デジタル・トランスフォーメーションとは?

 新型コロナウイルスでリモートワークが注目されています。社員が会社からでも自宅からでも安心して仕事できるようなIT環境を整えることを米国では「デジタル・トランスフォーメーション」と呼んでいます。いま全ての企業はデジタル・トランスフォーメーションを一刻も早く実施するために躍起になっています。そのことはデジタル・トランスフォーメーションを実現するためのサービスを提供している企業が特需に沸いていることを意味します。そこで今日はそういう大繁盛している企業の近況を整理します。

ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ

 ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ティッカーシンボル:ZM)はクラウド・ベースのビデオ会議アプリの会社です。ズームを使えばノートパソコン、スマホなど、デバイスを選ぶことなく多人数のビデオ・チャットに参加することができます。

 同社はIPO(新規株式公開)して以来、一度もコンセンサス予想を下回る悪い決算を出したことはありません。業績予想は上方修正に次ぐ上方修正で、いまとても勢いに乗っています。

 先日発表された同社の第1四半期決算はEPSが予想10¢に対し20¢、売上高が予想2.04億ドルに対し3.28億ドル、売上高成長率は前年同期比+169.0%でした。

 地域別売上高は米州が2.46億ドル、欧州中東アフリカが5,130万ドル、アジア太平洋が3,130万ドルでした。

 残存パフォーマンス義務は10.68億ドルでした。内訳はディファード・レベニューが5.52億ドル(+270%)、未請求額が5.16億ドル(+127%)でした。前年同期の残存パフォーマンス義務は3.77億ドルでした。

 GAAPグロスマージンは68.4%、ノンGAAPグロスマージンは69.4%でした。

 GAAP営業マージンは7.1%、ノンGAAP営業マージンは16.6%でした。

 売上高に占めるR&D費用はGAAPベースが8.0%、ノンGAAPが6.4%でした。

 売上高に占めるセールス&マーケティング費用はGAAPベースで37.0%、ノンGAAPベースで31.5%でした。

 4月末のキャッシュは11億ドルでした。

 営業キャッシュフローは2.59億ドルでした。前年同期は2,220万ドルでした。フリー・キャッシュフローは2.52億ドルでした。前年同期は1,530万ドルでした。

 社員10人以上の課金顧客企業数は前年比+354%の26.5万社でした。年間売上高10万ドル以上の大口顧客数は前年比+90%の769社でした。

 ネット・ダラー・エクスパンション比率は130%でした。

 第2四半期のEPSは予想11¢に対し新ガイダンス44~46¢が、売上高予想2.24億ドルに対し新ガイダンス4.95~5億ドルが提示されました。

 2021年度のEPSは予想44¢に対し新ガイダンス$1.21~$1.29が、売上高予想9.4億ドルに対し新ガイダンス17.75~18億ドルが提示されました。

クラウドストライク

 クラウドストライク(ティッカーシンボル:CRWD)はクラウドを通じてインターネット・セキュリティーを提供する企業です。同社の場合も新規株式公開(IPO)して以来、全ての決算発表がコンセンサス予想を上回っています。

 リモートワークで自宅から仕事をする社員が増えているということは、普段、企業が要求するような高いセキュリティーを自宅のノートパソコンやスマホにも届けないといけないことを意味し、そのためには従来のファイアウォールのような防御の仕方では到底対応できないことを意味します。

 そこで企業が真っ先に導入を考えるのがクラウドストライクです。

 先日発表された同社の第1四半期決算はEPSが予想-6¢に対し2¢、売上高が予想1.65億ドルに対し1.78億ドル、売上高成長率は前年同期比+85.3%でした。

 アニュアル・リカーリング・レベニュー(ARR)は+88%の6.86億ドルでした。

 サブスクリプション・グロスマージンは77%でした。前年同期は72%でした。

 営業キャッシュフローは9,860万ドルでした。前年同期は140万ドルでした。フリー・キャッシュフローは8,700万ドルでした。前年同期は-1,610万ドルでした。

 期中830社の新規顧客を獲得しました。総顧客数は6,261社です。

 4つ以上のモジュールを購入した大口顧客数は+55%の増加を記録しました。

 第2四半期のEPSは予想-6¢に対し新ガイダンス-2¢から0¢が、売上高予想1.73億ドルに対し新ガイダンス1.86~1.9億ドルが提示されました。

 2021年度のEPSは予想-12¢に対し新ガイダンス-8¢から-5¢が、売上高予想7.31億ドルに対し新ガイダンス7.61~7.73億ドルが提示されました。

 今回の決算では大企業、中小企業どちらのビジネスも好調でした。海外も好調でした。顧客は、より沢山のモジュールを購入しています。パイプラインは充実しています。

 新型コロナウイルス後、サイバー攻撃は増加の傾向にあります。ヘルスケア企業、研究機関に対するサイバー攻撃も増加しています。

 同社はアマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)のAWSと積極的営業を展開しています。AWSと組むことで営業がやりやすくなっています。

 同社の提供する「ディスカバー・モジュール」はIT衛生を維持する機能を持っています。在宅勤務している社員のシステムをどう監視・保護するか? は世界のITセキュリティー担当者の頭痛の種になっています。その際、クラウドストライクのディスカバー・モジュールがとても役に立ちます。

ゼットスケーラー

 ゼットスケーラー(ティッカーシンボル:ZS)もクラウドストライク同様、クラウドを通じてインターネット・セキュリティーを提供している企業です。

 先日発表された同社の第3四半期(4月期)決算はEPSが予想2¢に対し7¢、売上高が予想1.06億ドルに対し1.11億ドル、売上高成長率は前年同期比+39.7%でした。

 ディファード・レベニューは+42%の3.01億ドルでした。

 営業キャッシュフローは2,082万ドルでした。前年同期は1,348万ドルでした。

 第4四半期のEPSは予想1¢に対し新ガイダンス2~3¢が、売上高予想1.14億ドルに対し新ガイダンス1.17~1.19億ドルが提示されました。

 2020年度のEPSは予想15¢に対し新ガイダンス20~21¢が、売上高予想4.15億ドルに対し新ガイダンス4.22~4.24億ドルが提示されました。

 ゼットスケーラーはエッジワイズ・ネットワークスを買収すると発表しました。エッジワイズはデータセンターでゼロトラスト・プロテクションを実現します。とりわけマシン・ツー・マシンのデータのやりとりでゼロトラスト・プロテクションを提供できる点が特筆されます。エッジワイズはAIならびに機械学習を通じて個々のマイクロサービスのコミュニケーション・パターンをよく理解し、そのパターンから「これは不正アクセスではない」ことを判断できます。

オクタ

 オクタ(ティッカーシンボル:OKTA)はアイデンティティー・クラウドというサービスを提供しています。これは平たく言えばログインしているのが本人かどうか? をチェックし、特定の社員に、特定のアプリケーションだけにアクセスする権利を賦与するアクセス管理サービスだと思ってください。不審な侵入者を撃退するためにはまずユーザーのアイデンティティーの確認が最優先……だから同社のサービスはリモートワーク環境の構築に欠かせません。

 先日発表された同社の第1四半期(4月期)決算はEPSが予想-17¢に対し-7¢、売上高が予想1.72億ドルに対し1.83億ドル、売上高成長率は前年同期比+46.0%でした。

 サブスクリプション売上高は+49%の6.19億ドルでした。

 残存パフォーマンス義務は+57%の12.4億ドルでした。

 請求額は+42%の2.1億ドルでした。

 過去12カ月のダラー・ベース・ネット・リテンション率は+200bps改善の121%でした。

 ノンGAAPグロスマージンは+180bps改善の77.5%でした。

 ノンGAAP営業マージンは+1320bps改善の-6.7%でした。

 フリー・キャッシュフロー・マージンは+580bps改善の16.3%でした。

 総顧客数は+28%の8,400社でした。

 年間請求額10万ドル以上の大口顧客数は+38%の1,580社でした。

 第2四半期のEPSは予想-9¢に対し新ガイダンス-2¢から-1¢、売上高予想1.85億ドルに対し新ガイダンス1.85~1.87億ドルが提示されました。

 2021年度のEPSは予想-32¢に対し新ガイダンス-23¢から-18¢が、売上高予想7.72億ドルに対し新ガイダンス7.7~7.8億ドルが提示されました。

マイクロソフト

 マイクロソフト(ティッカーシンボル:MSFT)はおそらく全てのIT企業の中で最もエンド・ツー・エンド、すなわちネットワークの中心、つまりデータセンターからネットワークの末端、つまり個々の社員のノートパソコンまでのあらゆる局面でリモートワーク向けのサービスを包括的に提供している企業だと言えるでしょう。

 最近発表された同社の第3四半期(3月期)決算はEPSが予想$1.25に対し$1.40、売上高が予想337億ドルに対し350.2億ドル、売上高成長率は前年同期比+14.6%でした。

 プロダクティビティ&ビジネスプロセス売上高は+15%の117億ドルでした。

 インテリジェントクラウド売上高は+27%の123億ドルでした。アジュールは+59%でした。

 モアパーソナルコンピューティング売上高は+3%の110億ドルでした。

 グロスマージンは69%でした。これは2bp改善しました。営業マージンは37%でした。これは3bp改善しました。

 コマーシャル残存パフォーマンス義務は890億ドルでした。前年同期は720億ドルでした。

 コマーシャル売上高に占めるアニュイティー比率は92%でした。前年同期は90%でした。

 コマーシャル受注は+7%でした。

 営業キャッシュフローは+29%の175億ドルでした。フリー・キャッシュフローは+25%の137億ドルでした。

 新型コロナウイルスは同社にはほとんど影響を与えていません。チームズ、アジュール、ヴァーチャル・デスクトップなどは利用が増えています。

 3月最終週ライセンシング売上高に減速が見られました。またリンクトインの広告が減速しました。

 ウインドウズOEMとサーフェスはリモートワーク、リモート・ラーニングからの需要増が見られました。

 ゲーミングは新型コロナウイルスで在宅が増えた関係で利用が増えています。

 チームズでは1日当り2億のミーティングが開かれました。チームズのDAUは7,500万人です。

 新型コロナウイルスで「コードを書けない人(no-code/low-code)」向けアプリの必要性が高まっています。パワー・プラットフォームは340万人の市民デベロッパーに利用されています。もしエクセルを使える人ならパワー・プラットフォームを使ってアプリを作ることができます。それによりヴァーチャル・エージェントや自動化されたワークフローやデータ分析ができます。

 スウェーデン健康サービス省、シアトルの非営利ヘルスケアプロバイダーなどがパワー・アプリを利用して緊急医療物資の追跡を行いました。

 Xbox Liveは9,000万人のアクティブ・ユーザーに到達し、Xbox Game Passの課金顧客は1,000万人に達しました。

 アジュールはネットワークのエッジにまで延長できる唯一のクラウド・サービスであり開発環境、インフラストラクチャ・スタックなどを通じて一貫性のあるサービスを提供しています。これは5Gの普及と合わせてウルトラ・ロー・レイテンシー(ULL)体験を提供することを可能にします。

 第4四半期のCOGSは115.5~117.5億ドルを見込んでいます。営業費用は118~119億ドルを見込んでいます。「その他金利費用」の項目は1億ドルの赤字を見込んでいます。実効税率は18%を見込んでいます。