なぜ「売買単位の変更」が相次いでいるのか?
今回は前回に引き続き、売買単位の変更についてです。前回は速報として緊急に注意点をお伝えしましたので、今回は背景や売買単位の変更による株価への影響をご説明します。
ここ最近になって、多くの銘柄が売買単位の変更を行うのには、実は理由があります。
売買単位は銘柄ごとに異なっています。1,000株や100株の銘柄が多いのですが、他にも1株や10株、50株、500株の銘柄もあります。
しかし、ここまで売買単位が多い市場は国際的にみて少なく、利便性の低下の一因になっています。さらに、投資家が売買注文を出す際に誤った数量を発注してしまう恐れがあるなど、混乱の原因になりかねません。
そこで東京証券取引所では、いくつもある売買単位を集約するため、2007年11月27日に「売買単位の集約に向けた行動計画」を公表しました。
これにもとづき、2014年4月1日までに売買単位を100株もしくは1,000株のいずれかに集約することとなりました。
実際、10月1日より売買単位を変更する銘柄は、その全てが100株に変更されています。
現時点で売買単位が100株もしくは1,000株になっていない銘柄も、2014年4月1日までには売買単位が変更されることになります。
そして、最終的には売買単位を100株に統一することを目標としています。
株価への影響は? ケース1:売買単位の変更のみ
東京証券取引所HPの
「10・11月単元株式数(売買単位)の変更を行う会社一覧」をみると、売買単位がどのように変更されるかの他、備考欄に「同時に株式分割を実施」もしくは「同時に株式併合を実施」と記された銘柄があることがわかります。
そこで、3つのケースに分けてこの一覧表の見方を説明していきます。
まずは、売買単位の変更のみを行う銘柄です。備考欄が空欄の銘柄が該当します。
売買単位の変更のみを行う銘柄は、以下の2パターンに分類できます。
(1)売買単位が減少する銘柄
例えば、売買単位が1,000株から100株に変更になるものが該当します。これらの銘柄は、最低投資金額が下がります。1,000株から100株に売買単位が変更となると、最低投資金額が従来の10分の1で済むことになります。特に今まで最低投資金額が高かった銘柄の場合は、新たな投資資金が流入しやすくなり、株価にプラスの影響が期待できます。
(2)売買単位が増加する銘柄
例えば、売買単位が10株から100株に変更になるものが該当します。(1)とは逆に、最低投資金額が上がることになります。10株から100株に売買単位が変更になれば、最低投資金額が従来の10倍になります。この点、新たな投資資金の流入が減り、株価にマイナスの影響が懸念されますが、もともと最低投資金額が数百円とか数千円だった銘柄がその10倍になる程度ならばさほど心配いりません。
ケース2:売買単位の変更+株式分割
表の備考欄に「同時に、株式分割(○株→○○○株)を実施」と記載がある銘柄が該当します。このケースは、さらに以下の3パターンに分類されます。
(1)売買単位の増加割合と株式分割割合が同じ
例えば、売買単位が1株から100株になると同時に1株を100株とする株式分割が実施される場合です。
売買単位が100倍になりますが、株数も100倍になる(株価が100分の1になる)ため、最低投資金額は変わりません。したがって、株価に与える影響はないと考えてOKです。
(2)売買単位の増加割合より株式分割割合の方が大きい
例えば、売買単位が1株から100株になると同時に1株を200株とする株式分割が実施される場合です。
上の例では売買単位が100倍になる一方、株数は200倍(株価が200分の1)になるため、最低投資金額が従来の2分の1に下がります。
最低投資金額が下がるため、株価にはプラスのメリットがあります。
(3)売買単位の増加割合より株式分割割合の方が小さい
例えば、売買単位が1株から100株になると同時に1株を10株とする株式分割が実施される場合です。
上の例では売買単位が100倍になる一方、株数は10倍(株価が10分の1)にしかならず、最低投資金額は従来の10倍に上がります。
最低投資金額が上がるので株価にはマイナスの影響がありますが、多くはもともと最低投資金額が非常に小さかった銘柄のため、実質的な影響はあまりないと思われます。
ケース3:売買単位の変更+株式併合
表の備考欄に「同時に、株式併合(○○株→○株)を実施」と記載がある銘柄が該当します。このケースもさらに3つのパターンに分類されます。
(1)売買単位の減少割合と株式併合割合が同じ
例えば、売買単位が1,000株から100株になると同時に10株を1株とする株式併合が実施される場合です。
売買単位が10分の1になりますが、株数も10分の1(株価が10倍)になるため、最低投資金額は変わらず、株価への影響もありません。
(2)売買単位の減少割合より株式併合割合の方が小さい
例えば、売買単位が1,000株から100株になると同時に5株を1株とする株式併合が実施される場合です。
上の例では売買単位が10分の1になる一方、株数は5分の1(株価が5倍)にしかならないため、最低投資金額が従来の2分の1に下がります。株価へのプラス効果が期待できます。
(3)売買単位の減少割合より株式併合割合の方が大きい
例えば、売買単位が1,000株から100株になると同時に20株を1株にする株式併合が実施される場合です。
上の例では売買単位が10分の1になる一方、株数は20分の1(株価が20倍)になるため、最低投資金額が従来の2倍に上がります。変更後の最低投資金額がかなり大きくなってしまう場合は株価へのマイナスの影響がありえます。
現時点で売買単位が100株もしくは1,000株になっていない銘柄も、2014年4月1日までには売買単位が変更されることになります。
引き続き、前回および今回のコラムでお伝えした点に注意して売買をするようにしてください。
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