インデックス投資とアクティブ投資、あなたの好みはどちら

 このような時期に「インデックス投資vsアクティブ投資」という議論を提起するなんて不謹慎だ、と思う人があるかもしれません。しかしあえて、社会が大きく変化し、相場も激しく動く今だからこそ、「なんとなく」始めた個人投資家に考えてみてほしいことがあります。それは次のことを改めて意識してみることです。

 あなたの投資をステップアップしていくことにつながりますし、これから5年、あるいは10年先を考え、改めて自分の投資スタンスを考えることにもなります。

日本人3,000万人が投資をする時代に欠かせないインデックス投資

 市場の平均利回りを手軽に手に入れる投資手法がインデックス投資(パッシブ投資)です。仮にTOPIX(東証株価指数)に連動するインデックスファンドを購入すれば、銘柄選択や売買タイミングなどを考慮せずともTOPIXと同等の運用成績を簡単に手に入れることができます。

 インデックス型の投資信託やETF(上場投資信託)はそれぞれの運用の指標となるベンチマーク(これをインデックスとする)を持ちます。

 例えば「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」に投資をすれば、FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス(円換算ベース)、つまり日本を含む全世界の株式を投資対象とするインデックスで同様の運用をすることとなり、個人が手軽に国際分散投資で運用を行うことになります。

 個人の資産運用において「銘柄選択」と選んだ銘柄の適切な「売買タイミング」を検討するのは大きなハードルです。仕事やプライベートを犠牲にしなければ行えないなら、銘柄選択や売買タイミングの検討そのものを省力化したいものです。しかしETFや投資信託によりそうした負担を軽減することができます。

 そしてインデックス運用は少額から手軽に分散投資が始められるという点も魅力です。たとえば東証1部上場企業を全銘柄買うことは個人にとって不可能ですが、インデックスファンドを数千円購入するだけで、インデックスと同等の投資効果が生じます。先のファンドの例なら、AppleやMicrosoft、GoogleやFacebookに2%くらいずつあなたのお金を投資することができるのです。

 運用手法としてはシンプルなので、投資コストも下がるという魅力もあります。特につみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の普及に伴い運用コストの引き下げ競争が進んだことは個人にとっては朗報です。2000年の頃と比べれば、運用コストは80%くらい下げられているほどです。

 運用の評価もシンプルです。何せインデックスと同等の成績を収めるかどうかを見るだけで済みますし、運用スタイルそのものがシンプルなので、基本的にはインデックスから大外れすることはありません。

 日本人の多くが投資を行う時代がやってくるとしたら、そのときにまず必要になるのはインデックス投資です。確定拠出年金ではすでに900万以上の口座がありますが(企業型とiDeCo[イデコ:個人型確定拠出年金]の合計)、その運用の中核はインデックス投資となっています。

 これから3,000万人以上が投資をする時代がやってきます。そのとき、インデックス運用がその中核となることは間違いないでしょう。

インデックス投資と異なるアプローチで資産運用に挑むアクティブ投資

 インデックスについて誤解しがちなのは、これは「ベスト」の運用選択肢ではないということです。仮にベストがあるとすれば、それは値上がり上昇余地のある銘柄のみを的確なタイミングで的確に選定し、値上がり余地のなくなった銘柄を的確なタイミングで的確に売却したポートフォリオであるからです。

 しかし、そのような運用は現実的には困難であり、プレーン味のシリアルを選ぶようなところがインデックスにあります。ベターな選択肢であることは間違いありません。

 インデックス運用は、その投資対象に新たに上場した「新興企業」をキャッチアップすることができます。インデックスにその銘柄が追加されるからです。これはこれでとてもいいことです。

 しかし、時代の役割を終えた「老害企業」を除外することはあまり得意ではありません。上場廃止にならない限りインデックスには残り続けるからです。

「修正インデックス」というとおかしな表現ですが、インデックスにちょっと加工をすることで、インデックスをアウトパフォーム(相対的に高い利回りを確保)するチャンスが出てきます。いくつかの人気アクティブファンドは、それぞれのアイデアに基づき、運用に取り組みます。アクティブ運用のアプローチです。

 アクティブファンドは、どのようなアプローチによりインデックスを上回ろうとしているのかに着目する必要があります。少なくとも、ファンドマネージャーの格好いい写真を判断材料としてはいけません。運用の「哲学」を確認して、選択することです。

 とにかくより稼ぐことを目的とするもの、若い企業の成長をサポートすることで利回り獲得を目指すもの、ESG(社会的責任投資)を志向するものなど、テーマはそれぞれですから、その考え方を納得でき、託せるファンドを見極める能力は必要になります。

 一方で、インデックスに勝ち続けるアクティブファンドがあるのか、という難しい問題もあり、あなたの期待に添わないファンドについては手を引く判断をしなければいけない、という難しさも加わります。

 また「普通の人間である私たちが、勝ち組となるアクティブファンドを見極めることができるのか」というのは永遠の悩みです。

 当事者は自身のファンドを否定しないどころか、自信に満ちた資料の表現でPRするのは当然のことです(自分で信じない投資方針に誰が託すだろうか!)。それだけに彼らのいうこと「以外」のところであなたは選別眼を養う必要があるわけです。

 また、アクティブ運用の性格上、見立てと異なるマーケットになったときにはインデックスを大きく下回る(インデックスがマイナスだったらさらに下)という可能性は常にあります。そのとき「投資方針を中長期的に指示して持ち続ける」のか「運用方針は時局に適合しなかったとみて手放す」のかはあなた次第です。

 アクティブファンドについてはそうした目利きができない人は、手を出さないというのも投資家としての責任です。

二者は敵対するものではない。個人の投資選択肢の多様性が重要

 インデックス投資とアクティブ投資、あなたはどちらが好みでしょうか。これらはどちらが正しい、と決めつけるものではなく、最終的にはあなた自身の投資スタンスによって決断すべきです。

 もし、判断がつかないという人はまずはインデックス投資で「投資を始める」ことが大切です。また、投資に「たくさんの労力をかけたくない」というのなら、インデックスベースにしていけばいいでしょう。投資の負担は大きく軽減されます。

 アクティブ投資を私はやりたい、という人はアクティブ運用を行えばいいのです。ただし、自分が投資を行う投資信託の運用方針を理解し、納得し、賛同できることが大事です。過去のパフォーマンスがいいから未来もいいだろう、というくらいの考えでアクティブ運用を選ぶことはおすすめできません。

 また、アクティブ投資の運用状況について適宜評価をすることも必要です。インデックス投資でも必要ですが、それ以上に「選択したファンドの巧拙(こうせつ)」を見る必要が加わるからです。

 間違いと思うのは「初心者はインデックス、上級者はアクティブ」と大別するような短絡的アプローチです。上級者になったとき、ずっとインデックス投資を続けてもいいですし、少額で初心者がアクティブ運用をすることもあっていいでしょう。

 インデックスとアクティブは対立軸のように語られがちです。しかし、相手をおとしめることで自らの優位性を高めるような論争は有益ではありません。むしろ自らの不得意な部分を互いが認め合うことで、おのずとすみ分けができるのではないでしょうか。

 また、双方を組み合わせて投資をしてもかまいません。「インデックス投資を8割くらい+アクティブ投資を2割くらい」というのは一時期の企業年金運用では流行していました。個人にとってもインデックスとアクティブは択一ではないですから、両方を保有する選択肢はあってもいいのです。

 新型コロナウイルスの影響は大きく、今は難しい社会情勢にあります。投資もまた難しい局面に立たされています。こういうマーケットの状況であるからこそ、「インデックス投資をするか」「アクティブ投資をするか」、少し自問自答してみてはいかがでしょうか。

 今インデックス投資とアクティブ投資について考えておくことは、経済がしっかり回復基調になったとき、あなたの投資スタイルをしっかり地に足のついたものとしてくれるでしょう。