アフターコロナ、需要の発生する場所が変わる

 5月25日に「緊急事態宣言」が全面解除され、経済活動再開に向けた動きが続いています。

 コロナウイルス感染拡大が懸念されていた時期と比べると格段に「正常化」が進んでいるものの、コロナ前のようには自由な移動や活動ができない「制限経済」に直面しているように感じている方も多いでしょう。

 その様子は「7割経済」という言葉で表現されています。ソーシャルディスタンスなどさまざまな感染予防によって制限が多くなり、コロナ前水準を10割として7割程度しか経済活動を回復させることができないのでは、という見方です。

 経済活動の完全回復は、予防ワクチンが開発され、どの医療機関でも制限なく使用できるようになる時を待つことになる公算が大きいです。また、新規感染者の増加が頻繁に世間をヒヤッとさせている現状も、「7割経済」に信ぴょう性を持たせています。

 ただし「7割経済」はあくまでも概念です。急にGDP(国内総生産)規模が3割も縮小することはないでしょう。需要は消失するのではなく、発生する場所が変わり、応じてカタチも変化すると捉えるのが正解に近いのではないでしょうか? そのことを象徴するような銘柄の動きを見ておきます。

・(参考)BASE(4477・マザーズ)の日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

 個人や小規模事業者向けEC(電子商取引)プラットフォーム 「BASE(ベイス)」 が主力事業で、登録料や月額・年間料金ではなく、店舗売上連動の利用料を収益源としています。

 3月下旬以降ショップの開設が急増しており、2020年5月時点で100万ショップ超の利用があると発表しています。

 2019年10月25日、東証マザーズに新規上場した際の初値は1,210円で公開価格(1,300円)を6.9%下回り、コロナ下落時には1,000円を割る局面があったものの、現在の株価は見違えるような水準にあります。

コロナ禍の勝ち組、「通販」と「クラウドファンディング」

 コロナ禍での勝ち組である「通販」業界に、大手業者だけでなく、小規模業者や個人も参入してきています。これはアフターコロナの「新たな動き」と言えます。

 また、無数のクラウドファンディングが立ち上げられていることも、新たな動きの一つです。クラウドファンディングとは、インターネットを通して、事業や活動に共感した人や応援したいと思ってくれる人から資金を募る仕組みです。

 現在立ち上げられているクラウドファンディングは、飲食店やライブハウスなど、営業自粛を余儀なくされた業種のものが目立ちます。この場合、出資のリターンとして食事券や入場券がもらえる場合がほとんどです。これはやや形態が異なる「通販」と捉えることもできます。

 マザーズ市場に2019年12月に上場した「マクアケ(4479)」はクラウドファンディングのプラットフォーム「マクアケ」を運営している企業ですが、現在株価が急上昇しています。

 以下に通販に注力することで拡大が見込める10万円株を紹介します。

通販に注力で拡大が見込める10万円株

 株価データは2020年6月17日終値ベース。

スクロール(8005・東証1部)

 カタログ通販準大手(旧社名ムトウ)。地域生協組合員を対象とするカタログ通販を基盤としつつ、積極的なM&A(企業の合併・買収)で拡大が目立ちます。

・スクロールの日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

ANAP(3189・JASDAQ)

 10~30代女性向けカジュアル衣料・雑貨の小売企業です。基幹ブランド「ANAP」は低価格帯中心に人気。ネット通販の比率は60%弱。

・ANAPの日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

コックス(9876・JASDAQ)

 20~50代向けのイオン系カジュアル衣料専門店。 メンズの「コックス」とレディスの「エミーズ」がルーツ。通販限定ブランドを相次いで投入しています。

・コックスの日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

パレモ・ホールディングス(2778・東証2部)

 婦人衣料品と雑貨の専門店チェーン企業。イオン系やユニー系などのショッピングモールに多く出店。衣料通販は好調継続。

・パレモ・ホールディングスの日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

TOKYO BASE(3415・東証1部)

 完全国産にこだわった独自ブランド「UNITED TOKYO」を運営。売り上げ比率は実店舗65%、通販35%。

・TOKYO BASEの日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

著者によるこの記事の解説音声はこちら(soundcloudサイト/約8分半)