半値戻しを達成した日経平均

 11日の日経平均株価は、前週末比211円高の2万390円となりました。これで、コロナ・ショック下げ幅の半値戻し(2万318円【注】)を達成しました。

【注1】コロナ・ショック前の高値(1月20日2万4,083円)からショック後安値(3月19日1万6,552円)までの下落幅は7,531円です。安値から、下落幅の半分(3,766円)戻した2万318円が、半値戻し達成となる水準です。

 安値をつけた後、大きな波乱もなく、順調に上昇が続いてきました。世界景気が急激に悪化する中、いわゆる「不況下の株高」です。

 違和感を覚える投資家も多いが、株価の先見性を考えると、私は特に不思議には感じません。もし半年~1年後に世界経済が正常化に向かうならば、それを織り込んで、半年~1年前にあたる今から株価が底打ち、反発を始めるのは、よくあることだからです。

安値でうまく買えなかった投資家は、どうしたら良いか?

 東証の売買統計を見ると、個人投資家は、コロナ・ショックで暴落する日本株を積極的に買い増ししてきました。個人投資家にとって、とても良い買い場になったと思います。

 ただ、日経平均の戻りがあまりに急だったため、安値でうまく日本株を買えていない投資家も多いと思われます。押し目(下がった時)で買いたいと待っていた投資家にとって、「押し目待ちに押し目なし」【注2】の状況が続いてきたからです。

【注2】相場格言:「押し目で買いたいと思っている投資家が多いと押し目なく上昇が続く」という意味)

 私は、日本株は長期的に良い買い場を迎えているが、短期的には上昇ピッチが速すぎることを警戒すべきと考えています。経済を再開した欧米で感染の二次拡大があり、夏場に、1回株価が下がる局面があると、考えた方が良いと思っています。

 日本株を買い遅れた人は、少しずつ時間分散しながら、日本株を買っていったら良いと考えています。

 ただし、格言通り「押し目待ちに押し目なし」となり、反発が続くこともないとは言えません。想定より早く、年内にもワクチンや治療薬が大量に利用可能となるメドがたてば、世界経済の回復時期が読めるようになるので、格言通りの上昇相場が続く可能性もあります。下がると決めつけて、株式の保有を極端に減らさない方が良いと思います。

二番底あるか?

 これから、大きな調整があるか、考えるために、過去5年の日経平均の動きを振り返ります。以下のチャートをご覧いただくと分かる通り、日経平均は大きくトレンド転換する際に、「二番天井」「二番底」をつけてから転換するパターンを繰り返しています。

日経平均株価の推移:2015年1月5日~2020年5月11日

注:楽天証券経済研究所が作成

 上昇トレンドが終わって下落トレンドが始まる前に「二番天井」をつけ、逆に、下落トレンドが終わって上昇トレンドが始まる前に「二番底」をつけたことが多かったことが分かります。
2015~2016年のパターンをご覧ください。2015年は、好調だった世界景気が悪化に向かった局面です。日経平均は、二番天井をつけてから急落しました。

 2016年は、景気後退ぎりぎりまで悪化した世界景気が回復に向かった年です。日経平均は二番底をつけてから、急騰しました。

 次に、2018~2019年のパターンをご覧ください。2018年の日経平均は、二番天井をつけてから急落しました。好調だった世界景気が悪化に向かう転換点となった年だったからです。2019年は、日経平均は二番底をつけてから上昇しました。2020年にかけて世界景気が持ち直す期待が上昇ドライバーとなりました。

 このように、トレンド転換の際、二番天井や二番底をつけてから転換するのは、相場にとって自然なリズムです。好材料が減り、徐々に悪材料が増えていく時は、「二番天井」をつけてから急落するのが自然です。一番天井をつけた時は、上昇相場局面の押し目か、相場の転換点か、判断できません。二番天井をつけて下げた時に、トレンド転換を確信する投資家が増えます。

 2020年のコロナ暴落は、二番天井にはならず、一発で相場が変わりました。コロナ感染による世界景気悪化が、予告なく突然あらわれ、急激に進んだからです。

 今、日経平均は、コロナ・ショックの下げ過ぎの反動で、どんどん反発しています。ただ、あくまでも経験則ですが、このまま押し目なく戻り続けるとは、考えにくいところです。夏場に、一度押し目があって、その後、本格的に上昇トレンドに戻った方が自然な流れと考えます。

 さて、そうは言っても、今回のコロナ・ショックは何から何まで異例づくしです。過去の経験則が成り立つか、分かりません。短期的な下げに賭けて日本株を売り過ぎないようにした方が良いと思います。株の保有を減らし過ぎず、時間分散しながら株の保有を増やしていくのが良いと、私は考えています。

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