はじめに

 今回のアンケート調査は2020年4月27日(月)~4月29日(水)の期間で行われました。

 新年度入りとなった4月の日経平均終値は2万193円でした。節目の2万円台に乗せたほか、前月(3月)末比では1,276円高、月足ベースでも4カ月ぶりに上昇へと転じています。

 あらためて、4月の株式市場の展開を振り返ると、月初の日経平均は下落のスタートとなりました。ただし、3月までの株価急落でかなりの不安を先取りしていたことや、1万8,000円あたりの水準を維持できたことで、その後は月末まで右肩上がりの基調を描いて行きました。新型コロナウイルスの感染拡大が欧米諸国で鈍化してきたことや、中国をはじめとする各地で都市封鎖等の規制解除や経済活動再開に向けた動きなどが追い風となりました。

 このような中で行われた今回のアンケートですが、4,200名を超える個人投資家からの回答を頂きました。日経平均と為替の見通しDIがともにマイナスが続いており、株安・円高の見方が根強いものの、マイナス幅自体は前回調査と比べて大きく縮小しています。新型コロナウイルスへの懸念はまだ払しょくできてはいないものの、株式市場は不安の中にも明るさが見え始めている印象です。

 次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。

日経平均の見通し

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

「マイナス幅が大きく縮小し、不安が一服」

 今回調査における日経平均の見通しDIの結果は、1カ月先がマイナス29.34、3カ月先はマイナス15.38となりました。

 両者ともDIのマイナスが続いていますが、前回調査の結果がそれぞれマイナス63.55とマイナス35.46だったことを踏まえると、マイナス幅をかなり縮めており、ひとまず新型コロナウイルスをめぐる情勢に対する不安が一服しているような印象です。今回の調査期間(4月27~29日)を含め、4月の日経平均が順調に値を戻してきたことが結果に反映されたと言えます。日経平均は調査終了後の30日に2万円台に乗せたため、足元のDIはもっと改善しているかもしれません。

 とはいえ、回答の内訳グラフを見ると、弱気派と中立派の占める割合がまだ圧倒的に多い状況に変わりはありません。先行きの見通し懸念は後退しているものの、まだ強気に傾いているわけではないことが分かります。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成 

 4月の日経平均は新型コロナウイルスの感染拡大の頭打ち感や経済活動再開に向けた動きによって、不安から期待を先取りする格好で戻り基調を描いてきましたが、5月に入ってからも2万円台を維持する展開が続いています。2月6日から3月19日にかけて急落した下げ幅の「半値戻し(2万176円)」も達成しています。

 このままの調子が続けば2万1,000円台以上の上昇があってもおかしくはありませんが、その一方で「ちゃぶ台返し」の懸念が複数存在している点には注意です。

 一つ目の懸念は、足元の株式市場が好感している経済活動再開に向けた動きです。世界各地の状況を見ると、ウイルス感染の抑制やピークアウトに伴って実施されるところがある一方で、根拠に乏しい見切り発車や経済の停滞懸念、国民の不満の圧力などに押されて再開されているところが混在しており、感染の再拡大リスクと隣り合わせです。

 もちろん、感染の再拡大自体はすでに想定済みで、相場の視点は「アフター(After)・コロナ」から「ウィズ(With)・コロナ」へと変わりつつありますが、新興国はまだ感染拡大中の地域が多いほか、先進国でも、次の感染拡大に向けた体制強化や準備、支援策をどこまで整えているかについて状況はまちまちです。まだ対応力が試されている段階のため、本格的な経済活動再開までの道のりは株価の上昇ピッチが示しているほど早くはないのかもしれません。

 二つ目の懸念は米中関係です。海外株式市場では、国内連休期間中に米中対立への警戒が浮上した場面がありました。昨年の連休明けは、米中摩擦の激化によって株価が下落トレンドへと舵を切りましたが、今年はひとまず波乱の取引再開は回避できています。とはいえ、米中摩擦の再燃は今後の相場の重石となる可能性があります。

 中国は一足早く経済活動の再開へと歩みを進め、今月22日からは延期されていた全人代(全国人民代表大会)の開催も予定されていますが、実際に米国から何らかの制裁や報復措置が発動されてしまえば、中国だけでなく米国自身や世界経済も無傷で済みません。そうなれば株価の「二番底」の懸念も現実味を帯びてきます。

 そして、最後の3つめは米NASDAQ市場の強さです。米NASDAQ指数は、先週末8日(金)の取引終了時点で年初来プラスに転じています。その強さの背景にあるのは、アルファベット(グーグル)やアマゾン、フェイスブック、アップルといった「GAFA」を中心とする米巨大IT企業銘柄への買いです。

 米NASDAQの強さは、ごくわずかの勝ち組企業に資金が集中している状況を表しているだけで、その裏にはコロナウイルスの影響により苦労している業種や企業が圧倒的に多いことを意味しています。

 ここからは実際の経済回復など、現実のスピード感とのギャップを埋めていくことになり、日柄調整の継続が想定されます。基本的に好材料に反応しやすく、ウイルスに対するワクチン開発や治療薬承認などで進展があれば、一段高も有り得るものの、市場の動きと現実の動き、政治と思惑、資金の一極集中など、至る所に「ギャップ」や「歪み」が生じており、大きな混乱に至る火種がくすぶっていることを意識しておく必要はありそうです。

今月の質問「コロナショック!何に投資する?」

楽天証券経済研究所 根岸 美知代

 このアンケート初日の4月27日(月)は、前週のNYダウ平均の上昇や、日銀による追加緩和策が事前の予測を上回ったことが好感され、前週末終値より521円22銭高い1万9783円22銭で取引を終えました。

【今月の質問1】コロナショックで株が暴落しました。こんな時、日本株に投資するとしたら、何を優先しますか?もっとも重視するものを1つお答えください。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

「個別銘柄:コロナショックでの下落率が大きい株」が最も多く26.4%、続いて「投資信託:日経平均などに連動するインデックスファンド」21.1%、「個別銘柄:成長株」17.1%と、株価や日経平均の上昇を期待している方が多いことが分かります。

【今月の質問2】 2020年3月から4月で株などの取引をしましたか?

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 この2カ月で、株などの取引をした方が78.4%でした。

【今月の質問3】 個人投資家として、この波乱相場時のアドバイスがあれば20文字以内で教えてください。 [フリーコメント20文字]

 たくさんの貴重なアドバイスをいただきました。ありがとうございます。すべてご紹介できないのが残念ですが、状況別にご紹介させていただきます。

今、買おう!と思っている方へのアドバイス編

今、どうしようかと思っている方へのアドバイス編

アドバイス、格言編

 今回もたくさんのご意見をありがとうございました。

為替DI:新型コロナ相場、投資家のドル/円見通しは?

楽天証券FXディーリング部 荒地 潤

 楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスの時は「円安」見通し、マイナスの時は「円高」見通しで、プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強いことを示しています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

「5月のドル/円は円安、円高のどちらへ動くと思いますか?」

 4月末に楽天証券が実施したアンケートに回答頂いた4,240人の投資家のうち約36%(1,521人)が、「円高に動く」と考えていることが分かりました。

 一方「円安に動く」と考える投資家の割合は最も少ない約23%(993人)。最も多かったのは「動かない(分からない)」の約41%(1,726人)でした。

 DI(円安見通しと円高見通しの差)は▲12.45。2カ月連続のマイナスですが、マイナス幅は先月(▲28.53)の半分以下に縮小しました。

 新型コロナによって投資行動は後ろ向きになり、4月の相場は「リスクオフ」一辺倒になりました。リスクオフの時には「ドル売り/円買い」に動くというのがこれまでのパターンでしたが、新型コロナによって相関関係は消えました。世界の主要都市がロックダウンされるなかで、株で食料品は買えないとドル需要が急速に高まる「有事のドル買い」が起きたため、リスクオフが「ドル買い/円売り」になるという動きに変わったのです。5月のドル/円相場を読むことのできない投資家が4割もいるのはこのような理由からでしょう。

 BLS(米労働省労働統計局)が5月8日に発表した雇用統計によると、4月の非農業部門雇用者数は2,050万人減少しました。減少幅は戦後最大で、2011 年2月以来の低水準です。また失業率は、月間の上昇率としては過去最大となる10.3ポイント上昇して14.7%に。雇用統計の大幅な悪化は、新型コロナウイルスの世界的流行の影響とそれを封じ込めようとする努力を反映した結果であると米労働省労働統計局は説明しています。減少幅の大きさはもちろんですが、そのスピードの速さに驚かされます。半世紀ぶりの低失業率を謳歌していた米国が、ほんの数カ月間で米国人の5人に1人が職を失ってしまうことになったのです。

 米国の雇用はすべての主要産業部門で大幅に減少しています。特にレジャーとサービス業での減少が目立ちました。厳しい移動制限によって旅行や観光をする人がほぼ皆無になった結果、ボーイング社は10%の人員カットを計画。航空機産業が持つ広いすそ野産業(完成品を製造する企業に必要な部品や資材を供給する業者)への波及が懸念されています。

 大企業ばかりではなくギグエコノミーにも影響がでています。民泊仲介サイト世界大手の米Airbnb(エアビーアンドビー)は、全世界約7,500人の従業員のうち、25%の人員を削減すると発表。宿泊客がゼロになりAirbnbのホストが破産するというケースもでています。それでもまだ、実際のデータはもっと悪いといわれています。「本当の失業率は23~24%と考えている」と、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁は述べています。

 一方で、4月平均労働賃金は、前月比4.7%、前年比7.9%アップと大幅上昇。低賃金労働者が新型コロナの影響で大量に解雇されているせいで、単純に喜ぶわけにはいきません。

 しかし、米雇用統計が発表された後のマーケットは冷静でした。なぜなら、数字が大幅悪化することは、市場参加者でなくても皆知っていたからです(まさか失業率が4%に下がると考えていた人はいないでしょう)。マーケットの焦点は、雇用統計がどれだけ「悪くなった」かよりも、どれだけ「早く」新型コロナから回復するか、つまり深さから長さへと移っています。

 4月の非農業部門雇用者数は2,050万人減少、失業率は14.7%という結果は、事前予想(2,100万人減少、16.0%)よりは「良かった」。4月最終週の失業保険の申請件数は316万件で、その前の週385万より減っています。実際、新規の失業保険申請件数は4週連続で減少して、雇用市場はすでに底を打ったという希望の兆しも見え始めています。

 失業が経済に与えるダメージとは、需要ショックがそれだけ長引くリスクがあるということです。経済再起動に向けて動きだすためには、企業や消費者は経済成長を支える状態になっていなくてはいけない。失業率は企業や消費者の準備率を示しているともいえます。低くなるほど、経済再開に向けて準備が整っているといえます。

 そのため米政府やFRB(米連邦準備制度理事会)は、積極的な対策を打ち出しました。全国民を対象に現金給付を実施したほかに、外出禁止で働くことのできない労働者には、有給休暇という形で、1日当たり200ドル未満、または累計で1万ドルを上限に、10週間は3分の2の報酬をもらえる「Emergency Family and Medical Leave Expansion Act (EFMLEA)」、あるいは、1日当たり511ドル未満、または合計で5,110ドル未満を2週間もらえる「Emergency Paid Sick Leave Act(EPSLA)」を選択できるようにしました。さらに失業者に対しては、失業保険を週当たり600ドル、13週間までもらえるよう延長した法律もあります。

 ところが、米国の失業給付金の規模が、かえって経済の再起動を困難にするかもしれないという新たな問題を生み出しています。州と連邦政府の給付金を合わせると、解雇された労働者に支払われる平均週額は、昨年末に労働局が発表した平均377.97ドルから978ドルに上昇します。これは多くの低賃金労働者が稼ぐ給料よりも多くなり、仕事に戻ることに消極的になる人が増えるおそれがあるというのです。国民を早く仕事に戻すには、手厚い対策をしてはだめだ、せいぜい布マスク2枚と10万円にしておこうというのが日本政府の戦略かもしれません。

 4月のユーロ/円の終値は117.39円。3月の終値に比べて1.26円のユーロ安/円高でした。

 4月末に楽天証券が投資家を対象に実施した相場アンケート調査の結果によると、回答者4,240人のうち、約38%(1,625人)が、5月のユーロ/円は「ユーロ安/円高に動く」と考えていることが分かりました。

 一方で「ユーロ高/円安に動く」は最も少なく約16%(662人)でした。「動かない(分からない)」は、約46%(1,953人)。

 ユーロ/円のDI(円安見通しから円高見通しを引いたもの)は▲22.71。2カ月連続のマイナスとなりましたが、マイナス幅は先月(▲43.91)のほぼ半分まで縮小しています。

 4月の豪ドル/円の終値は69.74円。3月の終値に比べて3.71円の豪ドル高/円安でした。

 楽天証券が4月末に投資家を対象に実施した相場アンケート調査の結果によると、回答者4,240人のうち、約31%(1,296人)が、5月の豪ドル/円は「豪ドル安/円高に動く」と考えていることが分かりました。

 一方「豪ドル高/円安に動く」は最も少ない約17%(731人)。「動かない(分からない)」は約52%(2,213人)で半数を超えました。

 豪ドル/円のDI(円安見通しから円高見通しを引いたもの)は▲13.33。2カ月連続のマイナスとなりましたが、マイナス幅は先月(▲30.63)の半分以下に縮小しています。

今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「インド」「中国」「ブラジル」「ロシア」を選択したお客様の割合に注目します。

 当該質問は複数回答可で、選択肢は、日本、米国、ユーロ圏、オセアニア、中国、ブラジル、ロシア、インド、東南アジア、中南米(ブラジル除く)、東欧、アフリカ、特になし、の13個です。

図:質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「インド」「中国」「ブラジル」「ロシア」を選択した人の割合 (2017年1月~2020年4月)

出所:楽天DIのデータをもとに筆者作成

 前回のこの欄で「インド」のみを取り上げ、いくつもの困難が重なっているため、個人投資家の皆様が「インド」を選択する人の割合が低下していると述べました。

 前回(3月)、インドを選択した人の割合は17.61%でした。そして今回(4月)は、16.44%でした。つまり、「インド」を、投資をしてみたいと考える個人投資家の皆様の割合は、前月よりも低下したのです。

 特に、今年1月の調査以降、新興国を選択する個人投資家の皆様の割合は、明暗を分けています。グラフのとおり、インド、ブラジル、ロシアは低下、そして逆に、中国は上昇しています。

 この明暗は、新型コロナウイルスの感染状況と無関係ではないと、筆者は考えています。3月、4月と、感染拡大が鈍化して“基本的に抑え込んだ”旨の宣言がでた中国は、今後投資してみたい国に選ばれやすくなり、逆に、感染が拡大傾向にあるインド、ブラジル、ロシアは、今後投資をしてみたい国に選ばれにくくなっていると考えられます。

 また、“経済再開”も深く関わっているとみられます。感染拡大が鈍化した上で、経済再開を進める中国と、感染拡大と同時に経済再開を進めるインド、ブラジル、ロシアとでは、同じ経済再開でも、行為の意味やそれらの行為から受ける印象が大きく異なります。

 基本的に、経済再開は、感染拡大と相反関係にあると言えます。経済再開ができるのは感染拡大が鈍化してから、という考え方です。第2波、第3波を防ぐ必要があるためです。インド、ブラジル、ロシアは、第2波・第3波が発生するリスクがあるわけです。

 このようなリスクが嫌気され、中国以外の3つの新興国を「今後投資をしたい国・地域」として選択した個人投資家の皆様の割合が、低下しているのだと思います。

 感染状況と経済再開の具合によっては、次回以降の調査で、インドと中国の割合が逆転する可能性が出てきたと、筆者は考えています。

 次回以降も、「インド」「中国」「ブラジル」「ロシア」を選択した個人投資家の皆様の割合に、注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品 2020年4月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域) 2020年4月調査時点 (複数回答可)

出所:楽天DIのデータより筆者作成