自営業者やその配偶者、20歳以上の学生などに納付義務のある国民年金の保険料。ただ何となく支払っていませんか?

国民年金保険料を納付すべき人

 我が国の公的年金制度には、「国民年金」と「厚生年金」があります。

厚生年金:会社勤めの人が加入する制度。通常は毎月の給料から厚生年金の保険料が差し引かれる

国民年金:厚生年金の加入対象者以外は、加入し、保険料を納める必要がある。例えば自営業者やその配偶者、20歳以上の学生など

 令和2年度の国民年金の保険料は、月額1万6,540円です。支払った国民年金保険料は、年末調整や確定申告の際、所得控除の対象となり、その分だけ所得税や住民税の税額を下げる効果があります。

 実は、国民年金保険料は、お得になる制度や知らずに損をしてしまうものがあります。今回はそのうち代表的なものを3つ紹介します。

小ワザ1:前納や口座振替、クレジットカード払いを使う

 上記でご案内のとおり、令和2年度の国民年金保険料は月額1万6,540円です。ただし、これは毎月分を納付書で現金納付した場合の金額で、下記のような納付方法を用いればこれより安い金額となります(金額は令和2年度のもの)。

納付書による現金納付

6カ月前納:6カ月で810円割引
1年前納:1年間で3,520円割引
2年前納:2年間で1万4,590円割引

口座振替による納付

早割(1カ月先に納付):年間で600円割引
6カ月前納:6カ月で1,130円割引
1年前納:1年間で4,160円割引
2年前納:2年間で1万5,840円割引

 このように2年前納だと、1万5,840円割引と大きな金額となります。クレジットカードで保険料を納付することもできます。この場合、前納の割引額は現金納付のものと同じですが、クレジットカード納付により、カード会社によってはポイントやマイルが貯まります。

 前納や口座振替、クレジットカード納付には一定の手続きがありますし、適用まで時間がかかることもあります。

 また、前納は1・2年のものは4~3月まで、6カ月のものは4~9月と10~3月に期間が決められていますのでご注意ください。

小ワザ2:同一生計の家族の分は高所得者がまとめて支払う

 確定申告や年末調整の際に所得控除の対象となる国民年金保険料は、その人が「実際に支払った保険料」となっています。

 そのため、同一生計の家族の分であっても、支払った人の所得控除として扱われます。

 例えば、ご主人が自営業者、奥様がご主人の青色事業専従者(ご主人からお給料をもらっている)の場合、通常はご主人の方が奥様より所得が多いはずですが、ご主人の分はご主人の確定申告で、奥様の分は奥様の年末調整でそれぞれ所得控除を適用している方がいます。

 所得の高いご主人が、奥様の分もまとめて保険料を納付し、お二人の分をすべてご主人の所得控除として適用すれば、ご家族トータルでみた税額が減少する可能性が高くなります。ご主人の方が税率が高ければ、高い方に寄せて所得控除を適用した方が、軽減できる税額も多くなるからです。

 ご主人の所得が2,500万円(所得税率40%)、奥様の所得が500万円(所得税率20%)とすると、お二人の国民年金保険料をご主人が全額支払うことにより、それぞれで支払う場合に比べて

 16,540×12×(40%-20%)×1.021=約40,500円の所得税軽減効果が見込めます。

口座振替による支払いには要注意!

 注意したいのが、口座振替による支払いです。例えば上記の例で、ご主人の保険料はご主人の口座から、奥様の保険料は奥様の口座から引き落としとなっている場合、奥様の保険料をご主人の確定申告で所得控除することはできません。

 なぜなら、奥様ご自身の口座から引き落とされているということは、奥様が支払ったという判定がなされてしまうからです。

 夫婦お二人の分をどちらかに寄せて所得控除を取るのであれば、納付書による納付でお二人分を支払うか、もしくは口座振替であればお二人分の保険料ともどちらか1人の口座から引き落とすようにしておきましょう。

小ワザ3:「2年前納」の制度を上手に活用して節税する

 通常、国民年金保険料は、その年に支払った保険料が社会保険料控除として所得控除の対象となります。

 ただし、「2年前納」の制度を使うと、以下の2つから選択することができます。

(1)全額を支払った年の所得控除とする
(2)対応する各年の所得控除とする

 2年前納は、対象となる期間が決まっており、「4月~翌々年3月」までとなっています。ですから、仮に令和2年4月に2年前納により保険料を支払った場合は

(1)令和2年分の確定申告時に前納した保険料全額を所得控除にする
(2)令和2年は9カ月分、令和3年は12カ月分、令和4年は3カ月分の保険料をそれぞれ各年の所得控除の対象とする

 のいずれかを選ぶことができます。

 この2年前納の制度を最も有利に使うシーンとしては、たまたまある年だけ所得が大きくなりそうだ、という場合です。

 今であれば、令和3年に一時的に例年と比べて売上も所得も大きく増加しそうだ、ということが令和3年の2月(来年度の2年前納の締め切り)時点である程度判明しているようなときです。

所得の状況により2つのいずれの方法を使うかを選ぶ

 例えば例年の所得が約600万円であれば、所得税率は20%です。しかし、令和3年だけは所得が1,200万円になった場合、所得税率は33%にアップします。

 つまり、2年前納の保険料を、所得税率が33%と高い令和3年分で全額所得控除としてしまった方が有利となります。

 上の例では380,210円×(33%-20%)×1.021=50,400円ほどの節税効果が見込めます。

 もし、令和3年4月に2年前納をした後で、令和3年の所得がそれほど伸びず、逆に令和4年の所得が大きく上昇すると判明したなら、令和3年の確定申告の際に納付額全額を所得控除するのではなく、各年ごとに所得控除する方法を選択して、令和4年の控除額を確保しておけばよいのです。

 2年前納は保険料の割引額も多いですから、節税面だけでなく、手元に潤沢な資金があるならば、大いに検討すべき納付方法だと思います。

 また、小ワザ2と併用すれば、夫婦2人分の保険料につき使えることになるので、税メリットもより大きくなります。