要約
コロナ・ショックを背景に株式相場がいまだ不安定に推移しているため、ディフェンシブ銘柄をチェックしていきたいと思います。その中でも今回は、衛生用品などを取り扱う家庭用品メーカーを選別します。
家庭用品メーカーとして馴染みがあるのは、日本のユニ・チャーム(8113)や花王(4452)だと思いますが、(1)収益性(2)配当利回り(3)バリュエーションの観点から、米国株式のディフェンシブ銘柄も投資対象として魅力的と考えられます。
特に、P&G(PG)は、収益性と配当利回りが相対的に高く、バリュエーションも他の銘柄と比べて割高に見えないため、注目されます。
以下で、日米の5銘柄についてみていきます。
ユニ・チャーム(8113)
(1)収益性
2018年12月期営業利益率:13.8%
2019年12月期営業利益率:12.6%
※出所:決算短信の「コア営業利益」項目より楽天証券作成。会計基準はIFRS
(2)予想配当利回り
2020年12月期:0.8%
※出所:ブルームバーグ市場コンセンサス(2020年4月6日取得)、4月3日終値より算出
(3)バリュエーション
予想PER:35.9倍
※出所:ブルームバーグ市場コンセンサス(2020年4月6日取得)、4月3日終値より算出
ユニ・チャームは紙おむつやマスクなどの衛生用品やペットケア用品を展開するメーカーです。長期的な成長ストーリーが描きやすいため(世界的に高齢化が進み、大人用紙おむつの市場が拡大。その市場でシェアを確保する)、多くの投資家から高く支持されていると考えられます。
2020年12月期業績は、中国向けベビー用紙おむつの販売苦戦が緩和すると想定されることから、営業利益は回復が見込まれています。マスクなど衛生用品の需要拡大も期待されます。
一方、リスク材料は、世界的な需要拡大を背景にした紙パルプの価格上昇です。
花王(4452)
(1)収益性
2018年12月期営業利益率:13.8%
2019年12月期営業利益率:14.1%
※出所:決算短信より楽天証券作成。会計基準はIFRS
(2)予想配当利回り
2020年12月期:1.7%
※出所:ブルームバーグ市場コンセンサス(2020年4月6日取得)、4月3日終値より算出
(3)バリュエーション
予想PER:25.7倍
※出所:ブルームバーグ市場コンセンサス(2020年4月6日取得)、4月3日終値より算出
花王は洗剤、ハンドソープ、紙おむつなどの家庭用品の他、メイクアップやスキンケア等の化粧品、化学品まで幅広く展開するメーカーです。
日本企業としては最長レベルの連続増配を実現しており、多くの投資家から安心感が持てる銘柄として認識されていると考えられます。国内売上高構成比が高く、長期的な成長ストーリーは描きづらいですが、今は為替動向などに左右されない面が好感されているとみられます。
コスト面では、原油価格の下落も追い風になるでしょう。リスク材料は、化学品の需要と、メイクアップ化粧品や日焼け止め、デオドラント類の売れ行きです。
花王の売上高構成比(2019年12月期)
- ファブリック&ホームケア:23.3%
- スキンケア・ヘアケア:22.1%
- 化粧品:19.5%
- ケミカル:18.5%
- ヒューマンヘルスケア:16.5%
※出所:決算短信より楽天証券作成。セグメント間消去または調整前の売上高ベース。
P&G(PG)
(1)収益性
2018年6月期営業利益率:20.0%
2019年6月期営業利益率:8.1%
2020年6月期2Q営業利益率:24.6%
※出所:Annual Report及びプレスリリースより楽天証券作成
(2)予想配当利回り
2020年6月期:2.6%
(3)バリュエーション
予想PER:23.4倍
※出所:ブルームバーグ市場コンセンサス(2020年4月6日取得)、4月3日終値より算出
P&Gは、洗剤、トイレットペーパー、紙おむつなど家庭用品の他、サプリメントや、SK-Ⅱ、OLAYなどのスキンケア製品も展開しています。
前期は、シェービングブランドの「ジレット」の評価損計上などにより営業利益率が悪化しましたが、足元2020年6月期2Qの営業利益率は24.6%と、前年同期の22.3%から改善しています。
非常に高い知名度と販売規模の大きさを背景にした高い収益性がP&Gの魅力と考えられます。
P&Gのセグメント売上高構成比(2019年6月期)
- ファブリック&ホームケア:33%・・・衣料用、食器用洗剤など
- ベビー、フェミニン&ファミリーケア:27%・・・紙おむつ、トイレットペーパーなど
- ビューティ:19%・・・シャンプー、スキンケアなど
- ヘルスケア:12%・・・歯磨き粉、サプリメントなど
- グルーミング:9%・・・シェービングなど
※出所:Annual Reportより楽天証券作成
リスクは、デオドラントやSK-Ⅱ、OLAYなどのスキンケア製品の売れ行きです。為替の面では、ドル高になると換算為替で業績にネガティブな影響を与えます。
売上高構成比では北米が45%、ヨーロッパが23%、インド、中東、アフリカ地域が7%、ラテンアメリカが6%です(2019年6月期)。
ユニ・リーバ(UL)
(1)収益性
2018年12月期営業利益率:24.8%
2019年12月期営業利益率:16.8%
※出所:Annual Reportより楽天証券作成。会計基準はIFRS
(2)予想配当利回り
2020年12月期:3.7%
※出所:ブルームバーグ市場コンセンサス(2020年4月6日取得)、4月3日終値より算出
(3)バリュエーション
予想PER:19.2倍
※出所:ブルームバーグ市場コンセンサス(2020年4月6日取得)、4月3日終値より算出
ユニリーバは、英・蘭系のメーカーで、ADR(米国預託証券)で米国株式市場にも上場しています。デオドラント、シャンプー、ホームケア製品の他、アイスクリームやお茶なども展開しています。
新興国の売上高比率が約6割と相対的に高く、成長ポテンシャルのある銘柄とみられます。ただ、コロナ・ショックが落ち着かない現時点では、新興国の為替や経済環境が懸念材料として捉えられそうです。
ユニリーバの売上高構成比(2019年12月期)
- ビューティ&パーソナルケア:42%・・・デオドラント、ヘアケア、スキンケアなど
- フード&リフレッシュメント:37%・・・アイスクリーム、ドレッシング、お茶など
- ホームケア:21%・・・住居用洗剤など
※出所:Annual Reportより楽天証券作成
クロロックス(CLX)
(1)収益性
2018年6月期利益率(税引前継続事業利益):17.2%
2019年6月期利益率(税引前継続事業利益):16.5%
※出所:Annual Reportより楽天証券作成
(2)予想配当利回り
2020年6月期:2.4%
※出所:ブルームバーグ市場コンセンサス(2020年4月6日取得)、4月3日終値より算出
(3)バリュエーション
予想PER:27.7倍
※出所:ブルームバーグ市場コンセンサス(2020年4月6日取得)、4月3日終値より算出
クロロックスは、住居汚れの拭き取りシートやゴミ袋などを展開しています。コロナウイルス感染防止策を背景にした需要増加と、原油価格下落の恩恵を受けるメーカーと考えられます。
日本では馴染みがありませんが、米国ではどのドラッグストアでも見かけるブランドと言ってよいでしょう。
バリュエーションの水準を見る限り既に高く評価されていますが、感染拡大が続く限り物色されやすい銘柄とみられます。
クロロックスの売上高構成比(2019年6月期)
- クリーニング:34%・・・住居汚れの拭き取りシート、住居用洗剤など
- ハウスホールド:30%・・・ゴミ袋、ラップ、コンテナ容器など
- ライフスタイル:20%・・・ドレッシング、ソース、飲料用ろ過フィルターなど
- インターナショナル:16%・・・南米、カナダ、アジアなどの売上
※出所:Annual Reportより楽天証券作成
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