1929年大恐慌相場が底を打つまでの3年間の軌道
FRB(米連邦準備制度理事会)と米国政府によるマネーの印刷は度を越えている。FRBは数カ月でバランスシートを2倍にし、米国議会は新型コロナウイルスのロックダウンによって引き起こされた経済危機と戦うために、数兆ドルの支出法案を出している。
リーマン・ショックの時は、あの能天気なラリー・クドローでさえFRBが何をしているのか心配していたが、今は誰も気にしていない。その理由は、何のマイナスの効果もなく前回それを回避したため、彼らは誤った自信をもっているからだ。
連銀のバランスシートの拡大予測
以下は2019年4月1日のエイプリールフールの日にゼロヘッジに掲載された「The Fed Guarantees No Recession For 10 Years, Permanent Uptrend For Stocks & Housing(Fedが今後10年リセッションは起こらないと保証、永続的に上昇する株式市場と住宅市場)」という記事のS&P500とS&Pケースシラー住宅価格指数の今後10年の予測である。
S&P500予測 (ゼロヘッジ 2019年4月1日)
「これから10年、株式市場はリセッションも下落もないと連銀が保証、S&Pは5600まで上昇する」
S&Pケースシラー住宅価格指数予測(2019年4月1日 ゼロヘッジ)
住宅価格については「Fedは住宅市場が次の10年上昇するのみだと保証した、どんなあばら家でも100万ドル以上の価値が出るだろう、サンフランシスコに至っては500万ドル以上になるだろう」
現在のQEインフィニティ(無限大量的緩和)で、市場は「FED(米連邦準備制度)が今後10年リセッションは起こらないと保証、永続的に上昇する株式市場と住宅市場」という上記の記事のような気分になっているのかもしれない。債務を無限大に増やして資産と負債を両方膨らませるという手法はねずみ講と同じであるが、今の市場はバブル崩壊のツケをすべてQEインフィニティという量的緩和で先送りしているだけである。
以下のチャートは、1929年大恐慌相場が底を打つまでの3年間の軌道だが、いまのところ、株式相場はこの軌道で動いている。大恐慌相場が3年後に底を打つまでのパターンは、下げ2カ月(A)⇒上げ5カ月(B)⇒下げ2年2カ月(C)といった軌道だ。今回の相場がこのようになると言っているわけではないが、エリオット波動分析の運用者の間では注目されているチャートである。
1929年のチャートをなぞると、現在の上げ相場は、最初の急落の2カ月の後のリバウンド局面、すなわち5カ月の戻り相場の時期にある。QEインフィニティという需給相場で、現在、テクニカル的にはNYダウも日経平均の日足も「買いトレンド」相場となっている。しかし、戻り相場が力尽きると、ドーンと崩れるという下げパターンが来る可能性がある。
1929年の大恐慌相場が底を打つまでの動きを読む・下げ2カ月(A)⇒上げ5カ月(B)⇒下げ2年2カ月(C)
エリオット波動の基本と波の個性
NYダウ(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル
ドル建て日経平均(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル
リーマン・ショック後に中央銀行はより大きなバブルを膨らましたが、そのバブルははじけた。コロナウイルスがバブルを止めていたピンを見つけ出し、それを抜いたのである。今、それにもう一度空気を入れようとしている。最終的にわれわれは今やっていることだけでなく、当時やったことの結果にも苦しむことになるだろう。
円相場のシーズナリーサイクル
下のチャートは、「過去20年の円のシーズナリーチャート」で、このチャートを観察すると、円は4~8月まで円高というのがシーズナルパターンになっている。
円のシーズナリーチャート(過去20年)上昇=円高・下落=円安
シーズナルパターンから言うと、4月から8月まで円高バイアスの強い相場になるはずだが、大雑把にみると、今年はそうはなってはいない。
ドル/円(日足)
米著名投資家のラリー・ウィリアムズは、今週の週間マーケット分析(ラリーTV)で、「日本円の買いシグナルを探すべきです。とても強く季節性周期は上げています。ここまでシーズナルを追う展開です。また、アキュムレーションは順調に増加しています。価格は切り下げていますが、アキュムレーションは上げています。これはポジティブです。インサイダー指数は買いの増加を示し、コマーシャルズ(※)が先週中から買っています」と述べ、円の買い場を探しているようだ。
※コマーシャルズ(COMMERCIALS):
アメリカの先物市場を管理・監督しているCFTCは、3つに分けられたグループのポジションを1週間に1回、公表している。法律によって、ある一定以上のポジションサイズを保有した場合、そのポジションはブローカー経由でCFTCに報告されることになっている。
第1のグループはコマーシャルズで、ヘッジャー、もしくは当業者、その商品の生産者である。彼らの動向は無視できず、彼らのことをスマートマネーと呼んでいる。 第2のグループは大口投機家である。彼らの多くがファンド運用に携わっている。彼らの特徴として、天井でも巨大なロングポジションを持っている。もちろん、大底でも大量のショートポジションを保有している。 第3のグループは、第1と第2に属していない小口の投機家である。彼らはよく相場で曲がる傾向が強い。
ラリー・ウィリアムズのシカゴ市場円通貨先物予測
レイ・ダリオ「過去500年間のビッグサイクル」
世界最大のヘッジファンドを率いるレイ・ダリオは現在の経済状況について、「そうだ、これは不況ではない。これは壊れたのだ。お金と信用を作るメカニズムが壊れたのだ」と述べている。今われわれが遭遇しているのは、単なる不景気や景気後退ではないだろう。あのウォーレン・バフェットでさえ、1~3月期に含み益の47パーセントを失っているのである。
株式市場は経済のV字型回復を予想しているが…
レイ・ダリオが現在執筆中の著書『変わりゆく世界秩序』の一部、「過去500年間のビッグサイクル」でダリオが明かしている覇権サイクルをみてみよう。
これをみると、日本の国運は衰退期に入っているようだ。この国家の凋落から身を守るための保険が、資産運用である。歴史は繰り返す。MMT理論(現代貨幣理論)が跋扈しているが、筆者は債務のサイクルは死んでいないと思っている。
第1章(「小さな一言で言えば大きな絵」)では、帝国とその準備通貨の典型的な上昇と衰退、そして彼らが得た様々な種類の権力(「お金、信用、負債、経済活動の大きなサイクル」)とその付録(「お金の価値の変化」)では、莫大な現金と信用、および債務サイクルについてレビューした。本章では、オランダ、イギリス、アメリカの帝国とその準備通貨の上昇と下落を見直し、中国帝国の台頭に触れる。
帝国と通貨の進化は、記録に残る歴史より前に始まった1つの連続する物語だが、この章では1600年頃の話を取り上げる。私の目的は、単にわれわれの歴史の視点をある場所に置き、私たちを最新の状態にすることだ。簡単にビッグサイクルがどのようなものかを見直すことから始め、オランダとイギリス帝国とその準備通貨の下落をより綿密に調べる前に、これらのビッグサイクルが再生されることを示すために過去500年間をスキャンする。次に、大英帝国とポンドの衰退が米帝国と米ドルの台頭にどのように進化したかを示し、中国帝国と中国人民元の出現について考えてみる。
それは我々を現在に導き、次に何が起こるかを考えるのに役立つ。
ひとつの帝国の寿命の大きなサイクル
一般的に人間には80年(多少の多い少ないはあるとして)続くライフサイクルがあり、まったく同じものはないが、大体は似通っているように、帝国にも独自のパターンを持つライフサイクルがある。例えば、私たちのほとんどは、人生の第一段階の間、両親の保護の下にあり、私たちが約18-24になるまで学校で学び、その時点から第2段階に入る。この段階では、私たちは働き、親になり、成功しようとしている他の人々の世話をする。約55~65になるまでこれを行い、その時点で義務がなくなったり、最終的に死ぬとき、第3段階に入る。明らかに人生の節目があるので自分がどのフェーズにいるのか容易にわかる。そして人生のどのフェーズにいるかを知り、その時々に応じて自分自身、そして他人に対して適切にふるまうことは可能だ。同じことが国にも当てはまる。主なフェーズをこのグラフに示す。それは私がこの前の章で共有した超単純化された典型的なビッグサイクルである。
簡単に言えば、新しいルール設定が作られ、それが新しい世界秩序を確立した後、典型的には平和で繁栄した時代がある。人々がこれに慣れるにつれて、彼らはますます繁栄に賭け、お金を借りて、最終的にバブルにつながる。繁栄が増すにつれて、富の格差は拡大する。やがて債務バブルが崩壊し、お金や信用の印刷と内部紛争の増加につながり、平和的または暴力的な富の再分配革命につながる。典型的には、サイクルの後半に、最後の経済的、地政学的戦争に勝った帝国は、繁栄した時期に繁栄したライバル勢力に比べて力は弱く、悪い経済状況と権力間の意見の相違を伴い、典型的には何らかの戦争がある。これらの負債の中でも、革命や戦争の形を取る経済、国内、世界秩序の構築は、新しい勝者と敗者をもたらす。その後、勝者が集まり、新しい国内および世界秩序を形成する。
それは時間の経過とともに何度も繰り返された。チャートの線は、過去500年間で最も強力な11の帝国の相対的な力を意味している。下のチャートでは、米国と中国が現在どこのサイクルにあるのかを確認することができる。ご覧のとおり、米国は今や最強帝国ではなく、相対的な衰退にあり、中国の力は急速に上昇しており、他の勢力は足元にも及ばない。
簡単にするために、次のチャートは、最も強力な準備通貨帝国(第1章で説明した8つの異なる力の平均に基づいており、この章でより慎重に探求する)を除いて、同じ線を示している。
このチャートは、論点をより単純化したものだ。示すように、米国と中国は唯一の2大国であり、それぞれがビッグサイクルのどこにあるかを見ることができ、それぞれが比較可能な水準に近づいていることがわかる。はっきり言って、私は議論を始めてから、それをサポートする統計を探しに行った。単にこれらの異なる強さの尺度を反映した統計を収集し、これらのインデックスに入れて、この結果につながった。私はあなたが同じような絵を見たいと思う統計を自分で選んでやったのではないかと思うし、私がここであなたに見せているものは、そのようなものに注意を払っているなら、あなたに真実であると思う。
これらの理由から、私がやっていることは、私たちがどこに視野を置くのかを助けることだと思う。繰り返すが、私は将来について何も言っていない。この本の最後の章で指摘する。私がしたいのは、あなたを最新の状態にし、その過程で、これらのサイクルが過去にどのように機能したかを明確にすることだけである。
損切りをしない投資家が陥る罠・2番底を回避できる確率は3割程度・バフェットの株売却の理由
5月27日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、土信田雅之さん(楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト)をお招きして、「損切りをしない投資家が陥る罠」「2番底を回避できる確率は3割程度」「バフェットの株売却の理由」というテーマで話をしてみた。
ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロード出来るので、投資の参考にしていただきたい。
5月27日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー(ラジオNIKKEI)
楽天FX主催のFXセミナーを2020年5月28日(木)18:00~19:00
【ネット開催】円高圧力と政治的円安・1930年代の焼き直し相場の結末は!?
鋭い相場分析と快活な語り口でFXトレーダーの方に絶大な人気を誇る、現役ファンドマネージャー石原順氏が、今後の相場展開について講演いたします。
テーマ:円高圧力と政治的円安・1930年代の焼き直し相場の結末は!?
お申込みは不要です。時間になりましたらこちらからご参加ください。
開催概要
開催日/開催時間:2020年5月28日(木)18:00~19:00
参加費:無料
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