外出禁止令が解除された米国

 米ニューヨークのとりわけ新型コロナウイルス陽性者数が多い地区など一部の地域を除いて、大部分の州で外出禁止令が解除されました。外出禁止令は経済に与える影響が大きかっただけに投資家はホッと胸をなでおろしています。

外出禁止令が実体経済に与えた影響

 外出禁止令が実体経済に与えた影響をサッと振り返ってみたいと思います。

 まず失業率は14.7%に跳ね上がっています。

米国失業率の推移

単位:%
出所:セントルイス連銀

 FRB(米連邦準備制度理事会)の調査では年収400万円以下の労働者の、実に40%が失業しているのだそうです。つまり今回の新型コロナウイルス禍は、低所得者層にとりわけ過酷だったのです。

 これはどうしてか? というと外出禁止令で主に打撃を受けたのはレストラン、小売店、ネイルサロン、美容院などのサービス業だからです。それらの業種でいかに早く雇用が戻って来るか? に注目したいと思います。

 企業も苦しんでいます。今年通年のS&P500種株価指数のEPS (1株当たり利益)コンセンサス予想はスルスルと下がりました。

S&P500コンセンサスEPS予想推移(2020年通年予想)

単位:ドル
出所:ファクトセット

FRBの断固とした措置で最悪の状態は回避している

 2月後半に米国株式市場が急落したのを見て、投資家の解約に備える現金化(=いわゆる「ドル不足」現象)の必要から、普段ならぜんぜん流動性に問題がない米国債にすら売り手が殺到、トレードが円滑に行えない場面が出ました。

 これに驚いたFRBは政策金利を0~0.25%へ下げるのみならず、無制限の量的緩和政策を打ち出しました。さらに資産担保証券、社債、地方債、ローン、市町村の振り出す手形まで片っ端から買い取る姿勢を示しました。

 そのような断固としたFRBの姿勢を見て、マーケットは落ち着きを取り戻しました。

 下のグラフは米国債のビッドとオファーがどれだけかい離しているかを示したチャートです。図中の「On-the-run」はいま最も活発に取引されている指標銘柄、「Off-the-run」はそれ以外を指します。

財務省証券Bid-Askスプレッド

単位:100ドル当たり¢
出所:FRB

 このチャートが上に行くほど円滑なトレードができなくなっていることを示しています。

 これを見ると最も売買が集中している指標銘柄(青色)以外の国債(橙色)は、一時ビッドとオファーのかい離が開いてしまい、とてもトレードしにくくなっていたことが読み取れます。でも一連の措置の発表で市場は落ち着きを取り戻したのです。

いきなり「ガツン!」と鈍器の一撃

 今回のリセッションは、いつもの経験則が通用しない景気後退だと言われます。一例として普通、雇用は景気暗転の最後でおかしくなることが知られていますが、今回は上に見たように外出禁止令で、いきなり「ガツン!」と鈍器の一撃を食らいました。

 したがって、回復局面でも通常とは違う景気の戻り方を予想すべきかもしれません。具体的には、雇用は鋭角的に戻るかもしれないのです。少なくとも株式市場の参加者の間ではそういう意見も多く聞かれます。

 ですから、今後の新規失業保険申請件数や失業率は、とりわけ注意深く観察する必要があるように思います。

 もっと踏み込んだ言い方をすれば「鋭角的な戻りが期待できるけど、100%もとの状態には戻らない。その戻りがどの水準で息切れするかが問題」というわけです。