金のポジション調整と北朝鮮危機

2017年9月25日(月)掲載分より

 7週間連続で増えていたNYMEX(ニューヨーク・マーカンタイル取引所)投資家ロングポジションが8週間ぶりに減少しました。さすがに900トンを超え、1,000トンに近づいていたポジションの重さに対する警戒感と、決め手となったのはFOMC(米連邦公開市場委員会)での予想以上の「タカ派」的な内容でした。10月からのバランスシートの縮小、つまり資産の売却開始と、年内にもう一度の利上げの意図をはっきりさせたことは、市場の予想を大きく上回るものでした。

 アジア時間の木曜日早朝のこの発表と同時にゴールドは1,315ドルから1,280ドル台まで急落、その後1,300ドルを回復しましたが、金曜日は1,290ドル台とほぼ1カ月ぶりに1,300ドル割れの引けとなりました。

 先週のレポートで「調整は自然」と書きましたが、1,300ドルを割ることはないだろうという予想は外れました。ただ、国連総会でのトランプ大統領の非常にアグレッシブな発言(「北朝鮮を滅ぼすしかなくなる」)や、対する北朝鮮側の反応でマーケットは神経質になり、1,297ドルまで戻して1週間が終わりました。

 ある程度のロングポジション調整はまだ続く可能性がありますが、やはりこの北朝鮮情勢が続く以上、ゴールドが大きく下落トレンドに入ることはないと考えています。

CFTC Commitment of Traders Report as of  19 Sep 2017
2017年9月25日(月)掲載分より

出所:池水氏のレポートより抜粋
右軸:投資家ポジション(トン)
左軸:ドル建てゴールド価格

 投資家ロングポジションは907トンから841トンへ8週間ぶりの減少となりました。

 

1,300ドルホールドできず

2017年9月22日(木)掲載分より

 FRB(米連邦準備制度理事会)の予想外の米国経済に対するポジティブな見方が、大きくドル買いとゴールド売りを触発することになりました。特にゴールドは1,300ドルを割ったことによって、よりロングからの売り逃げが増えてきているようです。

 NYMEXのロングが800トンを超え、歴史的に天井感がある1,000トンに近づいていたこと、これにタイミングをそろえるようなFRBの予想より早い10月からのバランスシートの縮小、つまり資産の売却開始、そしてこれも意外だった年内もう一回(12月)の利上げの意図。ロングを持っている投資家の売りがありそうです。

 しかし、国連でのトランプ大統領の北朝鮮への過激なスピーチに対する北朝鮮の反応が気になります。ドル/円は112円半ば。

 

FOMC声明でゴールド急落

2017年9月21日(木)掲載分より

 東京時間朝3時、FOMC後の声明で、10月から資産の売却を始めること(バランスシートの縮小)、そして年内あと一回の利上げの見通しを発表したことから、ゴールドは1,315ドルから一時1,296ドルへ急落。1,300ドルを割り込む場面がありました。現在は1,300ドルを回復。

 ドル/円は111円から112円半ばまで急騰、円建ては若干の下げとなっています。年内の利上げはもはやないというマーケットの見方であっただけに、この声明はマーケットにショックを与え、ドル買い、ゴールド売りにつながりました。

 ただ1,300ドルは現在のレンジのサポートと見られているだけに、完全にここを割り込むかどうかは注目です。

 

FOMC結果待ち

2017年9月20日(水)掲載分より

 神経質な動きでしたが、結果的には小動き。現在行われているFOMCの内容待ち。トランプ大統領の国連演説はアグレッシブでそれに呼応してゴールドは1,310ドルを超えてニューヨークは終わりました。

 

ゴールド・プラチナスプレッドが記録更新

2017年9月20日(水)掲載分より

 ゴールドとプラチナの値差が一時360ドル(約1,290円/grm)まで広がり、過去最高の逆転幅となりました。今年の年末で逆転してから3年となり、期間的には最長記録を伸ばしつつあります。まだまだ続きそうですね。

 

ゴールド調整売り続く

2017年9月19日(火)掲載分より

 先週は7月から続いたゴールドの上昇の、初めての調整ウイークになりました。

 北朝鮮のさらなるミサイル発射、そしてロンドンでの地下鉄テロと不安材料はありましたが、マーケットはほぼそれらを無視し、ここまで1,200ドルから上昇した分のポジション調整が入ってきています。

 ゴールドの強基調は変わらないと考えますが、さすがに150ドルの上げがほぼ調整なしにきたこと、そしてNYMEXの投資家ポジションが900トンと、歴史的な天井と見られる1,000トンに近づいていること、そろそろ調整が入るほうが自然だと思います。

 ただ、もちろん危機は去ったわけではないということは忘れてはいけません。ある程度ポジションが整理されると、そこから再上昇もあると思われます。

 今週火曜日からのFOMCがありますが、今月の利上げはまずなし。注目はバランスシート縮小の発表がどんな具合に行われるかということでしょう。

 もしFRBが今年中、たとえば12月に債券の売却を始めるとすると、マーケットは神経質となり株価にとっては下落要因、ゴールドにとってはサポートとなるのではと思います。または、今すぐに開始となると、マーケットがどのように反応するのか、ちょっと検討がつきません。まったく前例のない史上初めてのこと。これは実際のFOMCの結果を見て、それに対するマーケットの反応を見るしかないですね。ゴールドの調整売りが続いた場合、下値のめどは1,300ドル。ここを割ることはないと考えます。上値の抵抗線は1,350ドル。ここを超えるともっと上が見えると思います。

 ゴールドとドル円がほぼ完全に打ち消す動きとなっており、円建ては円安進行のため、その下落幅は抑えられたものとなっています。ドル建てゴールドとは違い、円建てはあまり下げそうにありません。

CFTC Commitment of Traders Report as of  12 Sep 2017
2017年9月19日(火)掲載分より

出所:池水氏のレポートより抜粋
右軸:投資家ポジション(トン)
左軸:ドル建てゴールド価格

 投資家ロングポジションは873トンから907トンへ7週連続での増加。投資家の資金流入が続いています。900トン超えはほぼ1年ぶり。