コロナショックのあおりで急落した「東証REIT指数」が急反発
東証REIT指数【注1】が、激しく乱高下しています。3月19日に1日で18.5%の暴落となりましたが、今週に入り、23日は13.8%高、24日は12.8%高と、連日の急反発を見せています。通常あり得ない激しい値動きです。
【注1】 東証REIT指数
東京証券取引所に上場しているREIT(リート:不動産投資信託)全銘柄から構成される指数。時価総額加重平均で、時価総額の大きい銘柄ほど組入比率が高くなる。
コロナショックのあおりで、外国人など機関投資家から「問答無用の売り」が出たことが、2月以降の急落につながったと考えられます。一方、平均分配金利回りが3月19日時点で6.7%まで上昇したことから、今週は割安感に注目した買いが増え、急反発につながっています。東証REIT指数の急反発により、平均分配金利回りは24日時点で、5.0%に低下しました【注2】。それでも、なお、魅力的な利回りと思います。
【注2】 平均分配金利回りの上昇・下落
REITの分配金利回りは、1株当たり分配金(会社予想)をREIT価格で割り、年率換算して算出。1株当たり分配金が変わらないまま、REIT価格が上昇すると、分配金利回りは低下する。一方、1株当たり分配金が変わらないまま、REIT価格が下落すると、分配金利回りは上昇する。
REITが日経平均よりも大きく下落・上昇する異常事態に
東証REIT指数は、コロナショックが起こってから、年初来で一時47%も下落しました。日経平均を上回る下落率です。
東証REIT指数と日経平均の年初来の推移比較:2019年末~2020年3月24日
東証REIT指数の年初来の動きを振り返ります。グラフ中の【1】~【4】の動きを解説します。
【1】上昇
コロナショックで日経平均がじりじり下げる中、REITは上昇。世界経済に不安が高まり、金利低下が進む中、利回りを求める投資家が、REITの組み入れを増やした。
【2】下落
新型コロナの感染が欧米にも拡大。世界的に株が急落、日経平均も急落する中、東証REIT指数も下落に転じる。ホテルREITなどに、コロナショックによるマイナス影響が及ぶことが懸念される。
【3】急落
外国人など機関投資家の売りで急落。流動性が低いREIT市場に、一時に大量の売りが出たために、日経平均を上回る下げとなる。
【4】反発
急落により、分配金利回りが上昇したことに着目した投資家の買いで反発。
ここまで「REITとは何か」解説しないまま、市場動向を説明しました。ここから少し、REITの基礎知識について、解説します。
不動産への小口投資を可能にしたREIT
REITの仕組みをご存知ない方もいらっしゃると思いますので、基礎的なことを説明します。REITは、不動産への小口投資を可能にした投資商品です。
個人投資家が不動産に投資する場合、ワンルームマンションからアパート1棟までさまざまな投資対象がありますが、資金規模からおのずと直接投資できる対象は限られます。
REITを通じて投資すれば、都心一等地の大型ビルに投資することもできます(図A)。
<図A>REITを通じて大型物件に投資
一等地の大型ビルにテナントが集中し、競争力のないビルからテナントが流出する「不動産の二極化」が顕著にみられる時代になりました。投資するならば、一等地の大型ビルに投資したいと考えます。
ところが、REITが普及するまでは、一等地の大型ビルに投資するには何百億円という規模の資金が必要でした。個人投資家の不動産投資では、小口で投資できるマンションなどが中心になり、大型ビルへの投資は困難でした。
REITの普及によって、状況が変わりました。今では、小口資金でも、REITを通じて、大型ビルに投資することもできるようになりました。REITは、証券取引所に上場されていて、一般の株式と同じように売り買いすることができます。最低売買単位での投資額は、10万円以下から100万円超までいろいろあります。
REITには、さまざまな種類がある
REITには、さまざまな種類があります。もともとは、不動産に投資するファンドだったのですが、近年は、利回りが稼げるさまざまなものに投資されています。純粋な不動産投資と言えないものも増えています。代表的な種類とファンドは、以下の通りです。
<REIT種別と代表的ファンド、分配金利回りは3月24日時点の会社予想ベース>
この表を見る際に、1つ、重要な注意事項があります。分配金利回りは、あくまでも3月24日時点の会社予想ベースということです。これには、まだ、新型コロナウイルスによる業績への悪影響が反映されていません。
今後、新型コロナの影響による業績落ち込みで、分配金を引き下げるファンドが増える可能性があります。特に、ホテル・リゾート施設に投資するREIT、インヴィンシブル投資法人とジャパン・ホテル・リート投資法人は、新型コロナによるダメージが大きく、分配金が引き下げられるのは、ほぼ確実と考えています。
したがって、分配金が引き下げられる前の、分配金利回りが11~14%に達していますが、信頼性が低いと考えます。
オフィスREITをコアに、レジデンシャル・物流・リテールREITに分散投資
REIT代表銘柄の分配金利回りをご覧いただくと、3%台から10%以上まで、幅広く分散していることがわかります。このような表を見ると、利回りの高いものほど有望で、利回りが相対的に低いものが魅力がないと考える方もいますが、そうではないことを強調しておきたいと思います。
一般的に、利回りが高いファンドほど、将来、分配金が引き下げられるリスクが高く、利回りが低いファンドほど、分配金が引き下げられるリスクが低いと言えます。十分な投資資金があるならば、利回りが高いファンドと低いファンドに、分散投資することが望ましいと思います。
REITに投資する場合、オフィスREITをコア(中核)として、望ましくは、レジデンシャル(住宅マンション)・物流・リテール(商業施設)REITに分散投資すべきと考えています。ホテルREITは、目先、投資を見合わせた方が良いかもしれません。
REIT種別の投資方針を以下に記載します。
◆オフィスREIT
利回りが相対的に低くても、分配金の安定性で評価できるのが、オフィスREITです。このレポートで紹介している3つのオフィスREIT(日本ビルファンド・ジャパンリアルエステイト・森ヒルズリート)は、いずれも都心の一等地のオフィスビルに投資するファンドで、REIT投資のコアとして保有するのに適格と考えています。
日本ビルファンドは、三井不動産が運営する看板ファンドで、ジャパンリアルエステイトは、三菱地所が運営する看板ファンドです。森ヒルズリートは、森ビルの看板ファンドです。分配金利回りは、東証REITの平均分配金利回り、約5%より低いものの、長期投資のコアとして投資するに適格と判断しています。
不動産の利回りは、都心一等地が低く、地方にいくほど高くなります。都心のビルは、テナントが退出しても、立地が良く競争力があるので、すぐに代わりのテナントが入ります。
ところが、地方都市のビルは、テナントが退出すると簡単には代わりのテナントが見つかりません。このため、賃貸料の引き下げ圧力が働きやすくなります。そうしたリスクを織り込んで価格がつくため、地方の不動産は相対的に利回りが高くなります。利回りが高いほど魅力的とはいえません。
◆レジデンシャル(住宅・マンション)REIT
マンション市況にやや過熱感があることに注意が必要です。ただし、住宅・マンションは固定賃料が多く、短期的にはコロナショックの影響を受けにくいと言えます。
◆物流REIT
新型コロナ感染対策で一時的にコストがかさんで業績が弱含むリスクがあります。それでも、中長期にEコマース拡大による需要増の恩恵を受けるので、投資対象として有望と考えています。
◆リテール(商業施設)REIT
短期的にテナントの売上低下で、変動賃料が低下するリスクがあります。ただし、中長期的に、競争力の高い商業施設のテナント収入は安定的と考えています。
◆ホテル(ホテル・リゾート施設)REIT
外国人観光客の減少による業績の悪化が大きく、分配金の引き下げがほぼ確実と予想されますので、今は投資を見合わせた方が良いかもしれません。ただし、それを織り込んで既にREIT価格が大きく下がっていますので、分散投資として保有するならば、問題ないとの考え方もあります。
個別銘柄を選ぶのが大変な人は、東証REIT指数インデックスファンドへの投資が便利
今、REITに投資するならば、オフィスREITをコアとして、住宅マンション・物流施設・商業施設などに、分散投資すべきと思います。ただし、複数銘柄に分散投資するのには、まとまった投資資金が必要です。
小口資金で投資を始めたい方には、投資信託が便利です。ファンドによりますが、数万円単位から投資ができ、かつ、複数銘柄への分散投資ができます。とりあえず、東証REIT指数に連動するように設計されているインデックスファンドに投資するのも良いと思います。
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