斬新なビジネスモデルや「あっ」と驚く新製品、新サービスで急成長していく企業の株を買って大きくもうけたい! というのが成長株(グロース)投資の醍醐味。株価倍増も夢じゃない有望成長株にどうすれば巡り合えるのか? その極意を、トウシル執筆陣で経済アナリストの森永康平氏が解説する。

有望な成長株を見つける方法は?

 上場してまだ日が浅く、知名度も今一つで玉石混淆(ぎょくせきこんこう)といえる新興企業の中から、グーンと伸びる成長株を見つけ出すには、何に注目すればいいのだろう。

「成長株という以上、売り上げや利益が毎年大きく伸びていることが絶対条件です。企業が四半期ごとに発表する『決算短信』などをこまめに読んで、倍々ゲームとまでは言いませんが、少なくとも営業利益がここ3~4年、毎年10~20%以上、安定的に伸びているかどうかを確かめましょう。当然、売上高が利益以上に伸びていることも重要です」と言う森永氏。

 成長株の場合、「株価は割高だけど、多くの投資家が、この会社はまだまだ成長が期待できると考えているから買える」という期待感で株が買われるため、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)といった株価指標は銘柄検索する際、気にすることはないと言う。

「自社の持つ純資産を活用して、どれだけの利益を稼ぎ出しているのかを示したROE(自己資本利益率)が高くて、効率よく稼いでいるか、そして、借金が多いとその返済が足かせになって、事業拡大に集中できないので、自己資本比率が高く借金に頼らないで成長し続けているか、といった基準で会社を探しましょう」(森永氏)

 株価に発行済株式数をかけた時価総額も大切という。

「会社の規模を示す時価総額が小さいほうが、少ない資金流入で株価も上がりやすく、ビジネスを進める上でも社員がまだ数十人といった小さな会社のほうが意思決定も早い。果敢にリスクをとって成長のためのチャレンジができます」(森永氏)

成長株で一番大切なのは「成長ストーリー」!

 増収増益率、高ROE、自己資本比率の高さ、時価総額の小ささなどが選別の基準になる成長株投資。

「なんといっても一番大切なのはその会社の成長ストーリーです」(森永氏)

 結局、斬新でユニークで世の中を変えるような製品やサービスが支持を集め、どんどんビジネスが拡大していかない限り、その会社の株価上昇も望めないからだ。

「今ならビッグデータ、クラウドコンピューティング、5G(第5世代移動通信システム)、IoT(モノのインターネット)などが急成長を遂げそうなテーマや市場と言えます。そうした成長分野で、他社の追随を許さない製品競争力や商品開発力を持っているか。また、その優位性は一過性の流行ではなく数年程度持続するものか、といった自分なりのロジックでその会社の『成長ストーリー』を見立てること。それが成長株投資では一番大切なことです」(森永氏)

 森永氏が勧めるのは、企業が決算期に発表する「決算説明会資料」をよく読むこと。業績の数字だけが並んだ「決算短信」と違い、決算説明会資料には、その会社のビジョンや目指しているもの、各事業分野の収益状況、競合他社に比べてどこが優れているかといったことが、グラフも使って、丁寧に説明されている。

「決算説明会資料は会社自身が描いた『成長ストーリー』です。決算説明会資料をよく読んだ上で、それを鵜呑(うの)みにせず、『じゃあ、この会社とライバル会社の業績の伸びや利益率にはどれぐらいの差があるんだろう』と決算短信の数字を調べて有望株を探す。成長株投資にはそんな地道な努力が必要なんです」

 森永氏は仕事柄、成長株投資で大成功している個人投資家たちに会う機会も多い。そうした成功者にはとても研究熱心な努力家が多いと言う。

成長株投資のリスクとは?目標は4年で株価2倍!

 夢と希望が膨らむ成長株投資だが、リスクもある。

「『この会社は急成長する』という投資家の期待は、冷めるのも早い。少しでも投資家が思い描く成長ストーリーに狂いが生じると、残酷なまでに株価が急落するのが成長株投資の怖さ。株価が急落したときの損切りルールや、どこまで上昇したら利益確定するかの目安をきちんと決めておくことが非常に大切です」(森永氏)

 だからこそ、自分なりの成長ストーリーを作り、そこに少しでも陰りが生じたときは「すぐに逃げる」ことも大切なのだ。

「成長株に投資したら株価が10倍になったというサクセスストーリーをよく耳にしますが、時に株価の急落もある成長株をテンバガー(株価10倍株)になるまで保有できる投資家は、実際少ないと思います。仮に株価が10倍になるのに10年かかったとすると、10年間はその投資資金で他の銘柄を買えないので、資金効率も悪くなります。そう考えると4年ぐらいの投資スパンで株価2倍株を狙うほうが投資効率はいいと思いますね」(森永氏)

 森永氏が「4年」と語る根拠は、もし仮に営業利益が毎年20%増えていくと2倍になるのは4年後。利益が2倍になれば、株価も2倍程度上昇していてもおかしくないからだ。

「成長シナリオが崩れ、叩き売られてしまったときの投資判断は難しい。決算書を丹念に読む研究熱心さや業績の変化に対する機敏な対応が求められるため、初心者には成長株投資は難易度が少し高いでしょう。まずは自分が仕事の関係上よく知っている業界や、大好きな趣味の世界で『この会社はすごい!』という企業を見つたら、そのまま買うのではなく、いったん立ち止まって決算書で業績などをしっかり調べた上で投資することをおすすめします」(森永氏)

「宝くじ」と表現されることもある成長株投資。実は勉強熱心で研究や分析を怠らないことが成功の条件だ。決算書や決算説明会資料を読むのが「三度の飯より好き」な努力家になることが、成功への近道なのかもしれない。

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