贈与された現金は生命保険やNISAで有効活用する

 現金の贈与を受けた後、相続人が有効に使う方法があります。それは、毎年110万円などの贈与を受けた子が、生命保険に加入し、保険料をそこから支払うというものです。

 今の保険には保険料として支払った金額よりも多く戻ってくる投資の意味で利用できる保険がありますし、被保険者を被相続人として契約した場合には、相続発生時に死亡保険金が手に入ります。この死亡保険金は一時所得になるので、相続税の課税対象とはなりません。納税資金の原資にもなるので、相続発生時にちょうど手持ちの現金がないといったことが起こっても安心です。

 あるいは、NISAに投資することもできます。毎年100万円までの投資については、値上がり益や配当金が非課税になり、2023年までの10年間は、毎年新たに100万円の非課税枠が追加されます。(平成26年8月現在)親から贈与を受ければ、それはもう子のお金です。そこからの使い道については自分の意思で検討してみましょう。

配偶者には2000万円を非課税で渡すことができる

 贈与の中には、配偶者控除というものがあります。配偶者控除は、婚姻20年以上の配偶者に居住用の不動産またはそのための資金を贈与する時、2000万円(暦年贈与と合わせて2110万円)までが非課税になるものです。

 これは配偶者の老後を考えると利用価値が高い贈与です。2000万円の非課税枠を利用して事前に自宅などを配偶者に贈与しておけば、相続時に相続人同士で自宅の分割のことで揉めることもありません(ただし配偶者の方が高齢の場合は、考慮が必要です)。また、暦年贈与には相続開始3年以内の贈与加算があるとお伝えしましたが、配偶者控除を使って贈与した部分については3年以内加算のルールは適用されません。

 つまり、相続直前でも2000万円というまとまった額を移転でき、しかも贈与税も相続税も発生しません。しかしながら、贈与時には登録免許税、不動産取得税などの費用がかかる他、贈与時には小規模宅地等の特例が使えません(小規模宅地等の特例は、項目28を参考)。

(大久保 栄吾/税理士法人大久保会計 税理士)

※この記事は2016年4月15日に幻冬舎ゴールドオンラインサイトで公開されたものです。

「幻冬舎ゴールドオンライン発 賢い資産の守り方」は、今回をもちまして休載となります。

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