不確実性の中でディフェンシブ性発揮、ファンダメンタルズの悪化は限定的か

 新型コロナウイルスの感染拡大がグローバル経済や金融市場に多大な不確実性をもたらす中、BOCIは国内銀行セクターの資産の質や利ざや、採算性に対する影響を分析した。20年の減益決算は避けられないとしつつ、ファンダメンタルズの堅調や低バリュエーション、高配当利回りを支えに、相場の波乱の局面においても銀行銘柄がディフェンシブ性を発揮するとの見方。セクター全体に対し、強気の見通しを継続している。

 銀行セクターではまず、景気てこ入れ策が悪影響を軽減する見込み。金融分野では中国当局は銀行を通じた実体経済支援に向け、逆周期(カウンターシクリカル)的な調節を強化する方針。BOCIはこうした施策が銀行セクターのファンダメンタルズの急速な悪化を押しとどめる効果を発揮し、マーケットの過剰な悲観ムードを和らげるとみている。

 また、時宜にかなった政策は一定程度で、銀行資産の劣化リスクを軽減する見込み。BOCIの分析では、不良債権比率の上昇率は0.22-0.66ポイントの範囲となり、中立シナリオの下では0.45ポイントとなる可能性が高い。また、商業銀行の引き当ては手厚く、資産のある程度の劣化に対処することが可能という。ただ、仮に新型コロナの感染状況が極度に悪化し、世界的な感染阻止への取り組みが効果を上げなかった場合には、不良債権比率がさらに0.42ポイント悪化する事態もあり得るとしている。

 純金利マージン(NIM)はこの先、一段と低下する可能性が高い。主に貸出金利の低下に伴う資産の利回り低下が見込まれるためで、ベンチマークとなる預金基準金利の引き下げは逆に、NIMの縮小圧力の軽減につながる。仮に中国人民銀行(中央銀行)が預金基準金利の引き下げを見送った場合、商業銀行のNIMは約10ベーシスポイント低下するとみられるものの、それ以外のケースでは、縮小幅は1桁にとどまる見通しという。

 BOCIの分析では、商業銀行の20年通期純利益は各種シナリオの下、前年比18.27%減から同1.74%増の範囲となる。この数字は従来予想比で24.47-4.46ポイントの下方修正に当たる。また、仮に世界的に感染状況が制御不能となり、世界経済へのマイナス影響が長期化した場合、銀行銘柄の20年純利益は49.0%落ち込むと分析している。

 H株銀行銘柄は上場以来、一貫して配当を実施しており、配当利回りは13年以降、約5-6%のレンジ。現在では複数銘柄で7%を超える。BOCIによれば、悲観シナリオの下でも、配当利回りは3.17-5.08%と高めの水準にあり、この点から魅力が大きい。

 BOCIは新型コロナによる資産の質や利ざやへの悪影響を指摘しつつも、20年も一定の利益水準を達成するとみており、他セクターと比べたファンダメンタルズの堅調さを前向きに評価している。また、銀行銘柄の現在株価の20年予想PBR(株価純資産倍率)はわずか0.55倍。08年のリーマンショック当時に先進国の銀行セクターが経験したボトム水準に接近していると指摘し、セクター全体に対して強気見通しを継続している。