米国株式市場の現状
米国株式市場は、新型コロナウイルスの感染拡大に対する楽観的な見方等を背景に回復基調でしたが、現在は上値の重い展開になっています。
株価は半値戻しを達成しましたが、S&P500は節目となる3,000ポイントを突破できていません。もう一段の上昇のためには好材料が欲しいところですが、ネガティブなニュースが目立ちます。
現在、懸念されている材料は、新型コロナウイルスをきっかけにした米中の対立激化の他、民主党のバイデン氏が大統領になった場合にハイテク巨大企業への規制が強まるかもしれない、という点などです。
その中でも最も大きな懸念は、果たして経済が年後半以降に回復に向かうのか、ということです。再び新型コロナウイルスの感染が拡大する可能性が残る他、ロックダウン解除後に消費がどの程度回復していくのかについて明らかになるのはこれからです。
この不透明感を拭い去る特効薬は、新型コロナウイルスのワクチン開発でしょう。この点、ワクチン開発のモデルナ(MRNA)はすでにフェーズ1の治験を終え、フェーズ2の治験に入る予定であり、順調に進めば2021年の早い段階で上市できるだろうとコメントしています。ただし、世界の需要(76億人と想定)に応えられる製造は一社だけでは困難であるとも述べており、ワクチンの製造体制については課題が残るようです。
業績堅調かつ配当や自社株買いが期待できる企業に注目
こうした環境を考慮すると、当面、株価は方向感なく推移するとみられます。この相場の中で購入していきたいのは、業績堅調かつ配当や自社株買いによって株主還元できる企業です。
金利がゼロ近くまで下がり、減配や無配の企業の増加が想定される中、健全に配当や自社株買いで株主還元できる企業の評価が相対的に上がると考えられます。
ETFのウィズダムツリー 米国株クオリティ配当成長ファンド(DGRW)
このカテゴリーで注目しているのは、ETF(上場投資信託)のウィズダムツリー 米国株クオリティ配当成長ファンド(DGRW)です。
実績配当利回りは2.46%で、過去1年を振り返ると騰落率はプラスの2.45%と堅調に推移しています(2020年5月12日時点)。
ウィズダムツリー 米国株クオリティ配当成長ファンド(DGRW)の過去1年の株価推移
このETFは、配当実績のある大企業によって構成されており、長期的な成長性の程度や、ROE(自己資本利益率)、ROA(総資産利益率)の水準によって選別されています。4月30日時点の上位構成銘柄は、ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)、マイクロソフト(MSFT)、アップル(AAPL)、P&G(PG)、メルク(MRK)などです。
また、配当関連のETFというと、高配当企業に投資する戦略の、SPDR ポートフォリオS&P 500 高配当株式ETF(SPYD)も注目されます。ただ、1年間のパフォーマンスはマイナス25.65%とさえない推移です。
SPDR ポートフォリオS&P 500 高配当株式ETF(SPYD)の過去1年の株価推移
P&G(PG)
日用品大手のP&Gは、2020年1-3月期の決算が堅調で、売上高が5%増、純利益が6%増でした。日用品が米国を中心に伸び、1-3月期は9億ドルの自社株買いを実施、四半期配当も引き上げました。
なお、同社は配当を130年間連続で出し、64年間増配し続けている、株主還元に積極的な企業です。
経済全体の先行きには不透明な部分がありますが、日用品は比較的安定した需要が期待できるカテゴリーであることから、今後も業績はしっかりと推移すると考えられます。
P&G(PG)の過去1年の株価推移
アップル(AAPL)
アップル(AAPL)の2020年1-3月期決算は1%増収、純利益は3%減益でした。さえない決算に見えますが、市場予想を上回るポジティブ決算です。
iPhoneは苦戦していますが、Apple Watchなどで構成されるウェアラブル、ホーム&アクセサリーズ事業や、App Store、iCloudなどで構成されるサービス事業は2桁の増収を維持しており、長期的な成長ストーリーが引き続き描ける銘柄と考えられます。
500億ドルの自社株買い枠を追加で設定すると公表しており、株主還元の面でも安心感が持てる企業です。
アップル(AAPL)の過去1年の株価推移
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