特集◆老後破綻しないためのじぶん年金のつくり方・STEP3

「お金が増えない人」に共通する5つの行動

 資産運用をしていく中で、大きな失敗とまではいかなくとも、お金がきちんと増えている感覚がないという方は多いのではないでしょうか。実は、資産運用がうまくいかない人には共通の傾向があります。今回は、私が実際にセミナーや講演会などで個人投資家の方々と直接お話しして気付いた「お金が増えない人」の5つの共通点をご紹介します。

共通点1:公的な保障の全容を把握していない

「どうせ年金なんてあてにならない」と嘆く前に、まず振り返っていただきたいことがあります。

 そもそも皆さんは、ご自分が受け取れる公的年金の金額がおおよそいくらか、知っていますか?

 また、ご自分に万が一のことがあったとき、国から受けられる保障についてどの程度知っていますか?

 残念ながら、これらの質問にすぐに答えられる方はあまり多くないと思います。

「公的保障」、つまり、国が運営する社会保障制度は、皆さんが納める保険料と税金によって賄われています。したがって、皆さんには公的保障の内容について知る権利があり、もっと言えば、きちんと把握していないと、いざというときに利用できない可能性もあるのです。

 まずは、毎年1回、誕生月に郵送される「ねんきん定期便」の記載内容を把握することから始めましょう。

「ねんきん定期便」とは、年金記録問題の発覚を受け、社会保険庁が2009年より発行・発送を行っている通知書のことです。主な記載内容は、これまでの「年金加入期間」と、加入実績に基づいた「老齢年金の見込額」です。

 この両者が重要なのは、単に将来年金がいくらもらえるかということだけでなく、障害年金や遺族年金の支払い要件・金額にも関係するからです。

 民間保険の死亡保険や就業不能保険に加入する際は、公的な保障もあることを考慮しながら保険金額を設定するのが鉄則です。民間保険の「入り過ぎ」を防ぐためにも、公的保障について理解を深めることは重要です。
「ねんきん定期便」がすぐに見当たらないという方は、日本年金機構が運営するインターネットサービス「ねんきんネット」の利用をおすすめします。基礎年金番号やメールアドレスを入力してユーザー登録すると、スマートフォンでも年金記録や年金見込額の確認ができて便利です。

共通点2:節約に躍起になって息切れしてしまう

 資産運用の前段階で、節約を行い、無駄な支出を減らすことはとても重要です。しかし、お金を使えないことでストレスを溜めてしまえば、結果的にもっと無駄な高額消費を誘発する恐れがあります。

「ラテマネー」という単語をご存じですか。

 ラテマネーとは、スターバックスやタリーズなどのシアトル系カフェで持ち帰りのカフェラテを買うように、無意識のうちに使ってしまう少額のお金のことです。経済評論家のデイビッド・バックが提唱した概念で、日々の小さな出費が積もり積もって大きな金額になることを意味しています。

 このラテマネーを悪者扱いする専門家も多いのですが、後述する「自動引落し」や「天引き」後に残った、自由に使えるおこづかいの範囲内であれば大きな問題はないというのが私の考えです。特に女性の場合、少額の消費は、それ自体が一種のストレス解消となっていることも多いからです。

 重要なのは、節約に成功したという事実ではなく、節約できたお金をその後どのように活用するか。節約の先にある資産運用を通じて、着実にお金を増やすという最終目標を忘れないでください。

共通点3:「給与天引き」を躊躇(ちゅうちょ)する

 これは、特に今後資産形成を始めたいという若い方に多くみられる傾向です。
何があるかわからないからと、自由に使えるお金をできるだけ手元に残しておこうとする方は、貯蓄から次のステップになかなか進めず、いつまでたっても本格的な資産運用ができません。

 資産形成の大鉄則は、毎月銀行口座に振り込まれるお給料などのキャッシュフローから、自動的に一定額を引き落とす「自動引落し」や「天引き」でお金を積み立てていくことです。

 とりあえずの目安は、手取り給与の2割と考えてください。

 手取り給与が30万円の場合、毎月合計6万円を生活資金とは別に積み立ててみましょう。この積み立てに慣れてきたら、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)や NISA (ニーサ:少額投資非課税制度)など、節税効果のある制度に振り分け、投資信託を通じて運用を行ってみましょう。

 社会人歴が浅い20代の方の場合は、まず、手取り給与の2割を貯金に回しても問題ありません。1年間頑張って50万円程度貯めてから、その資金を初期投資額として資産運用を始めるといいでしょう。

共通点4:資産運用の「入口」で怠けてしまう

「近所の○○さんも買っていたから」、「人気ランキングで上位だったから」などの理由で金融商品(特に投資信託)を購入してしまう人は、その後上がっても下がっても、周りの行動が気になって主体的に行動できなくなります。

 金融商品を選ぶ際は、単純なリターンの高さだけでなく、そのリターンを得るために負うリスクの大小も考慮に入れる必要があります。なぜなら、人生の選択や、現在置かれている状況は人それぞれ異なるからです。

 資産運用において、「平均」や「人気」などの指標は意味がないということを肝に銘じておきましょう。より肝心なのは、入口の商品選びと組み合わせ方です。

 老後資金をつくるために「しっかり増やしたい」のか、それとも、退職金などのまとまったお金を「減らしたくない」のか。資産運用の入口で資金の性格を明確にし、それに合った商品を組み合わせることができれば、大きな失敗は防げます。

共通点5:特徴のある投資信託に飛びついてしまう

 銘柄についてきちんと理解をしないまま購入してしまうという「共通点:4」で述べたタイプと似ていますが、こちらはおもにマーケットを読むことが好きな、株式投資の経験がある人に多くみられる投資信託の失敗です。

「次は○○がきそう」と、特定のテーマ・業種、地域に偏った投資信託の商品ばかり集めてしまった結果、極めてコスト効率が悪く、リスクの高いポートフォリオができ上がってしまうのです。

 最近は、ロボ、AI(人工知能)、EV(電気自動車)などのテーマを掲げた投資信託が人気を集めていますが、こうした特徴のある尖った銘柄というのは、いってしまえば、派手な色柄の洋服と同じです。それ自体が悪いのではなく、目的と組み合わせ方を間違えると、資産運用自体の失敗につながります。
手持ちの服(=金融資産)や、自身の体形(=リスク許容度)に合っているか、冷静な判断が必要です。

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