新型コロナウイルスの影響により、決算発表を延期する企業が相次いでいます。これにより株価にどのような影響が生じるでしょうか?

2020年3月期の決算発表・延期が相次ぐ

 新型コロナウイルスの影響は、企業の決算発表にも大きな痛手となっています。自宅勤務の広がりにより、決算作業を行う人員の確保ができなかったり、監査法人による監査がいつもと同じような形でできないなどの理由で、2020年3月期の決算発表を延期する企業が相次いでいます。

 例えばTDK(6762)は当初4月28日に予定していた決算発表を5月15日に延期、コマツ(6301)は4月30日から5月18日に延期としました。

 これ以外にも、日本電産(6594)HOYA(7741)住友電気工業(5802)などが決算発表の延期を宣言し、ソニー(6758)も状況によっては延期の可能性があるとのことです。

本決算は株価にとっても最も重要

 上場企業は、年に4回の決算発表が義務付けられています。その中でも1年の決算期が終わった後に発表される本決算は、株価にとっても最も重要。

 それは、1年間の業績が明らかになるだけでなく、翌期の業績予想が企業側から発表されることにより、その内容次第で株価が大きく動くことが多いからです。

 実際に、本決算の発表を境に、それまで軟調だった株価が一転して上昇したり、逆に力強く上昇していたのが急速に下落に転じたりするケースが目立ちます。

決算発表延期により株価にはどのような影響があるのか?

 決算発表の延期は、株価にどのような影響があるのでしょうか? 筆者の私見ですが、「株価のトレンドが長続きするのではないか」と考えています。

 良くも悪くも、決算発表というのは一区切りになりやすいタイミングです。例えば、業績悪化懸念により株価が大きく下落していた銘柄が、決算発表により、大方の予想通りの悪い数字を発表したところ、悪材料出尽くしで逆に反転上昇に転じることはよくあります。

 しかし、決算発表が先送りにされると「きっと業績が良さそうだなあ」と思っても、本当に業績が良いのか答え合わせが決算発表までできません。足元で株価上昇が続いていた場合、その動きが決算発表まで続く可能性が高いのではないかと思います。

 逆もしかりで、新型コロナウイルスの影響をもろに受けて株価が大きく値下がりしている銘柄は、区切りとなる決算発表の時期まで、軟調な動きが続くものが多いのではないでしょうか。

決算発表にどのように対応すべきか

 こうした状況を踏まえ、どのように対応していけばよいでしょうか? 筆者は、銘柄ごとの株価のトレンドに従っておくのが無難だと思います。

 この環境下であっても、好業績で上場来高値を更新している銘柄もありますし、基本は業績が良い銘柄を選択することに変わりありません。しかし、新型コロナウイルスの影響が業績にどの程度のインパクトがあるかどうかは個人投資家にはなかなか判断は難しいのも現実です。したがって、例えば好業績であっても株価が下落しているものは見送るのが賢明です。

 その上で、もし決算発表において好業績が継続する可能性が高いことが確認でき、かつ株価も上昇トレンドに転じるのであれば、それを見てから買っても遅くないと思います。

 また、新型コロナウイルスの影響がプラスに働くと期待される銘柄(いわゆる「テーマ株」)は、期待感が先行しており、足元の業績はそれほどでもないことが多いです。したがって、ファンダメンタルズよりも株価のトレンドに従って売買する方が安心です。

 すでに保有している銘柄については、決算発表がいつになるかをあらかじめチェックしておきましょう。そして、決算発表をきっかけに株価が急落するリスクが心配だ、という方であれば、決算発表前に保有株を売却しておくことも一考です。

 今は平時のマーケットではありません。そのため個人投資家が業績を予想することも困難ですし、企業が発表する業績予想の信頼性も低下しています。業績予想を信じ、株価が値下がりしている中を買い向かうことに対するリスクはいつも以上に高いということをぜひ認識してください。