コロナ後に優位に立つか、リスクマネジメントの手腕に定評

現地コード 銘柄名
03968

招商銀行股フン有限公司

(チャイナ・マーチャンツ・バンク)

株価 情報種類

 36.15HKD
(6/15現在)

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    BOCIは新型コロナウイルスの流行を契機とした銀行セクターの勢力図の変化を見込み、“ポストコロナ”においては招商銀行(03968)が優位に立つとみている。この先の事業環境はリテール銀行ビジネス(中小企業や個人向けなどの小口業務)に強みを持つ銀行銘柄に有利となり、利ざやもリテール部門で真っ先に下げ止まるとの見方だが、同行の貸出全体に占めるリテールの割合は20年3月末時点で53.2%(同行単体)と、同業銘柄の中でもほぼ最高水準にある。ほかに、優れたリスクマネジメントの手腕や、ウェルスマネジメント(富裕層向けの総合資産管理)業務およびフィンテックの進化なども同社の強み。目標株価を引き上げ、株価の先行きに対して強気見通しを継続している。

    同行は資産・負債構造の最適化を通じて与信ビジネスの採算性を改善させており、純金利マージン(NIM:借入金利と貸出金利の差)、リスク調整後資産利益率(RORWA)という2つの業務指標が、いずれも同業銘柄を明確に上回る水準にある。政府当局が不動産業に対して引き締め姿勢を維持する中、現時点では不動産ローンの比重の高い銀行銘柄のほうが、NIMの縮小圧力が小さい。一方、20年下期に関しては、BOCIは一段の消費回復を見込み、もともと大きな業務基盤を持つクレジットカードローン、消費者ローンにおいて、同行が競争力を発揮するとの見方。NIMは業界全体で縮小傾向にあるが、BOCIはリテール貸し付けの比重の高さを理由に、同行がいち早くNIMの安定化にこぎつけるとみている。

   同行は堅実な経営手法を通じて強固なファンダメンタルズを確立しており、資産の劣化圧力が相対的に小さい。経営陣によれば、小口融資・マイクロ融資のうち90%超が担保付きであり、今後は担保物件管理を強化する可能性もあるという。リテール業務を見ると、不動産ローンは担保付き。半面、クレジットカードローンと消費者ローンが新型コロナの流行によって打撃を受けた。BOCIは19年末を基準に、不動産ローン、クレジットカードローンで構成されるABS(資産担保証券)のデータを精査することで、同行のリテール資産の健全性を評価。1-2月に増えた延滞案件が3-4月も続いたと報告しながらも、今後は状況がやや改善に向かうとの見通しを示している。

    ウェルスマネジメント業務はこの先、手数料収入の成長エンジンとなる見込み。同行単体のウェルスマネジメント部門の役務取引等利益は、20年1-3月に前年同期比68.5%増の99億7,000万元を記録した。

 同行H株の現在株価は20年予想PBR(株価純資産倍率)で1.28倍と、業界平均に対して約130%のプレミアム水準にある。BOCIは優れたファンダメンタルズや市場のリスク選好度の改善を理由に、20年予想PBR1.62倍(1.53倍から上方修正)をあてはめ、目標株価を引き上げた。同行の株価の先行きに対し、強気見通しを継続している。