1:日米における新型コロナウイルス患者数の状況

米ニューヨーク市の新規入院患者数

 世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスに関して、ニューヨーク市(以下、NYC)が分かりやすいデータを公表しています。公表データの内の「新規入院患者数」に着目すると(図1)、3月9日頃から急増し、2週間後の22日夜から都市封鎖(ロックダウン)が始まりました。その後は1日当たり1,200人を超える高原状態が続きましたが、18日間が経過した頃から急激に減少しています。都市封鎖の効果が出始めているものと考えられます。

図1:ニューヨーク市の新規入院患者数

※過去データは日々更新されるため、特に直近値は暫定値

東京都の新規陽性患者数

 わが国はどうでしょうか? 日本は検査数が少ないため、東京都が発表している新規陽性患者数(図2)がNYCの入院患者数に相当すると考えて注目してみると、春分の日の3連休後から急増、16日後の4月7日に非常事態宣言が発せられ、翌日から外出自粛が始まりました。その後は150~200人程度の高原状態が続いており、NYCの推移と似ています。18日後は25日となりますが、その頃に何らかの効果が出始めるのかが注目されます。

図2:東京都の新規陽性患者数

期間:2020年3月2日~2020年4月19日(NY市は17日まで)
出所:NY市東京都のデータを基に野村アセットマネジメント作成

 上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。

2:日米欧・株価指数と新型コロナウイルスの関係

新型コロナウイルスと共存する必要性

 NYCでは新規入院患者数の増加は収まってきましたが、だからといってすぐに都市封鎖の解除はできません。現にニューヨーク州のロックダウンは5月15日まで2週間延長されました。

 新型コロナウイルスを全く気にせずに人間が動き回るためには、少なく見ても3割の人が免疫を持つ「集団免疫」となる必要があるようです。そのためには予防接種(ワクチン)が必要ですが、ワクチンが完成し、世界中に出回るには相当な時間がかかると考えられています。少なくともそれまでの間は、人々がこれまでと同じようなペースで自由に動き回ることは難しく、新型コロナウイルスと共存しながら生活していくことになると思います。

主要国株式市場の反応

 ここで主要国株式市場に目を転じると、新型コロナウイルスが世界中に広がり始めて以降、主要株価指数間でパフォーマンスがかなり異なっています。3月の暴落から最も回復力が強いのがナスダック総合指数、次いで構成銘柄が重複するS&P500株価指数が続きます(図3)。一方、日欧株式市場の戻りはかなり見劣りしています(図4)。

図3:米国の株価指数の推移

図4:日欧の株価指数の推移

期間:2019年3月29日~2020年4月17日、日次
(出所)ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成

 上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。 この要因を推測すると、指数構成銘柄のうち、長期的に見て「新型コロナと共存できる銘柄」がどれくらいあるのか? によって差が出ているものと考えています。当面の相場は、新型コロナと共存できる銘柄が買われる一方で、共存できない銘柄が低迷する、そんな相場展開が続くのではないでしょうか? もう少し詳しく見てみましょう。

指数の業種構成比はこんなに違う!

 図5、図6は前項で比較した4指数の業種構成比(図5)とS&P500の業種ごとの年初来パフォーマンス(図6)を見たものです。

 パフォーマンス順に並べた結果、生活必需品や公益といったディフェンシブが底堅く、ヘルスケアや情報技術も下げが小さくなっています。一方で、エネルギーや一般消費財サービス(ホテル&リゾート、デパート、高級ブランド、バイク、カジノなどが足を引っ張る)、金融などが相対的にかなり弱くなっています。

 つまり、生活必需品・ヘルスケア・公益事業・情報技術の4業種のウエイトが高い米国株指数のパフォーマンスが、強めに出ています。

図5:各株価指数の業種構成比

注:2020年4月16日現在

図6:S&P500の年初来業種リターン

期間:2019年12月31日~2020年4月16日
出所:ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成

 上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。

新型コロナウイルスと共存できる産業は?

 都市封鎖の間、人々は自宅にこもり、ネットワークを介したコミュニケーションやさまざまな新しい生活スタイルを試みていると思われます。新型コロナの危機が減じていけば、徐々に制約も解かれていくでしょうが、完全に元に戻ることは相当長い間にわたって難しいと思います。人々は新型コロナウイルスと共存する生活を送る必要があるのです。

 普及が進みにくかったオンライン・コミュニケーションですが、新型コロナに対処するため、テレワークなどで強制的に取り組み始めた方が多いと思います。しかし、慣れてみれば便利なもので、ビジネスの交渉事を現地に出向かずに効率的に行なえる可能性が出てきたと感じる方も多いと思います。また、映画館に行く代わりにネット配信で楽しむこともできますし、既に買い物はネットで十分になっています。大きな変化期ではないでしょうか。

新型コロナウイルスと共存できるのはどんな企業か?

共存できるテクノロジー関連企業

 では、新型コロナウイルスと共存できる銘柄はどんな銘柄でしょうか?

 図7は米国のテクノロジー関連企業の過去1年程度の株価推移です。

 アマゾン・ドットコム(AMZN)マイクロソフト(MSFT)は、言わずもがなの「クラウド2強」です。人々がオンラインを使えば使うほどビジネスが活況になります。eコマース(電子商取引)も加わるアマゾンは上場来高値更新中です。

 オンラインを支えるハードウエアの代表格は「産業のコメ」と呼ばれる半導体企業です。エヌビディア(NVDA)はその中でも有数の成長企業と考えられ、過去1年間のパフォーマンスはクラウド2強を上回ります。

図7:米国のテクノロジー関連企業等の株価推移

期間:2019年3月29日~2020年4月17日、日次
出所:ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成

 上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。

共存できるヘルスケア関連企業

 図8は米国のヘルスケア関連企業と生活必需品企業の株価推移です。ギリアド・サイエンシズ(GILD)は新型コロナウイルス感染症の治療薬として有望視されている「レムデシビル」を開発した企業です。一方、J&J(JNJ)はワクチン開発を進行中で、来年早々にも使用開始が期待されている企業です。「コロナと共存」というとやや違和感があるかもしれませんが、コロナとは関係が深い製薬企業ということで、「共存できる企業」と位置付けられるでしょう。

 P&G(PG)は日用品全般を扱う大企業ですが、人々が以前のように活発に活動しようが、昨今のように自宅でおとなしく生活しようが、人々の生活の質の向上にとって必須の企業と位置付けられています。

 こうした企業群もコロナと共存できる企業と考えています。

図8:米国のヘルスケア関連企業等の株価推移

期間:2019年3月29日~2020年4月17日、日次
出所:ブルームバーグのデータを基に野村アセットマネジメント作成

 上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。

 記載されている個別の銘柄については、参考情報を提供することを目的としており、特定銘柄の売買などの推奨、また価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。上記は過去のデータであり、将来の投資成果を示唆あるいは保証するものではありません。

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