未曾有の災害級の米国経済見通し

 マイナス50%マイナス30%の数字には驚きました。

 米国セントルイス連邦準備銀行のブラード総裁が3月22日、ブルームバーグ社のインタビューで、新型コロナウイルス感染拡大による経済停滞で2020年4-6月期の米経済成長率がマイナス50%に達し、失業率は30%まで悪化する可能性があるとの見方を示したからです。マイナス50%は瞬間とはいえ、米国のGDP(国内総生産)の半分がなくなるということです。非常事態宣言の中、国民の外出が制限されるという環境の中でやむを得ない数字かもしれませんが、それにしても極端な数字です。

 マイナス50%ではないにしても米金融大手も大幅なマイナス成長の予測を出しています。

 モルガンスタンレーは、4-6月期の見通しを前期比マイナス30%、ゴールドマンサックスも同マイナス24%に落ち込むと示しています。

 GDPに占める個人消費の割合は日本が5割強であるのに対し、米国は約7割となっているのが主因で、小売店の営業自粛、外出禁止など内需を停滞させる動きが全米に波及してきていることから、大幅なマイナスに陥るとの見通しのようです。米金融大手の予想はマイナス50%の半分の予想ですが、この数字でも日本のみならず世界が大きな影響を受けるのは必至です。

 工場の生産停止やレストランなどの小売店の営業自粛で、失業率も30%に達するとの見通しですが、今週の26日(木)発表予定の新規失業保険申請件数が注目されます。先週は28万件ですが、今週の予想として、200万~300万件という極端な予想も出始めています。この数字が発表されるのなら、失業率の大幅上昇も現実的なものになるかもしれません。

 このように極端な経済予測が出てきています。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の中で経済が停滞している状況では、発表される経済指標の強弱にもマーケットは全く反応しない、いや反応できない相場になっています。リセッション要因がマーケットの主要テーマになるのは、感染拡大が落ち着いてからになりそうです。

財政出動の効果は?

 FRB(米連邦準備制度理事会)はゼロ金利と無制限の量的緩和策を決定しましたが、資金供給の域を出ず、経済に刺激を与える効果はありません。そのため、各国政府は財政出動を掲げてきていますが、早期に発動されるかどうかが注目されます。

 特に米国の2兆ドルの財政出動が注目されています。リーマン・ショック直後、金融安定化法案が米議会で否決され、NYダウ平均株価が大暴落した二の舞を踏んでほしくありません。米議会との調整が難航していますが、24日(火)、さすがに決裂することはないだろうとの議会通過観測から期待が先行し、NYダウは+2,112ドルと史上最大の上げを演出し、2万ドルを回復しました。

 トランプ米大統領もこの株急騰を見て発言したか分かりませんが、インタビューでイースター祭の4月12日までには企業の活動を元に戻したいとの意向を述べています。

 株急騰と企業活動再開時期が明示されたことから楽観的なムードになっていますが、ただ、財政が出動されても新型コロナウイルスの感染が拡大している限りは、焼け石に水になりかねないことも予想されます。財政が出動されたからといって、これで一安心というわけにはいかないかもしれません。

 WHO(世界保健機関)の報道官は24日、過去24時間の新たな感染者の85%は欧米で発生しており、その内40%は米国で確認されていると報告。米国の感染急拡大によって米国が新たな震源地になると警戒感を示しました。

 フランスやドイツの都市部に全く人がいない映像を見ている限りは、楽観的な見方かもしれませんが、2週間後に第1波のピークを迎え、収束に向かうのではないかと、期待したいものです。

二番底は試されるのか

 為替市場では、ドル資金不足が緩和されずドル全面高が続いていましたが、24日(火)はドル安・円安の相場となりました。12兆ドルといわれていたマージンコール(追証。ドル手当てが必要な金額)も終了に近づきつつあるとの見方もありますが、本当にそれだけの巨額のマージンコールがあるのならば、このドル資金不足はしばらく続くと見た方がよさそうです。

 さらにマージンコールだけでなく四半期末に向けたドル借り換え需要も相当あるといわれています。ドル資金不足はFRBの大量資金供給にもかかわらず、まだしばらくは続きそうな気配です。

 一方で、3月末の決算に向けた日本企業のドル売り・円買い需要もあるとの見方もあります。

 ドル手当て買いの抑制要因になりますが、3月末の期末まではさまざまな臆測が流れ、経験上、終わるまでその実態は分からないことが多いのです。

 これらの動きは、特殊な需給要因で動いているため、実体経済を無視した動きであり、ファンダメンタルズ分析も、チャートやモメンタムなどのテクニカル分析も通用しなくなります。このドル資金需要が収まれば、ドル/円はFRBの強烈な金融緩和からドル安に動くと予想されます。

 しかし、水準を無視したドル手当て買いが続いている間は、円安の目処はおけず、1ドル=112円、115円の節目、あるいはそれ以上の円安に動く可能性も想定されるため、注意する必要があります。

 24日は、財政出動期待から日欧米の株が急反発したため楽観的な見方が漂っていますが、「初めての戻りは売り」との格言もあり、二番底を試す動きも予想されます。これまでの急落で売り切れていない投資家も多いことが予想され、まだまだ相場の乱高下は続かざるを得ないかもしれません。相場シナリオは強弱両方備えておいた方がよさそうです。