世界景気が急激に悪化する中、新・成長テーマが次々に登場

 人類の歴史をひも解くと、感染症のパンデミック(大流行)が、さまざまな社会構造の変革を生んできたことがわかります。今、世界を苦しめている新型コロナも、さまざまな構造変革を生みつつあります。

 その1つが、リモ-トワーク、リモート会議です。日本の企業の働き方、仕事の進め方を大きく変えることになりそうです。従業員にとって「働き方改革」、企業にとって「コストカット」につながり、どちらにもメリットがあることから、コロナが去っても一段と拡大するでしょう。
 職場に来なくても、在宅リモートワークで業務を行える職種がけっこう多いことが分かりました。賃料の高い都心のビルに何千人もの社員が集まり仕事をするスタイルは、今後減っていくと思われます。従業員には通勤負担が、会社にはオフィスコストの負担が減免されるメリットがあります。

 リモート会議も同じです。今まで、新幹線や飛行機で出張し、取引先におもむいて面談していたのが、今後は、リモートで会議や面談をするのが当たり前になるかもしれません。そうすることで、社員は出張の負担を、会社は出張旅費の負担を免れます。また、会議室スペースを大量に確保する必要がなくなれば、会社にとってオフィスコストの削減にもつながります。コロナが去っても、リモート会議を推進する流れは変わらないでしょう。

 ワクチン関連や、ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)など、感染症対策の市場も急拡大するでしょう。人類は、感染症のリスクにあまりに無防備だったことが今回、分かりました。今後、ワクチンの開発・備蓄、感染症対策は、今後、重要な国家戦略として、世界各国が推進していくことになるでしょう。関連市場の成長が見込まれます。

新・成長株候補の選別始まる

 新・成長テーマに乗る成長株を、株式市場で探す動きが活発化しています。どの銘柄が本当の成長株で、どの銘柄が見かけ倒しか、現時点で明確に峻別するのは困難です。私がファンドマネージャーの時は、新しい成長テーマの候補銘柄がたくさん出てきた時は、とりあえず次々と買ってみて、間違っていたら損切り、正しかったものは買い乗せして流れに乗っていくやり方をしていました。
 こうした成長株を当てるのが、株式投資の醍醐味ですが、値動きの激しいテーマ株は、ひとたび成長ストーリーが崩れた時には、大崩れすることもあります。ハイリスク・ハイリターンの投資と言えます。

 個人投資家が、急騰する可能性も急落する可能性もあるハイリスク・ハイリターンの銘柄に投資する場合は、想定外の急落に備えて、「逆指値・成行売り」注文を入れておくことも考えるべきだと思います。

 今日は、想定外の大きな下落が起こった時の損失を一定範囲に抑えるのに役立つ、「逆指値(ぎゃくさしね)売り注文」の使い方を、解説します。

逆指値の成行売り注文を、しっかり使いこなす

 逆指値注文には、売り注文も、買い注文もあります。意味を説明すると、以下の通りです。

◆「逆指値売り注文」:指定した価格まで、株価が下がった時、出される売り注文
◆「逆指値買い注文」:指定した価格まで、株価が上がった時、出される買い注文

 逆指値の成行売り注文だけ覚えて、使っていただければOKです。逆指値買い注文は、信用取引で信用売りしたときなどに使うくらいで、通常の取引で使うことはほとんどありません。

 それでは、具体例で説明します。以下のように、指値売り注文と、逆指値の成行売り注文はセットで入れることができます。

株価1,000円でA社株を100株買った後、1,050円で100株の指値売りと、逆指値条件を市場価格が950円以下ならと指定して、100株の逆指値成行売りをセットで入れる

 A社株が、1,050円まで上昇し、あなたが入れた指値売り注文にヒットすれば、1,050円で利益確定売りが成立します。一方、A社株が下落し、950円をつけた時は、損失確定の成行売り注文が出されます。その時点で、950円に指値の買い注文が残っていれば、950円での損切りが成立します。950円の買いがなくなっている場合は、もっと下の値段で売ることになります。

 逆指値の成行売りをしておけば、きっちり損切りできます。株価をずっと見ているといろいろ迷って損切りできなくなる人も、損切りできるのがメリットです。

 勢いよく上昇している銘柄に短期勝負で投資する場合には、逆指値の売りを入れておくべきです。
 たとえば、以下のチャートのような銘柄です。

急騰するテーマ株(イメージ図)

出所:筆者作成

 私は、こんなに短期的に急騰した株は、買いたくありません。それでも、もし短期勝負で買うならば、失敗して下がったら早めに損切りを徹底します。ファンドマネージャーならば、日中の動きをしっかり見ていることもできますが、それができない個人投資家の方は、失敗したときに、損切りする水準を決めておいて、そこに、逆指値の成行売り注文を入れておくべきと思います。

 勢いよく上昇している株は、そのまま上がり続ける可能性もありますが、ピークアウトして下げ始めると、急落することもあるからです。こういう銘柄は失敗したときは、放っておかないで、早めに損切りすることが必要です。

運用の達人は、損切りの達人

 運用の達人になるには、損切りの達人になる必要があります。長期的にすぐれた運用パフォーマンスを出すには、大きく上がる銘柄を見つけることも大切ですが、それ以上に、暴落する銘柄をつかまないことが大切です。

 ただし、長い年月、いろいろな銘柄を売買していれば、暴落する銘柄を買ってしまうこともあります。そんなとき、すばやく損切りして傷口を深めないことが、運用の達人になるための必須条件です。

 運用資産を何倍にも拡大させたファンドマネージャーには、「どうやって株価10倍になる銘柄を見つけたのか…」のような成功例を語る人が多いが、その影では、「いいと思って買った銘柄がダメ銘柄だったが、なんとか暴落する前に売り抜けた」話が、たくさんあるはずです。

 私は、ファンドマネージャー時代には、理由はわからなくても、だらだらと下げ続ける小型株は、サッサと売ることを徹底していました。

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