中学2年で株式投資を始め、昨年、累計利益4億円を達成、人気ブログ『かぶ1000投資日記』を運営するかぶ1000さんインタビューの後編をお届けします。

 今回は、『会社四季報』の活用の仕方や現在のポートフォリオについて、さらに投資ビギナーへのアドバイスもお願いしました。

『会社四季報』の使い方。前の号からどう変化したかをチェック!

──銘柄選びには『会社四季報』が欠かせないとのことですが、実際、どのように活用されているのですか。

 新しい本が出たらすぐに買ってきて、とにかく読みあさります(笑)。

──全上場企業ですから4,000社近く掲載されていますよね。それをすべて読むのですか。

 一部スルーする業種もありますが、ほとんどすべてチェックします。

 だから、四季報を読んでいる時間はそうとう長いと思います。普段は1日2時間くらい、多いと10時間くらい読み続けることもあります。

──そうして投資先を絞っていくのですか。

 はい。僕は読みながら、赤、緑、青、黄色の4種類の付箋を貼っていきます。

 赤は保有している銘柄、緑は今すぐ買ってもいいと思う銘柄、青は株価が下落中で、その動きが止まったときに買うか買わないか決めようと思う銘柄、黄色は今は買えないけど、いずれ値が下がったら買ってみたい銘柄です。

──それぞれどれくらい貼るのですか。

 赤は当然、そのときによって違います。緑は少ないですね。3つとか4つとか。青は時期によって違いますが、今はコロナ・ショックで多くの銘柄が下落しているので、いつもよりかなり多く貼っています。黄色は40~50銘柄くらいですね。

──次は緑のどれかを買う、ということでしょうか?

 その可能性は高いです。ただ、青、あるいは黄色から一気に緑に格上げし、その勢いで買うこともあります。

──四季報にはさまざまなデータが掲載されていますが、それらのデータを読むコツのようなものはありますか。

 その号に出ているデータだけで判断せず、前の号からどう推移したか、どう変化したかをチェックすることですね。

 僕は資産ベースで割安かどうかを判断するわけですが、前にも言ったように資産というのは3カ月とか半年で大きく増えたり減ったりするものではありません。今回のコロナ・ショックや東日本大震災のような大きな出来事があったときは別ですが。

 だからこそ、ちょっとした変化を見逃さないことが大事なんです。

──例えばどんな変化に注目するのですか。

 僕が重視しているのは株主構成です。大株主が変わったりしたら、TOB(株式公開買い付け)やMBO(マネジメント・バイアウト/経営陣買収)など何かが起こる予兆と考えられます。

 自社株を買ってすぐに消却したとか、従業員持株会の割合が変化したとか、注意深くチェックします。

──前の号と照らし合わせながら読むのですか。

 いえ、読んでいて「アレ、ここ、前と変わったかも」とか違和感があったら、前の号をひっぱり出して、確認します。

──1冊丸ごと頭に入っている、ということでしょうか?

 それは言い過ぎですが、銘柄によっては何度も繰り返し読むので、ちょっとした変化でもだいたいはわかります。

最も重視するのは「理想のポートフォリオを目指す」こと

──現在の保有銘柄数を教えて下さい。

 主力銘柄、つまり将来株価が上がることを期待して保有しているバリュー株は21銘柄(4月17日現在)です。

 それ以外に優待株も44銘柄持っています。

──株主優待にも関心があるのですか。

 昔は株主優待を実施する銘柄も少なく、インカムゲインも重視しなかったのですが、2015年ぐらいから優待株ブームもあったので、少し買ってみたんです。すると思ったよりパフォーマンスも良かった事から、以来、優待株も買うようになりました。

 今は44銘柄(4月17日現在)保有しています。ただし、優待株は最低単元で買ったほうが利回りが高いので、最低単元の保有がほとんどで、すべて足しても資産全体の5%未満です。

──主力銘柄は21銘柄とのことですが、どれも扱いは同じですか。投資家の中には保有銘柄にランク付けをする方もいるようですね。

 僕は1位から21位までランキングをつけています。

──ランキングの基準を教えて下さい。

 基本は『PER × 実質PBR(含み資産を時価評価した)=5倍以下』のバリュー株をベースにして、さらにカタリスト(触媒)がよりある銘柄、何らかの材料がある銘柄からランキングしていきます。

──なるほど。今はどういう銘柄を上位に置いているのですか。

 例えば、今のように市場が大きく動いているときは、あまり小型株ばかりにしてしまうと流動性の面で身動きが取れなくなってしまうので、機動的に売買がしやすい流動性が高い大型株の比率を高めたりしています。

──これだけ資産があると、配当金だけでも相当な額になりそうです。

 あまり配当に関しては意識はしていないのですが、現在のポートフォリオで計算して年500万円程度配当金が見込めますね。

──具体的に、どんな銘柄を上位に置いているか、教えていただけますか。

 大型株で言うと今はJR東海(東海旅客鉄道)三菱地所オリックスが上位ですね。

──持ち株数も、そのあたりの銘柄が多いのですか。

 いえ、持ち株数が多いのは丸八ホールディングスで、ポートフォリオの10%を占めています。この銘柄は典型的なネットネット株なんです。時価総額の約3倍の現金・有価証券を持っていますし、加えて約140億円の賃貸用不動産も持っています。

 個人的にはいつかMBOがあるのではないかと想定しつつ、配当利回りも5%近くあるので、「インフレに強い定期預金感覚」で長期保有しています。

──売るタイミングについてもお聞かせください。
 例えば含み益が何割になったら売る、というようなルールを決めているのですか?

 それはありません。先ほど緑の付箋を貼ってある銘柄が3つ、4つあるといいましたよね。それらの銘柄とランキング最下位の銘柄を比較して、緑のほうが期待値が高いと思ったら、入れ替えます。

──今、売るといくらもうかる、といった考えはしないのですか。

 そうですね。僕が最も重視するのは目先の利益ではなくて、自分にとっての理想的なポートフォリオを作ることです。そこに注力していれば、結果はおのずとついてくると考えています。

初心者へアドバイス。投資資金が少ない人は、まずは節約を

──では、最後にこれから投資を始める人、あるいは投資を始めて間もない人にアドバイスをお願いします。

 まだ20代か、30代前半くらいで、投資資金も限られているという人には、まずは節約してお金を貯めましょうと言いたいですね。

 というのも、僕は若い頃から年間20%の利益を目標にしてきましたが、一般に株式投資のパフォーマンスは平均すると年間7%程度と言われます。100万円の資金があったとしても年間7万円稼げれば上々ということです。

 そこで考えてほしいのが「節約」です。1年間に生活費や遊興費で100万円使っているとしたら、そのうち7万円節約すれば、投資するのと同じ成果を上げられるわけです。

──なるほど。それくらいなら無理なくできそうですね。月に1度か2度、飲みに行くのを我慢すればいいだけですし。

 そうなんです。その節約した資金を元に株式投資を始めるのもいいと思います。節約で貯めたお金や給与の一部を少しずつ株式投資の口座に入れて、無理のない範囲内から始めていくのが良いと思います。

 ただ株式投資は、今回のコロナ・ショックみたいに暴落に見舞われることもあります。短期間ではどうしても株価の変動に一喜一憂してしまうと思いますが、長期間続けることにより、その株価の変動を打ち消しあうことで、複利効果を満喫しながら適正なリターンを得ることができるんです。

 継続は力なり。10年より20年、20年より30年続けたほうがより有利になるはずなんです。

 だから、若いうちに始めるべきです。ただし、その場合も節約を心掛けるべきだと思っています。

──かぶ1000さんは高校生にして1,000万円の資産を持っていたのですから、節約なんて無縁なのかと思いました。

 高校生で大もうけした時は多少無駄遣いもしましたが、最初の資金を貯める時は、1円単位で節約してましたね。無駄遣いは一切しなかったです。

 資金が少ない時ほど節約は大切です。今の100円が10年後に6倍になる(20%の複利計算)と考えたら、今使うより絶対に投資しようと思っていました。

──とくに投資資金が少ないうちは節約が大事だということですね。

 それは間違いありません。

──銘柄選びについてもアドバイスをいただけますか。

 最初は自分がよく知っている会社、馴染みのある業種のほうがいいと思います。全く縁のない分野だと、その会社のリポートなどを読んでも何が何だかさっぱりわからないでしょう。

 同じ意味で、BtoBよりBtoCの会社をすすめます。外食や小売りなら、店に足を運べば繁盛しているかどうか自分の目で確かめられますからね。

──なるほど。あとはやはり、バリュー銘柄ですか。

 全く投資の知識がない人に割安で、将来上昇が見込める銘柄を狙えといっても難しいと思います。

 そういう意味では、「超優良株をフェアバリューで買う」、というのがベストな選択かもしれません。超優良株は普段は割高ですが、市場が暴落した時には下落するのでその時は千載一遇のチャンスですね!

──かぶ1000さんは、株価が下落している今はチャンスととらえていると伺いました。初心者も今、買うべきでしょうか。

 これだけボラティリティが高いと、買うタイミングをなかなか見極めきれないので買いにくいかもしれません。ただ、全体が大きく下がるときは滅多にないので、勇気をもって無理せず少しずつでも買っていくのがいいと思います。

 また保守的にいくなら、ボラティリティが大きい時は避けて、相場が落ち着いてから買っても遅くないので、値動きが少し落ち着くまで待つというのもありだと思います。

──初心者は様子を見ながら少しずつ投資した方がよさそうですね。今日はどうもありがとうごさいました。

四季報を読むのが大好き、毎日時間をかけて読み込んでいるというかぶ1000さん。なんでも、トイレの中でも読んでいるのだとか…!?

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