日経平均は上値を抑えられ、上昇の雰囲気は感じられない

 先週の国内株市場ですが、週末3日(金)の日経平均は1万7,820円で取引を終えました。

 前週末終値(1万9,389円)からの下げ幅は1,569円と大きくなりましたが、先月の安値(3月19日の1万6,358円)と比べてまだ1,500円近く上方に位置しているため、下値を探る動きというよりは、前週に見せた急上昇(2,827円)からの調整といったイメージです。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2020年4月3日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 あらためて先週の日経平均の値動きを振り返ると、1万9,000円を挟んだもみ合いで始まったものの、株価水準を一段切り下げ、週末にかけては1万8,000円台で上値が抑えられる展開でした。

 また、上値が抑えられるといえば、25日移動平均線も上値の抵抗となっています。さらに、ローソク足の並びも週初の30日(月)以外はすべて陰線になっているなど、日足チャートの形からはあまり上昇の雰囲気が感じられないと言えます。

象徴的な材料が出ない限りもみ合いが続きそう

 新年度相場入りとなっても、新型コロナウイルスが相場に影を落としている状況が続いているわけですが、実際に、先週公表された日銀短観や米雇用統計といった経済指標の悪化にも表れています。とはいえ、指標結果に対する株式市場の初期反応は一応ネガティブではありますが、3月の急落時に見せていたような値動きに比べると、その下げ幅は限定的にとどまっていると言えます。

 今週も、2月締めの国内企業の決算発表が多く予定されていますが、これまでの株価急落によってかなりの実体経済悪化への不安を先取りしてきたと考えれば、多少の経済指標や企業業績の悪化は「もう分かりきっていること」として、相場にあまりインパクトを与えないのかもしれません。

 むしろ、「国内で緊急事態宣言が出される」「延期されていた中国全人代の開催スケジュールが発表される」といった象徴的な材料の方が株価を大きく動かす可能性があります。

 こうした材料が出てこない限り、日経平均は警戒感がくすぶる中で動きづらく、一定のレンジ内でのもみ合いがしばらく続きそうというのがメインシナリオになりますが、このもみ合いの展開が「本格的な上昇への足場固め」となるのか、それとも「長期相場低迷の入り口」となるのかが中長期的な焦点になってくると思われます。

■(図2)日経平均(週足)チャート(2020年4月3日取引終了時点)

出所:Bloombergデータ等を元に筆者作成

株価底打ち後も低迷続く「リーマン・ショック型」の展開に?

 足元の株価急落は過去の「リーマン・ショック」や「チャイナ・ショック」、「米中摩擦」時と比べても遜色ない下げとなっています。ただ、今回注目するのは下げ幅の大きさではなく、株価が底打ちした後の展開がどうなるかです。もっとも、まだ底を打ったわけではありませんが、話を進めます。

「チャイナ・ショック」や「米中摩擦」の時は、株価が底値圏を形成してから右肩上がりの回復傾向をたどり、比較的順調に元の株価水準まで戻していきましたが、「リーマン・ショック」の時は株価が底打ちしてからも低迷したもみ合いが続き、株価が本格的に上昇するにはアベノミクス相場まで待たなくてはなりませんでした。

 では、今回はどちらのパターンになりそうかと言えば、残念ながら「リーマン・ショック」型になってしまうかもしれません。

■(図3)景気動向指数の推移

出所:内閣府発表データ等を元に筆者作成

  上の図3は今週に2月分が公表される予定の景気動向指数の推移を示したものです。

 景気動向指数には先行指数・一致指数・遅行指数の3つがありますが、例えば、「チャイナ・ショック」の時は、先行指数や一致指数が低下したものの、遅行指数が低下する前に持ち直したことで、株価の回復ペースは比較的早いものとなりましたが、リーマン・ショックの時は、元々低下傾向にあった先行指数や一致指数がさらに急低下し、それに続く格好で遅行指数も低下してきました。

 足元の景気動向指数についても、米中摩擦や消費増税の影響もあって、先行指数と一致指数がすでに低下傾向を描いていますが、さらに、新型コロナウイルスの影響が出てくる2月分が今週発表されるため、先行指数と一致指数の急低下と、まだ踏ん張っている遅行指数が低下に転じる可能性があります。

 今回の「コロナ・ショック」と「リーマン・ショック」は、実体経済の悪化と金融危機発生の順序や構造が異なるため、単純に比較することはできないという見方はあるものの、実は景気がピークアウトし、減速傾向になる中でショックが追い打ちを掛けたという構図は似ています。

 従って、新型コロナウイルスをめぐる事態の長期化はリーマン・ショック型の値動きのパターンとなり得るため、注意が必要かもしれません。