今日は、8月の人気優待銘柄に投資する場合、アナリストの視点から、注意すべきと考えることをお伝えします。

8月優待銘柄には、小売業の人気銘柄多いが、コロナ危機直撃もあり要注意

 8月は、2月決算銘柄の中間期末です。また、8月決算銘柄の本決算にも当たります。2月決算・8月決算銘柄には、個人投資家に人気の高い小売業の優待銘柄が多数あります。業績が長期的に安定的で、優待魅力の高い銘柄を選別して、投資していくことを検討して良いと思います。

 ただし、注意すべきことがあります。小売業には、コロナ危機直撃で、足元の売上・収益が大きく落ち込んでいる銘柄が多数あることです。中長期的に収益成長が期待される勝ち組小売企業でも、短期的には、かなりひどい落ち込みになっていることもあります。

 足元の落ち込みがどのくらい深刻か、3-5月決算で確認してから、投資を検討した方が良いかもしれません。

 8月優待銘柄の、3-5月期決算は、例年だともう発表が始まっています。3-5月決算は、例年は遅くとも7月15日までに発表になります。ただし、今年はコロナ危機の影響で7月15日までに決算が発表できない企業もあるかもしれません。

 そもそも今年はコロナ危機の影響で、2月決算小売業で、今期(2021年2月期)の業績予想を非開示としている企業が多数あります。例年と異なり、通期業績予想がなく、しかも、第1四半期(3-5月)の実績も発表されていない状況で、優待の魅力だけで投資銘柄を決めるのは、リスクが高いかもしれません。

8月に優待の権利が確定する銘柄、人気トップ10

人気トップ10【注】は、以下の通りです。

【注】人気トップ10
8月に株主優待を得る権利が確定する銘柄は、105あります。楽天証券の利用者が保有している株主の数が多いほど、人気が高いと判断し、保有株主数の上位10社をピックアップしました。

人気順位 コード 銘柄名 株価:円 最低投資金額:円 優待内容
1 8267 イオン 2,492 249,200 優待内容
2 3048 ビックカメラ 1,113 111,300 優待内容
3 9861 吉野家HD 2,133 213,300 優待内容
4 3387 クリエイト・レストランツHD 682 68,200 優待内容
5 3543 コメダHD 1,788 178,800 優待内容
6 8233 高島屋 884 88,400 優待内容
7 7545 西松屋チェーン 1,062 106,200 優待内容
8 4668 明光ネットワークジャパン 846 84,600 優待内容
9 7445 ライトオン 578 57,800 優待内容
10 3222 ユナイテッド・スーパーマーケットHD 1,112 111,200 優待内容
出所:楽天証券「株主優待検索」、株価は7月1日終値

 株価の右側の「優待内容」をクリックしていただくと、どのような優待を実施しているかご覧いただくことができます。ただし、優待内容は、予告なく変更されることもあります。常に最新の情報をチェックしてください。楽天証券HPでは、1カ月ごとに優待内容を更新しています。

コロナ危機でも西松屋チェーンは好調

 上記銘柄の中で、7月1日時点で3-5月決算を発表済みなのは、西松屋チェーンだけです。同社は、3-5月コロナ危機の中、好調な業績を発表しており、投資妙味は高いと判断しています。

 西松屋チェーンは、3-5月の既存店販売が+9.7%伸びています。その結果、3-5月の営業利益は、前年同期比46%増の36.66億円まで伸びました。同社既存店販売は、6月には33.8%増となっており、好調が続いています。

 ただし、人気トップ10リストの中には、コロナ直撃で業績が悪化しているものも含まれているので、注意が必要です。できれば、3-5月決算を見てから、投資した方が良いと思います。

 イオン、ビックカメラ、吉野家のように、コロナ危機でダメージを受けても、コロナが去れば、中長期的に安定収益を稼いでいくと期待している銘柄もあります。こうした銘柄は、長期投資で買っていって良いと判断しています。ただし、慎重に判断するならば、3-5月の決算発表を見てからの方が良いかもしれません。

 上記リストの中には、ライトオンのように、コロナ危機が起こる前から、業績が低迷している銘柄もあります。私は、ライトオンは、投資を避けた方が良いと考えています。

人気トップ10の、四半期業績の推移をチェック

 コロナ危機の直撃を受けた2020年3-5月の業績は、西松屋チェーン以外は、発表になっていません。ただし、その前の2019年12月-2020年2月の業績は発表済みです。2月には、コロナ危機の影響が出始めていますので、コロナ危機の影響について考える、重要な判断材料です。以下をご参照ください。

8月優待人気トップ10、四半期別の営業利益推移:2019年3-5月期~20年3-5月期

人気順位 銘柄名 19年3~5月 19年6~8月 19年9~11月 19年12月~20年2月 20年3~5月
1 イオン 277.5 585.8 167.6 1,124.5 NA
2 ビックカメラ 53.5 49.4 42.5 34.2 NA
3 吉野家HD 10.4 18.9 -0.5 10.4 NA
4 クリエイト・レストランツHD 28.2 14.7 5.3 -13.4 NA
5 コメダHD 19.4 20.0 19.7 19.7 NA
6 高島屋 77.5 56.8 68.4 53.2 NA
7 西松屋チェーン 25.2 -2.9 6.8 -10.0 36.7
8 明光ネットワークジャパン -6.5 8.8 3.3 9.5 NA
9 ライトオン -0.6 -16.9 -0.1 1.5 NA
10 ユナイテッド・スーパーマーケットHD 15.1 12.2 19.6 46.7 NA
出所:日経QUICK
注:営業利益は単位は億円。各四半期(3カ月)分のみ、小数点2位以下四捨五入、赤字は赤で表示

 クリエイト・レストランツは、2019年11月-20年2月が営業赤字になりました。3-5月の業績がどうなっているか、慎重に見極める必要があります。西松屋は、11月-2月が営業赤字ですが、3月以降、業績はとても好調で、積極的に投資して良い銘柄だと判断しています。

 イオンの四半期営業利益が2019年11月-20年2月だけ大きくなっていることが目を引くかもしれませんが、これは同社にとって例年続いている季節性です。イオンは長期投資で、投資妙味が大きいと判断しています。

 今日のレポートはここまでです。まだ、私の投資判断を述べていない銘柄もありますが、人気トップ10銘柄に対する、私のアナリストとしての投資判断をそろってお届けするのは後日、3-5月の決算が発表済みになってからとします。よろしくお願いします。