5月7日、トルコの銀行監督当局は、トルコ金融市場で為替や金利など広範な資産を対象に取引規制を大幅に強化しました。また操作的な取引をしたと疑われる外資系銀行3行の取引を一時的に禁止。これを受けてトルコリラは対円で14.58円まで下落して過去最安値を更新しました。

 トルコリラの急落は今回だけではなく、この数年でたびたび発生しています。2018年8月にトルコリラ/円が5.7%もトルコリラ安方向に大きく窓開けしてオープンした、いわゆる「トルコショック」は記憶に新しいところです。

 窓開けとは、前日の終値に比べて当日の始値が大きくかい離することで、チャートを見ると窓のように穴がぼっかり開いているため、ギャップオープンとも呼ばれます。市場がオープンした時にはすでに急落しているので、リスクを避けることはほぼ不可能です。トルコリラの問題は、他の通貨ペアに比べてもその窓開けの幅が大きい傾向があることです。証拠金をある程度積んでいても強制ロスカットを免れることのできないリスクが高いといえます。

※2010年5月以降のMSFXのデータ 当社調べ

 トルコ中銀は、度重なるトルコリラ防衛にドルを使い果たして、もはやトルコリラを買い支える力が残っていないといわれています。それも投機筋に狙われやすい理由ですが、今回は日銀とBOE(イングランド銀行)が通貨スワップ協定を通じてトルコ中銀にドルを供給するというニュースが安心材料となって、史上最安値をつけたトルコリラはその後反発しています。

 しかし、スワップ協定は時間稼ぎに過ぎず、根本的な財政問題の解決にはなりません。つまり、今後も同様のリスクが発生する確率が高いのです。経済問題だけではなく、米国との外交問題も懸念材料。2018年のトルコショックは、米国との関係悪化が背景にありました。

 トルコリラはその「高金利」が魅力といわれています。しかし、トルコ中銀は直近1年間で9回も利下げを行い、政策金利は24%から8.75%まで低下。ドルや円とは違って、トルコリラのような信用の低い通貨で利下げなどの緩和政策を積極的に行うとマネーの流出を招き、パニックが増幅することになります。それを抑えるために金融取引を規制するという最初の部分に戻るわけですが、このような悪循環が続いているのがトルコリラの現状です。

 下がっているのは金利だけではなく、トルコリラそのものも減価が続いています。トルコリラ/円の対円レートは、この10年間で58円から15円まで、実に74%も価値が下がっています。金利によるスワップ収入以上にキャピタルロス(トルコリラ安によって生じる為替差損)が大きくなるのです。

※2010年5月以降のMSFXのデータ 当社調べ

 このように考えると、トルコリラが長期の資産形成に適した投資対象かといえば、答えは「ノー」です。トルコリラ取引を否定するわけではありませんが、そのリスクの大きさを十分に認識していただきたいと思います。