「7割経済」が現実に?
5月25日に緊急事態宣言が全面解除され、その後6月29日には都道府県境をまたぐ移動についても自粛要請が全面解除されました。これで一息かと思いきや…東京都での日々の新規感染者は高水準のままです。さらに、隣接する神奈川県では感染者が増加の兆しを見せています。
経済活動再開の「負」の側面が表面化しているのが今と言えそうです。感染報告が相次ぐ、いわゆる「夜の街」についてはすでに、西村康稔経済再生担当相と東京都の小池百合子知事は二次感染の抑制に取り組むことで一致しています。
また、日本政府も承認した新型コロナウイルスの治療薬「レムデシビル」の開発元である米医薬品ギリアド・サイエンシズ社は6月29日、同薬の患者1人当たりの価格(5日間6回投与)を、先進国向けで2,340ドル(約25万円)に設定すると発表しました。
日本では、新型コロナ肺炎は指定感染症のため入院治療費は公費負担となっており、レムデシビルについても患者の費用負担は発生しない見通しですが、いずれにしても高額治療であることに変わりはありません(ギリアド社は商業生産の体制が整う6月末まで、日本など各国に無償で薬を提供していました)。
レムデシビルは入院日数を平均4日間短くする効果があるものの、死亡率の低下は確認されていない薬でもあります。「治療薬があればなんとかなる」と安心していられるものではないでしょう。
様々な制限や潜在的な自粛意識が消失するわけではないことから、「7割経済」(元の7割程度しか経済活動が回復しないという見方)は現実のものとなっているのかもしれません。少なくとも、ある日を境に急にコロナ前に戻ることはないでしょう。
銘柄間格差がどんどん大きくなっている
株式市場では、コロナが逆風となる銘柄と追い風となる銘柄の格差が、どんどん大きくなっています。
まずは「逆風銘柄」の動きを確認します。移動制限や旅行者減少の影響が大きいANAホールディングス(9202)とエイチ・アイ・エス(9603)、焼き鳥チェーンの鳥貴族(3193)、さらにバリュー銘柄の中心的存在のメガバンク・三井住友フィナンシャルグループ(8316)です。
現在、日経平均株価は3月19日の安値1万6,552円83銭から2万円を大きく超える水準まで回復しています。その中で、これらの銘柄もさすがに年初来安値よりは上に位置していますが、それでも厳しい株価です。
コード | 銘柄名 | 株価(円) |
---|---|---|
9202 | ANAホールディングス | 2,409.5 |
9603 | エイチ・アイ・エス | 1,593 |
3193 | 鳥貴族 | 1,476 |
8316 | 三井住友フィナンシャルグループ | 3,010 |
※株価データは2020年7月1日終値ベース |
ANAホールディングス(9202)の日足チャート
エイチ・アイ・エス(9603) の日足チャート
鳥貴族(3193) の日足チャート
三井住友フィナンシャルグループ(8316) の日足チャート
コロナが追い風になる銘柄
逆に「追い風銘柄」を見てみましょう。
コロナが追い風になる銘柄の中心は「ドラッグストア」「食品スーパー」「衛生品メーカー」「通販関連」などです。それに加えグロース株の中心的存在・日本電産(6594)も加えます。
コード | 銘柄名 | 株価(円) |
---|---|---|
3141 | ウエルシアホールディングス | 8,510 |
8279 | ヤオコー | 7,670 |
4912 | ライオン | 2,583 |
3769 | GMOペイメントゲートウェイ | 11,320 |
6594 | 日本電産 | 7,100 |
※株価データは2020年7月1日終値ベース |
ウエルシアホールディングス(3141)の日足チャート
ヤオコー(8279) の日足チャート
ライオン(4912) の日足チャート
GMOペイメントゲートウェイ(3769) の日足チャート
日本電産(6594)の日足チャート
「逆風銘柄」と「追い風銘柄」の動きは両極端です。このように比べると、投資家の視点がどこにあるのかが本当によく分かります。
コロナ不安が続くと、この格差がさらに大きくなるかもしれません。客観的に見ると逆風銘柄の株価の位置は安く、追い風銘柄の株価の位置は高くなります。
しかし、それは本当に安いのか?(=この水準なら買える)もしくは本当に高いのか?(=この水準では買えない)をコロナの状況を勘案し考えなければなりません。全体相場の一服も、次の動きを精査している投資家が多いことが一因と思われます。
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