ふるさと納税は、1人ひとりの所得に応じた限度額の範囲内であれば、自治体への寄付が実質負担額2,000円で行えるという制度です。大部分の自治体が寄付額に応じた返礼品を用意しており、そちらが楽しみという方も多いでしょう。
ここで忘れがちなのが、このふるさと納税と、節税効果を得ながら老後へ向けた投資ができるiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)との関係です。
※1 受領日(入金日)が平成12月31日まで。例外で早めの自治体もあり
個人の所得税には恩恵がいくつも設けられている
個人ならば誰もが関係してくるのが所得税や住民税。これらの税金は、所得(利益のようなものと考えてください)に税率をかけて計算されます。
このとき、税金が減額されるような恩恵がいくつも設けられています。有名なところとしては住宅ローン控除や医療費控除などがあります。そしてiDeCo(個人型確定拠出年金)の掛け金やふるさと納税も、同様に税金を減らす効果があります。※厳密に言えば、ふるさと納税は安い負担額でそれ以上の金額の寄付をすることができる、という意味です。寄付をした金額以上に税金が安くなることはありません。
iDeCoとふるさと納税の併用をすると節税面で損?
iDeCoに加入している人がふるさと納税を行うと、iDeCoに加入していない人よりも、ふるさと納税の限度額が小さくなります。
なぜなら、iDeCoの掛け金は「所得控除」の対象となりますが、ふるさと納税は所得税では「所得控除」であるものの住民税は「税額控除」の対象となるからです。
「所得控除」と「税額控除」の違いとは?
所得控除と税額控除、どちらも税金を安くする効果がありますが、仕組みが少し異なります 所得控除は、税率をかける前の所得から差し引く金額のことを言います。一方、税額控除は、所得から税率をかけて求めた税金から差し引く金額のことを言います。
ふるさと納税は「寄付金控除」と呼ばれるものの一形態で、所得税を計算する際に、ふるさと納税を行った額から2,000円を差し引いた額が所得から控除されます。
さらに、住民税の計算上、一定額に達するまで、ふるさと納税を行った額が住民税額から控除されます。
おそらく、この説明を読んでも良く分からない方がほとんどだと思いますので、次の結論だけ覚えておいてください。
iDeCoの掛け金を所得控除すると、それだけ所得税や住民税が小さくなるので、ふるさと納税が自己負担2,000円で実施できる限度額が小さくなる、というのが結論です。
いったいどのくらい影響があるの?
では、iDeCoに加入した場合とそうでない場合で、自己負担2,000円でふるさと納税ができる限度額にどの程度影響があるのかをシミュレーションしてみたいと思います。
話を簡単にするために、会社に企業年金制度がない会社員・独身・扶養家族なし・社会保険料は年収の10%、他に所得控除や税額控除の対象となるものはないものとします。
年収500万円の方の場合
・iDeCoに加入していない場合のふるさと納税限度額:6万7,296円
・iDeCoに満額(年27万6,000円)加入する場合のふるさと納税限度額:6万378円
差額:6,918円
年収1,000万円の方の場合
・iDeCoに加入していない場合のふるさと納税限度額:18万7,254円
・iDeCoに満額(年27万6,000円)加入する場合のふるさと納税限度額:17万9,321円
差額:7,933円
結論:ふるさと納税を気にしてiDeCoを使わないのはもったいない!
このように、iDeCoに加入してその掛け金を所得控除の対象とすることで、ふるさと納税の限度額が少し減っていることが分かります。
でも、だからといってこの事実がiDeCoへの加入を見送るための理由になるかといえば、そんなことはありません。
まず、iDeCoに加入することでその掛け金を所得控除の対象とすることで、年収500万円の方であれば所得税・住民税合計して掛け金の約20%、年収1,000万円の方であれば約30%の税金節減効果があります。
上の例で年収1,000万円の方であれば、iDeCoに満額加入すれば8万円以上の節税効果があります。ふるさと納税の限度額がわずか8,000円だけ減ることを回避するためにiDeCoへの加入を見送るというのは本末転倒です。
また、iDeCoという制度は、税金の恩恵をうけつつ、自助努力で老後の生活資金を確保するためのものです。ふるさと納税の限度額が小さくなるからといって、iDeCoへの加入を見送るというのは自分自身のライフプランを構築するという面からみても疑問と言わざるを得ません。
確かにふるさと納税の限度額は少しだけ減りますが、iDeCoとふるさと納税の併用は、税金面を気にすることなく行えばよい、というのが結論です。
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