私がお客様に資産運用のアドバイスをする際に、一番重視している点は、お客様のご意向の根底にある「増やしたいけど減らしたくない」を実現していくことです。これを実現するためには、買いポジションだけでは難しく、局面によっては売りポジションを持つこともご提案しています。

 ただ、一方で、売りポジションを持った時の心の在り方が、とても難しいとも感じています。なぜかというと、「人としての格」に関わってくるからです。どのようなことなのか、お伝えしていきましょう。

世の中が悪くなると自分の利益になる!?    

 売りポジション=「下がったら自分の利益になる」というポジションです。このため、下手をすると、世の中に悪いことが起こることを望むようになってしまうのです。

「コロナウイルスが広がって、世の中が悪くなればよい」「自粛期間が長くなって、企業業績が悪くなればよい」「米国と中国の貿易問題がこじれればよい」という発想です。

 悪くなることを望んでいると、投資だけではなく、様々な言動にもその思いが出てきます。無意識のうちに、言うこと、やることが、世の中を悪くする方向になってきます。

 こういう発想になってしまうと、おそらく、投資も人生もうまくいかないだろうと思います。自分がもうかることが優先で、世の中に悪いことが起こってもよいと思っているとしたら、誰も応援してくれません。

 少し極端な例を挙げてみましょう。もし、あなたが大いなる権力と多額の資金を持っていて、世の中を悪くし、相場を下落させることができる立場にあるとしたら、どうでしょう。

 売りポジションを持ち、相場が下落したら大もうけができる状態にあり、「自分さえ良ければ」という悪魔のささやきに乗ってしまったら、世の中に悪いことを起こしてしまうかもしれません。

 仮に、それでもうけたとして、果たして、人から賞賛されるでしょうか? おそらく後世にわたり、その逆の評価を受けるでしょう。

 極端な例を申し上げましたが、そこまでの権力、資金力がないとしても、世の中に悪いことが起こることを望んでいるとしたら、規模は小さいながらも同じことをしているかもしれません。「人として正しくあること」に反することをしている可能性があるのです。

 ここで、誤解を招かないためにお伝えすると、売りポジションを持つこと=悪い、というわけではありません。相場の悪化に備えて、下がったら利益が出るポジションを持っておくことは健全なことです。

世の中の役に立っているからこそ報酬がある

 では、私自身が売りポジションを持った時に、どのような捉え方をしているのかをお伝えします。私は、「世の中の役に立っているからこそ報酬がある」という考え方をするようにしています。

 私自身、客観的な分析から、業績から見て「割高」と判断した時に売りポジションを、「割安」の時には買いポジションを段階的に持つやり方をご提案していますが、根本にあるのは、「上がりすぎを売り、下がりすぎを買うことで、マーケットの安定に貢献していく」という考えです。

 上昇局面を買い上がり、下落局面を売り下がる方法では、マーケットの振幅を大きく、世の中を不安定にしてしまいます。上がりすぎを売り、下がりすぎを買うことで、マーケットの振幅を抑えることができます。

 また、「自我が強いとうまくいかない」という考えを根底に持っています。「世の中へ貢献する、だからこそ、きちんと報酬がある」と考えています。

 資産運用する上で、特に、売りポジションの時には「人としての格」が問われると私は考えています。人生においてもうまくいく人は、人格が伴っている人です。自らの投資が世のため、人のためにどのように役に立っているか、一度、この機会に考えてみてはいかがでしょうか?

 売りポジションを持った時、あなたはどちらになっていますか?