新エネ車補助金を削減しつつも2年延長、販促効果に期待

 中国財政部などの関係省庁は23日、新エネルギー車に対する補助金制度の2年延長を発表し、補助金額を20-22年に前年比10%、20%、30%削減する方針を明らかにした。これは内閣に当たる国務院が3月末、新エネ車支援策として20年の補助金廃止を見送り、2年延長すると発表したのに続く具体措置。市場は少なくとも年内の補助金の据え置きを見込んでいたが、実際には10%削減となり、例えば、航続距離300km以上400km未満の電気自動車(EV)であれば1万6,200元、400km以上では2万2,500元となる。続く21年、22年にはさらに20%、30%の削減が行われるが、BOCIは19年に行われた45-60%の削減に比べ、業界への影響は限定的とみている。今回の通達ではまた、補助金対象の車両を年間最大200万台に限定する方針が明らかになった。

 この通達によれば、バスやタクシー、清掃車などを含む公共サービス用車両に関しては、年内、新エネ車補助金を据え置き、21年、22年の減額幅を10%、20%に抑える。基本的に公用車を新エネ車に限る規定の下、政府機関による新エネ車の調達も増やす計画。BOCIはこうした方針が政府・公共機関向けの販促につながると予想。地方政府などと緊密な関係にあるBYD(01211)などのメーカーに有利とみている。

 過去の例と同様、今回の通達も即時全面実施ではなく、4月23日から7月22日まで3カ月間の猶予期間を設ける。前年比で厳格化された技術基準(例えば航続距離は最低250km→300km超)をクリアできない車種に関しては期間中、19年の補助金の50%に限って支給される。この規定により、7月前に一部車種の駆け込み需要が見込まれるものの、大半は新基準を満たしており、BOCIは「影響は軽微」としている。

 一方、今回注目されたのが、補助金の対象となる車両の価格を「上限30万元」とする新規定。国産車の多くは30万元を大きく下回る価格帯だが、現地生産のテスラ車には影響する。BOCIはテスラが今後、LFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーなどを搭載した30万元未満の新規モデルを投入する可能性を指摘し、仮にそうなれば、中国の新エネ車市場の波乱要因になるとみる。高級車カテゴリーだけでなく、国産ブランドの主力市場にもプレッシャーが及ぶ見通しという。

 中国における新エネ車の販売台数は1-3月に前年同期比56.4%減の11万4,000台。補助金の削減前だった前年同期実績の高さに加え、新型コロナウイルスの感染拡大が影響した。こうした中、中央政府だけでなく、地方政府も独自に優遇策を導入しており、例えば広東省、上海市はそれぞれ1台当たり1万元、5,000元の補助金措置を発表済み。BOCIは一部都市での販売促進効果を見込む。ただ、それでもBOCIは20年の新エネ車販売台数が前年比でプラス成長を確保するのは難しいとの見方。その理由として新型コロナウイルスの影響と、マクロ経済の低迷に伴う需要萎縮を挙げている。