二番底を警戒
先週の動きで、ドル資金手当ては一巡した感があり、これまでの株安、債券安、ドル買いの動きから、先週は株買い、債券買い、ドル安の動きとなりました。
ドル/円はあっという間に1ドル=111円台から107円台に下落しました。週間では毎週、4円幅で動く相場となっており、1990年代のようにピンポン玉のように動く相場となっています。3月を振り返っても年間の下落幅は10円を超えており、1カ月間で昨年の年間値幅8円30銭(筆者試算)を超えてしまいました。動く時は動くものだと改めて思い知らされました。
この株連騰を受けてマーケットには一服感が漂っていますが、安心感と先行きの不安感も交錯している状況となっています。
今週は期末期初を迎えるため、期末期初絡みの資産調整の需給で相場がかく乱される可能性もありますが、その需給は読みとれません。しかし、期末明けの4月1日以降は、いったん一服した相場が、感染拡大が止まらない状況を背景に二番底を探りに動く可能性もあり、警戒する必要がありそうです。
いよいよ3月の経済実体を反映した経済指標が発表されてきます。相当悪い数字が出れば、相場は反応しそうですが、まだ経済指標によって相場が大きく動く地合いではないようです。先週3月26日に発表された、3月第3週(3月15~21日)の新規失業保険申請件数は328万件を超えました。328万件とは、前週の28万件の11倍強です。過去最大は1982年10月の69万件で、328万件は5倍弱の件数となりますが、比較しても仕方がないような件数です。しかし、この衝撃の数字が発表されても相場はあまり反応しませんでした。
二番底模索
「経済よりも人命」と各国指導者たちが強調しているように、マーケットも経済指標よりも新型コロナウイルスの感染拡大が止まるかどうかを注視しています。感染拡大による経済への影響の深刻度が計りしれないからです。
感染拡大がピークを迎え、拡大スピードが鈍化すれば、経済指標に焦点が移ってくるかもしれません。その場合、欧州指標よりも米国指標により反応しそうです。欧州が悪いというのは既に織り込まれているため、今後の米国経済がどの程度悪化するのかに注目が集まりそうです。
ポジティブサプライズの結果が発表されても感染拡大がピークを迎えていなければ、二番底模索を意識した売り場提供の機会になるかもしれないため注意が必要です。
ドル資金手当てが一巡し、期末明けの今週以降はFRB(米連邦準備制度理事会)のゼロ金利と無制限量的緩和を背景としたドル安相場が続きそうです。ただ、ドル安の動きの中でユーロやポンドは底堅い動きをしているため、クロス円は円高に行きにくい相場となっています。そのためドル/円に対しては円高抑制要因になりそうです。
二番底模索の動きの中で株安、債券高(金利低下)、ドル安の地合いになり、クロス円も円高に動けば、ドル/円もスムーズに105円方向に動きそうです。
流動性リスクに注意
欧米では経済活動がほぼ停止しているにもかかわらず、株や債券や為替のマーケットの機能が働いているのはすごいことだと感嘆します。2001年9月11日の米国同時テロが起こった直後にも為替市場だけは動いていたことに驚いたことを鮮明に覚えています。しかし今回は、もし、ロックダウンが全世界に広がり、経済活動が世界的に停止した場合は、マーケットも相当流動性が薄くなっていくことも予想されるため、注意が必要です。価格変動リスクよりも流動性リスクを警戒することが重要になってきます。
NY州クオモ知事とNZ警察のツイッター
毎日報道されているニュースの中でニューヨーク州のクオモ知事のスピーチが日本の若い人達の注目を集めています。特に兵士を医療現場に送る時のスピーチが感動を与えているようです。はっきりと簡潔でわかりやすく、人々を動かすスピーチです。
もうひとつ注目した文章があります。ニュージーランド警察が3月25日に公式ツイッターに投稿した文章です。このような文章が投稿されていました。
“WE CAN SAVE THE HUMAN RACE
BY LYING IN FRONT OF THE T.V.
AND DOING NOTHING”
「人類を救うにはTVの前で寝転がっているだけでいい。何もしないことだ」という意味になりますが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、家にいるよう呼びかけている投稿文章です。
ハリウッド映画の宇宙からの侵略に対して人類が立ち上がるという定番のストーリーに対して、人類を救うためには「立ち上がらないことだ」とユーモアを交えて“Stay home”を警察が呼びかけています。納得させられる文章です。
新型ウイルスの感染拡大が一日も早く収束していくことを願っています。
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