人気投資ブロガーに聞く割安株の投資戦略!

 株式には、成長株(グロース)、割安株(バリュー)を狙って投資する戦略がある。どこに狙いを定めるべきか。百戦錬磨の投資ブロガーが自らの投資戦術を余すことなく紹介する。

 今回は、割安株に集中・長期投資しているかぶ1000さんが、投資術の秘訣(ひけつ)を語った。

「1万円が入った財布を6,000円で買う」発想の割安株投資

 31年もの長きにわたって株式投資一本で生活してきた、かぶ1000さん。割安株投資というと、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が低い株、というのが一般的なとらえ方だが、かぶ1000さんの視点はもっと鋭く深いもの。

 かのウォーレン・バフェットも師と仰ぐ米国の有名な割安株投資家ベンジャミン・グレアムが提唱した「ネットネット株」もその一つ。ネットネット株とは、「1万円の現金が入った財布を6,000円で買える」状態といわれるように、企業が保有する現預金やすぐに現金化しやすい有価証券、売掛金といった流動性資産から、借金や貸し倒れ引当金などの流動性負債を引いた「正味流動純資産」に対して、株価が6割以下まで売り込まれているような究極の割安株のこと。

 その他にも、M&A(企業の買収・合併)やTOB(株式公開買い付け)で企業買収を企てるプロの投資家から見た企業の事業的な価値(PMV:プライベートマーケットバリュー)にまで注目。そうした企業に、業績の向上や新たな成長期待など「カタリスト(触媒、きっかけ)」が起きるのを虎視眈々(こしたんたん)と狙うのも、かぶ1000さん独自の割安株発掘法だ。

 プロが目をつけるような銘柄を探すためには、『会社四季報』の熟読や「有価証券報告書」「決算短信」の読み込みはもちろん、時にはIRエキスポや株主総会に出向いて経営陣に直接質問するなど、ファンドマネージャーも顔負けの銘柄研究・分析を怠らないことが必要。その地道な努力こそが、日経平均株価など株価指数が大幅マイナスの年でも、年率数十%の運用益を叩き出す、かぶ1000さんの投資成績に直結している。

 そんなかぶ1000さんに、その投資手法を一言で説明してもらうと「バーゲンセールを待つこと。それを取り逃がさないようにすること」という答えが返ってきた。

相場低迷時の割安株、含み資産でM&Aが期待できる株を狙う

 成熟産業や斜陽産業と呼ばれる分野の企業で人知れずシェアを伸ばしていたり、M&Aで事業を拡大している企業が、かぶ1000さんが狙う主な割安株のターゲットとなる。

 土地の含み資産が豊富で外部の投資ファンドなどが株を買い占めそうな会社(例:不動産・ホテル事業のユニゾホールディングス・現在上場廃止)、成長性のある事業を新たに手掛けて復配しそうな企業(例:中古車買い取り・輸出のアップルインターナショナル・2788)などを、貸借対照表やキャッシュフロー計算書から丹念に探していくことで、1銘柄1,000万~3,000万円もの利益をモノにしてきた、かぶ1000さん。

「割安株の場合、普段は値動きも小さいため株価の変動率も小さいですが、業績や保有資産への注目が集まるなど、何かをきっかけに急騰することもあるので、そのタイミングを逃さずに利益確定することも大切です」というように、売り時も大切だ。

 そんなかぶ1000さんが発掘したテンバガー(株価10倍株)は、「底地」と呼ばれる土地開発のみに特化した不動産デベロッパーの日本商業開発(3252)

「2011年7月に名古屋証券取引所が主催するIRエキスポで取締役の方と2時間ぐらいお話しして、そのビジネスモデルに感銘。IPO直後、初値から4分の1まで下落したところで購入しました。その後、株価が10倍になる過程で少しずつ売却し、2013年4月に株価10倍になった時点ですべて売り切りました。しかし、株価はさらに上昇を続け、最終的に買値より100倍以上になっています」と振り返る。

 相場が低迷しているとき、成長期待のある割安株を買えば、100倍ものリターンが得られる可能性もあるのが、株式投資の醍醐味。それは東日本大震災後の2011年も、コロナ・ショックに見舞われた2020年の今も同じだ。

 土地の含み益がたくさんある株として投資を開始したオフィスビル賃貸やホテル事業のユニゾホールディングス(現在上場廃止)では、2019年5月に大手旅行会社エイチ・アイ・エス(9603)が筆頭株主になったことで、すかさず買い増し。同社のTOB表明で株価が急騰し、1,700万円以上の利益を得て利益確定した。

「その後、エイチ・アイ・エス以外の外資系ファンドも参入したTOB合戦になり、株価はさらに3倍まで上昇したので、残念な取引でした」と反省するかぶ1000さんだが、企業が持つ土地の含み資産などから、あらかじめM&AやTOBの対象になりそうな銘柄を見つけられる洞察力や目利き力は、プロ並みといっても過言ではない。

誰もが知っている有名企業にも割安株はある! 

 オリックス(8591)ソフトバンクグループ(9984)といった、誰もが知っている有名株の取引でも、1,000万円以上の利益を出しているかぶ1000さん。

「オリックスは不動産、保険など多角化して、海外展開にも積極的な優良株の位置づけで投資しました。金融セクターに属し全体相場の影響を強く受ける習性があり、比較的ボラティリティー(価格変動性)もあることから、中長期目線でスイングトレードするには最適の銘柄として現在も投資継続中です。一方、悪材料が出ている『ビジョン・ファンド』に何かと注目が集まるソフトバンクグループですが、この株は基本、アリババの株価とリファイナンス費が重要で、この2点以外の要因で株価が下落した際は投資チャンスだと思っています。携帯キャリア部門のソフトバンクKK(9434)の上場で財務内容が急改善し、保有するアリババの含み益も拡大して、保有株式の評価額が同社の時価総額を大きく上回る状況になった2018年12月より投資を開始して、利益を積み上げました」(かぶ1000さん)

 そんなかぶ1000さんでも時には失敗もするもの。

「コロナ・ショックの過程で移動制限の直撃を受けるということで株価が大きく下落した東日本旅客鉄道(9020)では、下落する過程で信用取引中心に安易な買い下がりを行ってしまい、失敗しました」(かぶ1000さん)

 また、エアバックのリコール問題で株価が急落したタカタ(現在上場廃止)や、2019年12月に前社長が逮捕された不動産デベロッパー・プレサンスコーポレーション(3254)などでも損失はこうむったものの、損失額は最大でも800万円以下。「ダメだ」となったときに素早く損切りする見切りのよさ、潔さも、年率20%以上の運用益を叩き出せる秘訣といえるだろう。

 プロ顔負けの企業分析は初心者には難しい。しかし、誰もが知っている大型株でもきっちり利益を上げているかぶ1000さんの「バーゲンセールを狙う」発想や着眼点からは、きっと多くのことを学べるはず。

「最初は誰でも素人ですし、失敗もあると思います。私は儲(もう)けようという気持ちで投資するより、結果的に儲かったという形を目指すべきだと考えています。株式投資は大きな間違えさえしなければ複利の効果で、時間が味方してくれるため、多少のミスならカバーしてくれます。ただ、必要以上にリスクを抱えた投資や、継続性のない無理な投資をしてしまうと、遅かれ早かれ退場となってしまうこともあります。大切なのは自分のペースで無理のない形で継続して投資をしていくこと。種銭が少ないときでも、配当金の再投資はもちろん、継続して株式投資を続けていくことが成功への近道だと私は思います」と、かぶ1000さんは投資初心者へアドバイスを送る。

≫≫「割安有望株5選!プロの目利き力を持つかぶ1000さんがアフターコロナを見据えて注目」を読む

かぶ1000さんプロフィール

 中学2年だった1988年から株式投資を始め、今年で専業投資家歴31年目を迎える大ベテラン。2011年に独自の割安株投資で1億円プレイヤーに。時価総額に比べて、正味の流動純資産が著しく多い「ネットネット株」や豊富な不動産含み益などを持つ「資産バリュー株」への投資で、2019年7月16日には累積利益4億円を突破した。保有株式全体の運用利回りが年20%超になることを目標に日々、割安株の発掘にまい進。人気ブログ『かぶ1000投資日記』でポートフォリオや運用成績を公開する他、ツイッターやツイキャスでも投資術を披露している。

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