドル買い需要が多いなどとよく言われるが、一概には言えない。期末絡みの特殊玉や決算絡みの調整売買など特殊要因が多く、相場が翻弄されやすいため。ただし、ここ数年は輸入が増えているため(貿易赤字傾向)ドル買いには注意したいところ。繰り返しますが、特に3月31日は要注意日。さらに午前10時前の公示レート発表前後は要注意時間帯
5月 株の世界では「Sell in May」という格言があり、5月は売り逃げろと言われています。 為替の世界ではゴールデンウイークの時に動くことが多い
8月 なんとなくいやな月。特にお盆休みに大きな事件が起こるという印象がある。もちろん、毎年ではないが…。 
1971年8月15日 ニクソン・ショック・ドルと金との兌換停止を宣言
1990年8月2日 イラクのクウェート侵攻 
1998年8月17日 ロシアのデフォルト (対外債務の支払い停止)
2007年8月9日 リーマン・ショックの前年のパリバショック 
9月 通貨大乱の月。為替の世界では最も警戒する月
1985年 9月22日 「プラザ合意」一気にドル安調整が進み、翌日1日で240円台から20円の円高に
1992年 ポンド危機。9月を通し、ポンドはジョージ・ソロスに売り浴びせられ、イングランド銀行の介入にもかかわらず、9月17日、ポンドはERM(欧州為替相場メカニズム)を脱退し変動相場制に移行。この日はブラックウェンズデー(暗黒の水曜日)と呼ばれ、ジョージ・ソロスは「イングランド銀行を破産させた男」として一躍有名に
2008年 9月15日 リーマン・ショック。 リーマンブラザーズの破綻をきっかけに世界金融危機に
2013年 特に大きな波乱はなかったですが、米国のFOMCで金融緩和縮小が期待されていたが、予想外の縮小見送りの結果、ドル安に。大きな相場変動はなかったが、相場の分岐点になるかもしれない。
10月 株の世界では1929年10月24日のNY株の大暴落(暗黒の木曜日 ブラック・サーズデー)が記憶されており、大警戒の月
1987年 10月19日 ブラック・マンデー(暗黒の月曜日)。1929年の暗黒の木曜日を上回るNY株の大暴落。翌日の東京株式市場は、鮮明に記憶しているが、全面安のストップ安に。為替のディーラーもただ見ているだけ
1998年 ドリームチームと呼ばれたヘッジファンドLTCMがロシア危機をきっかけに破綻。ドル/円は2日間で20円の円高に
2009年 10月のギリシア政権交代をきっかけに財政赤字がふくらむことが明らかとなり、ギリシア危機から欧州債務問題に発展

 上記のように、9月、10月は、株や為替で不穏な動きが出やすく、またここ数年は欧州で秋から問題が発生し始める傾向があり、要注意の季節です。

 

11月、12月

11月 11月の米国感謝祭( Thanksgiving Day 第4木曜日)からクリスマス・モードに入るため、1年の閉めはそれまで。11月15日は前述したヘッジファンド解約の45日前ルール(12月決算ベース)にあたるため要注意日
12月 クリスマス・モードは強まり、超閑散相場となる日が続きます。12月25日は 世界的に相場が休む日。全く流動性がなくなるため、あまり大きくポジションを持つと悪いコストでの決済となるため要注意。12月31日は、平日であれば、相場は動いている。1月は、世界的には2日から相場が動く