日経平均は大幅高、チャートの形も強さを増す

 5月最終週となった先週末5月29日(金)の日経平均株価終値は2万1,877円でした。前週末終値(2万388円)からは1,489円の大幅高となりました。週足ベースでも2週連続の上昇です。

 足元の相場環境は、これまでのレポートでも指摘してきた通り、新型コロナウイルスの感染拡大や米中摩擦といった「不安」と、経済活動再開の動きやウイルスワクチン開発への「期待」とのシーソーゲームの構図の中で後者が優位となっていましたが、先週の株式市場は非常事態宣言の全面解除や第二次補正予算などが追い風となって株価を一段押し上げたと言えます。

 まずはこうした値動きの様子を日足チャートで確認していきます。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2020年5月29日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週の日経平均は週初の25日(月)に直近高値を超え、翌26日(火)も「窓」空けでさらに上昇、節目の2万1,000円台に乗せてきました。最近のパターンではここで上値が重たくなっていたのですが、今回は上値をトライする動きとなり、28日(木)には再び窓が出現して一段高、2万2,000円台まであとわずかに迫るという値動きでした。

 これに伴い、チャートの形も強さを増しています。ローソク足がすべて陽線で、買いが優勢となっている他、移動平均線についても、25日線が75日線を上抜けるゴールデン・クロスが出現し、中長期の動向の目安となる200日線も超えてきています。

「株式市場が描く未来」と「現実」とのギャップが広がる

■(図2)日経平均(日足)とギャン・アングル(2020年5月29日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 さらに、上の図2のように、2月6日と3月19日の下落局面を基準としたギャン・アングルをみても、8×1ラインを超えてきました。

 元々、日経平均の2万1,000円台乗せは想定していましたが、思っていた以上に相場のピッチが早く、買いの勢いが強かった印象です。

 確かに、相場環境は先週末あたりから高まってきた米中摩擦の警戒など、いまだに無視できない不安要素を抱えていますが、株式投資において利益が狙いやすいのはトレンドが発生している局面ですので、「行き過ぎた株価は後で修正されるのだから、行けるところまで行ってしまえ」というムードなのかもしれません。

 物色の対象についても、抗コロナウイルスのワクチン・治療薬関連や公衆衛生関連、リモートワークや巣ごもりといった、生活・社会のデジタルシフトへの変化と、それらを支えるITや半導体などの技術関連など、「買える」銘柄が一定数存在しています。物色がバリュー(割安)株へと広がっていく展開を見せればこの流れが「まだまだ」続くことが考えられますが、その反面、株価上昇に伴って「株式市場が描いている未来」と「実際の現実」とのあいだのギャップも確実に広がっています。

 間近に迫っている日経平均2万2,000円水準のところで「そろそろ」の達成感が出て上昇がストップし、いまのところ上値抑制にとどまっている米中摩擦が売り材料になってしまえば、下値と試す展開も考えられます。

どこまで上昇が続くのか?

 いわばチキンレースのような展開ですが、「どこまで上昇が続くのか?」を探る上で、ボリンジャーバンドを見ていきます(下の図3)。

■(図3)日経平均(日足)とボリンジャーバンド(2020年5月29日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 直近の状況を見ると、ボリンジャーバンドの幅が拡大中となっていますが、ここでチェックするのは株価の動きと反対側のバンドの傾き、ここでは▲2σ(シグマ)です。

 ボリンジャーバンドでは、トレンドが発生している反対側のバンドの向きが変わると、いったんトレンドがストップすることが多い傾向があります。実際に、2月から3月の下落局面をみても、反対側の+2σの向きが変わったところで下落が止まり、相場が反転しています。

 ですので、今週は▲2σの向きが変わるかが注目されます。

 ただし、このサインの判断は、「いったんトレンドが止まる」ということだけですので、その後トレンドが反転することもあれば、しばらく調整した後で再びトレンドが継続することもあります。後者の場合であれば、「バンドウォーク」と呼ばれる形となることが多く、トレンドが強い状況を示します。したがって、足元の上昇が落ち着いてからが勝負ということになります。

これまでの動きはチャイナ・ショック時と似ている

 気を付けておきたいのは、ここまでの株価の動きが「チャイナ・ショック」の時と似ているという点です。

■(図4)「チャイナ・ショック」時の日経平均(日足)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 チャイナ・ショックの時は2015年9月29日にいったん底を打った後、約2カ月にわたって順調に株価を戻し、ギャン・アングルの8×1ラインや200日移動平均線を超えてきましたが、ここまでの値動きは先ほどの図1や図2を見ても分かるとおり、最近の状況とよく似ています。

 チャイナ・ショック時はその後に最初の下落を超える大きな下げ局面となっているのが怖いところです。もちろん、必ずしも歴史が繰り返されるわけではありませんが、近いうちに訪れる株価上昇の一服が、「利益確定の売りをある程度こなして再び上昇していく」のか、「中長期的な下落の入り口」なのかを慎重に見極めていくことが焦点になります。