皆さんは、ETFに投資したことはありますか? ETF(上場投資信託)は日本語のその名のとおり、株式市場に上場している投資信託で、さまざまな種類があります。しかしその中には、リスクを知っていないと大きな痛手を被る可能性があるものもあります。
バリュエーションに富んだETFのラインナップ
発売当初のETFは、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)の株価指数に連動したものばかりでした。しかし現在は、ベア型(日経平均株価などが値下がりすると価格が上昇するもの)やレバレッジ型(日経平均株価の2倍の値動きをするものなど)、米国株や中国株、世界中の株式、そしてREIT(上場不動産投資信託)、金(ゴールド)、石油、商品、VIX指数を投資対象とするものまであります。
しかしそれらの中には、知らなければいけない思わぬリスクが潜んでいるものもあります。代表的なものが「コンタンゴ」のリスクです。
「コンタンゴ」とは
ここで突然出てきた「コンタンゴ」という言葉。聞いたことはありますか? 決してアルゼンチンのタンゴの一種ではありません。
「先物型ETF」と呼ばれるタイプのETFでは、このコンタンゴに注意しなければなりません。
コンタンゴとは、期日が遠い先物価格の方が、期日が近い先物価格よりも価格が高い状態のことを言います。
先物には決済の期日が定められています。この決済までの期日が長いほど、将来の価格の不確実性が増すため、先物の時間的な価値が増大し、その結果先物価格が高くなります。
上記のとおり先物には期日があり、同じものをいつまでも持ち続けることはできません。そのため、先物型ETFの運用者は、期日が近い先物を売り、期日が遠い先物を買う(これをロールオーバーと言います)ことを繰り返しています。このとき、コンタンゴにより期日が遠い先物の方が高いことが多いため、いわば「同じ商品を安く売って高く買い直す」ことを繰り返す形になるのです。
その結果、時間が経てばたつほど、先物型ETFの価格が減価していくことになります。
バックワーデーションとはどんな状態?
このコンタンゴに注意しなければならない先物型ETFには、例えば次のようなものがあります。
・国際のETF VIX短期先物指数(1552)
・One ETF 国内金先物(1683)
・WTI原油価格連動型上場投信(1671)
・NEXT FUNDS NOMURA原油インデックス連動型上場投信(1699)
・WisdomTree 大豆上場投資信託(1697)
日本取引所グループのホームページにも、ETF投資のリスクとして、先物型ETFの注意点が説明されています。こちらもご覧ください。
なお、コンタンゴの逆で、期日が遠い先物価格の方が、期日が近い先物価格よりも価格が低い状態のことを「バックワーデーション」と言います。バックワーデーションが起きるのは、マーケットが荒れているときであり、平時はコンタンゴになることが多いです。
先物型ETF投資でやってはいけないこととは
先物型ETFのリスクはコンタンゴにあります。時間が経過するほど、コンタンゴの影響により価値が減少していくのです。
そのため先物型ETFは、長期保有には不向きです。この点は絶対に押さえておいてください。
例えば「国際のETF VIX短期先物指数」(1552)を紹介する運用会社のサイトには、注意書きとして、「当ファンドは、中長期的な投資(バイ・アンド・ホールド)には向きません。」とはっきり記載してあります。
実際の株価チャートを見てください(下図1)。今年3月には、VIX指数が2008年のリーマン・ショックの時と同じくらいの上昇を見せました。しかし、当ETFの長期間のチャートをみると、今年3月の上昇幅は、ほんのわずかな上昇。実際には1カ月で価格が6倍になっているにもかかわらずです。
VIX指数が過去の暴落時と同じ水準になったから、このETFの価格も過去の暴落時の価格まで戻るというわけではない点、十分に注意してください。
【図1】1552 国際ETF VIX短期先物指数 月足
先物型ETFの投資手法とやってはいけないこととは
先物型ETFに投資するのであれば、比較的短期間で取引を完結する工夫が必要です。例えば、日足チャートで上昇トレンドにあるときのみ保有し、下降トレンドに転じたら速やかに売却する、といったようにです。
筆者の実感では、VIX先物指数のETFが最も価格低下が著しいと感じます。
原油ETFなどについては、コンタンゴが生じても原油価格自体が上昇すればETFの価格も上昇しますが、やはりコンタンゴの分だけ上昇には制約が生じます。
くれぐれも、先物型ETFを買った後価格が下がって含み損になったからといって、「価格が戻るまで持ち続けよう」などと思わないようにしてください。
「ETF=長期投資」というイメージを持っていた方は、長期投資が逆にリスクとなり、あくまでも短期間の上昇を取りに行くことが望まれる、そんなETFもあるのだということをぜひ知っておいてください。
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