積み立て投資は中断できる

 新型コロナウイルスについては厳しい状況が続いています。世界中での感染者数は200万人を超えても増加ペースが落ちることなく増え続けています。死者も10万人を超えました(*)。

(*)2020年4月15日時点で感染者197万人、死者12万人

 国内では緊急事態宣言を受け、夜に営業する飲食店などが営業縮小したり、週末は多くのお店が営業停止しています。すでにお店がつぶれてしまい、仕事を失った人もいるようです。個人および事業所向けに給付金の制度が準備されており、ひとりでも多くの人の助けになればと思います。

 積み立て投資は、下げ相場の時期にこそ継続していったほうがいいと、本連載で何度か紹介していますが、中断することもできます。今回は「あえて、積み立て投資の中断を検討するべきケース」について、iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)とつみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)を中心に考えてみます。

どうしても苦しいとき、高金利の借金までして投資継続はしない

 積み立て投資が資産形成上有利なのは、半強制的な自動積み立てを自分に課すことができること、そして相場の下落基調時に積み立てを継続し、その後の回復時に高利回り獲得の原資を得られることにあります。

 また、1万円分稼いでも、本来であれば税引き後8,000円分(税率20%の場合)になってしまう手取りを、iDeCoのように税制優遇のある制度であれば、まるごと1万円分積み立てて、将来の財産に変えられるメリットもあります。運用とすればおいしい特典です。

 しかし、拠出時の一度限りでもらえる25%の利回り(上記の例では8,000円の手取りのはずが、iDeCoに入金すれば1万円になり、25%の運用収益に相当する)を得たとしても、その他の生活費で困窮し、それ以上高金利の借金をしては元も子もありません。

投資のために借金して積み立て投資を継続したケース

 仮に年利15%の利息を取られるキャッシングやカードローンを利用したとします。月2万3,000円を積み立てつつ、同額の2万3,000円を月々借金し続けて1年が経ったとします。

 1年後、27.6万円の借金に利息を加味すると約29.6万円にもなってしまいます。返済に時間をかけるほど、利息はさらに積み上がります。

 つみたてNISAは所得控除のメリットはありませんから、運用収益が利息を下回っていればマイナスです。借金してつみたてNISA口座に入金した意味がないことになります。一方、iDeCoは今のところは所得控除のメリットが大きいものの、返済が長期に及ぶとメリットも失われていきます。

 特にiDeCoは原則として解約できないので(詳しくは「第3の選択肢:解約」)、「解約して返済する」こともできません。老後の貯金があるのに、目の前は借金、しかも利息は増え続ける、という状態になってしまいます。

 運用には高い利回りが期待できますが、標準的な分散投資に、借金の年利15%以上を期待するのは過剰です。また不確実性が伴う中、借金の利息は確実に発生することを考えるべきです。高金利の借金は、基本的に投資原資のトレードオフとならないことを覚えておきましょう。

選択肢は3つ:掛金減額、積立中断、解約

 さて、積み立て投資の掛金を捻出することが難しくなっているとき、見直しを考える選択肢は大きく3つあります。減額・中断・解約です。

第1の選択肢:掛け金の減額

iDeCo
 まず最初に検討したいのは「掛け金の減額」です。iDeCoの場合は、最低5,000円まで引き下げることができます(「加入者掛金額変更届」を提出する)。ただし、掛け金の変更は年に一度限りです。これは、所得控除があるため、みだりに増減をさせない規制があるからです。

 再び増額するのはちょっと先になってしまいますが、それでも積み立てをできれば続けてみてください。毎月の拠出限度額は将来に繰り越されず消滅してしまうので、この枠を使わないのはもったいないからです。

つみたてNISA
 つみたてNISAは自由に積立額を変更できます。同一年内であれば減額した分を年末に取り戻すことは認められます。

第2の選択肢:積み立ての中断

 次の選択肢は「積み立てを中断」することです。所得が大きく減少し、掛金を出すことがどうしても苦しい場合は、中断も選択肢です。

iDeCo
 iDeCoの場合は、掛け金の中断をいつでも行うことができます(「加入者資格喪失届」を提出し運用指図者になる)。掛け金中断後も資産は残っているため運用は継続することになります。また、改めて加入者となる手続きをすることで、積み立てを再開することができます(法律上、こちらには年1回の規制がないので、いつでも再開は可能です)。

つみたてNISA
 つみたてNISAの場合は、毎月の購入の計画を変更し、新規購入をゼロにして中断します。こちらも再開は可能です。

第3の選択肢:解約

 最後の選択肢は「解約」です。できれば積み立てを中断したとしても積み立てた額は残しておきたいものです。今の時期、元本割れしている可能性もあります。しかし、借金をするくらいなら、自分の資産を解約して資金使途に充てる方がいいでしょう。

iDeCo
 ただし、iDeCoの場合、解約は基本的に不可能です。国民年金の保険料を免除されている状態(基本的には無職)で、拠出期間が3年以下もしくは資産額25万円以下に限られます。3年以上積み立てをしていた場合(これは企業型確定拠出年金もiDeCoもどちらも期間に数える)は期間の対象外ですし、年間27.6万円(月2.3万円)を1年続ければ資産額の要件もオーバーして解約はできません。

 資産額については評価額が下がったことにより25万円を下回る可能性もありますが、数年積み立てればそれでも25万円以上ということが多いでしょう。どちらの要件も「原則60歳から受け取り」を確定拠出年金制度が求めているため、厳しいものとなっています。

つみたてNISA
 つみたてNISAの場合、解約は自由です。年単位で資産管理されていますから、運用益がまだ残っている過去分などから解約をしていくといいでしょう。運用益非課税のメリットは獲得することができるからです。

苦しい時期でもできるだけ投資を続けていこう

 積み立て継続が困難になったときに検討するべき3つの選択肢を考えてみました。積み立て投資を続けていくに越したことはありませんが、無理をするのも避けなければいけません。

 苦しい時期がまだ続きそうです。特に収入が大幅に減少している場合、積み立ての見直しも考えて、この状況を乗り越えていきましょう。

 そして、うまく乗り越えたら、積み立ての再開、積立額の増額などを忘れずに行っておきましょう(←実は、これが一番難しいことなので、本当に忘れないでくださいね!)。