新型コロナウイルス・ショックでJリートが記録的な暴落

Jリートが大暴落

 本年年明けまでは底堅く推移していたJリート(上場不動産投資信託)ですが、2月20⽇を直近高値として急落し、3月19⽇現在、東証REIT指数は年初来で▲46.6%と、記録的に急ピッチの大暴落となっています。

 きっかけは新型コロナウイルスの感染拡大ですが、感染拡大を抑制するためにイベント⾃粛、学校休校、テレワーク勤務、外出⾃粛など、人々の動きを抑制していることで、商業施設やレジャー施設が休業に追い込まれ、将来的な経済活動に大打撃があるとの予測から、大半のリスク資産が暴落しています。

日米の他資産価格との比較

 しかしながら、下落率を⽇米株式とリートで⾒てみると図のような状況で、Jリートの下落率が群を抜いて大きいことが分かります。本来であれば長期契約で安定的とされるオフィスが主力を占めるJリートがここまで大きく下落するというのは、理論的に説明が難しく、一部の投資家による値段を無視した投げ売りなどが原因で、明らかに下げ過ぎであると考えています。

セクター別にJリートの値動きを分析する

Jリートの業種構成比

 図はARES(不動産証券化協会)分類で⾒たJリートの業種構成比です。新型コロナウイルス感染拡大抑制策のダメージは、利用が大幅に抑制されているホテルや商業施設などへは直接的に大きく影響していると思われますが、長期契約のオフィス、ネット通販が活況の物流施設、安定的な住宅やヘルスケア施設などへの影響は限定的と思われます。

過剰な下落となっている業種もあるのでは?

 一方、年初来の業種別パフォーマンスをGICS分類で⾒てみると、新型コロナウイルス感染拡大抑制策のダメージを最も大きく受けると思われる「ホテル・リゾート」セクターの下落率が▲55.1%で最大となっています。一部の調査によれば、2月の国内ホテル客室売上は前年比3割減で、3月は更に悪化しているとされ、業績大幅悪化は避けられません。▲44.1%と2番⽬の下落率となっている「リテール」セクターも主力の商業施設の売上が落ち込んでおり、下落率が大きいことは理解できます。

 しかし、長期契約が主体とされるオフィスが▲41%、オフィスや物流センター、商業施設などを複合的に運営する各種不動産が▲40.8%、ヘルスケアも▲31.1%と株式市場以上の下落となっています。このような事態になっている理由を考えると、Jリートの投資家が換金売りのためにホテルや商業施設だけでなく、流動性が高い主力のオフィスや物流施設なども併せて売却している影響が出ていると考えています。特に金融機関などからの投げ売りが出ているものと言われています。

長期的視点で見たJリートはバーゲンセールか?

Jリートは長期的には配当と共に成長

 図は東証REIT指数の指数計測開始以来の推移ですが、長い意味で⾒れば、Jリート(赤線)は配当(分配金、青線)に沿った格好で共に成長、その水準は配当利回り4%弱で推移してきました(右中段図)。但し、時折ですが、大幅に変動することがあり、例えば2008~2009年にかけてのリーマンショック時には配当利回り10%程度まで売られる局面がありました。今回の暴落局面でも7%近くまで売られており、リーマン・ショック以来の暴落と言えます。

今後のオフィス市況に注目

 下の図は三鬼商事による東京都心5区のオフィス市況の推移です。2001年以来のデータですが、足元の水準は平均空室率も平均賃料もリーマン・ショック前の2008年頃の水準まで回復してきました。リーマン・ショック後を振り返ると、当時のオフィスの主力テナントであった金融機関がダメージを受けたためにオフィス市況が大幅に悪化、Jリート相場が大幅に崩れた要因となりました。

 では、今回はどうでしょうか?近年のオフィス市況を支えているのはIT業界であると言われています。丸の内や大手町こそ金融業主体ですが、渋谷や六本木の主力テナントは大半がIT企業です。今回の新型コロナ・ショックによってこうしたIT企業が撤退するという話はほとんど出ておらず、オフィス市況がリーマン・ショック後のように大崩れするリスクは小さいと考えています。したがって、今回の暴落は金融機関などによる投げ売りが原因であり、将来のオフィス市況の悪化を予⾒したものではないと考えており、バーゲンセールではないかと考えています。

当資料で使用した指数について
Jリート:東証REIT指数
⽇本株:TOPIX(東証株価指数)
米国リート:FTSENAREITオールエクイティリートインデックス
米国株式:S&P500株価指数

銘柄:
野村アセットのETF「NEXT FUNDS」
NF東証REIT連動型投信(1343)

記事提供元:

野村アセットマネジメント

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