足元の相場環境は
2月下旬から、株式市場は大荒れの展開です。
コロナウイルスによる景気の先行き懸念で大幅下落、ときには米国や中国の景気下支え施策で大幅上昇など、「ジェットコースター相場」となり、NYダウ平均株価は、上昇も下落も1日あたり過去最大幅を記録しました。3月に入ると、欧米でもコロナウイルスの感染が拡大し、株式相場は「下落相場入り」が懸念される事態となっています。
手持ちの資産はどうするか
長期運用で覚悟を決めて積立投資を行っていれば、相場が上がれば手持ち資産の時価評価が上がり、相場が下がれば安く買えるので、あまり心境に変化はないかもしれません。
しかし、退職金など、比較的大きな資産をまとめて投資している場合、毎日の時価評価の変動に「耐え切れない!」となってしまうことが考えられます。例えば、1日3%下落した場合、1,000万円の投資なら30万円が減るわけで、それがもし3日も続いたら、90万円が減ることになります。
「やはりここは、解約して現金だ!」「いや、高くなる可能性もあるぞ。現金にしてしまうと、反発時の利益が得られない。半分だけ解約して半分は残しておこう!」
など、いろいろな考えが浮かんでくると思いますが、売ってしまえば、反発時のチャンスもなくなり、預金の低い利息が付くだけになります。実は、こんな不透明なときに確認したいのが「ラップ商品」。その理由を説明します。
ラップ商品はコース変更が手軽にできる
ラップ商品は、一般的に、複数のコースが設定されていて、コース変更は無料かつ自由にできます。そのため、足元のように、マーケット環境が不安定な局面では、運用コースを保守的なコースへの変更が手軽にできます。
ここでは、「楽ラップ」を例に挙げて説明します。
楽ラップは、基本設計は5つのコースで成り立っています。
実は、コースには、上図のようにTVT(※1)のあり・なしの違いがあります。(※1)TVTとは、株式市場の大幅下落時に株式資産を減らし、債券資産を増やす機能
TVTありのコースは、通常時はTVTなしのコースと同じ資産配分なのですが、市場のボラティリティが高まった時だけTVTが発動し、株式比率を下げて債券比率を上げるオペレーションを実施します。そのため基本は5つのコースとなります。
楽ラップのコース名は数字6桁。「TVTなしコース」は、リスクが低い順に「1000100」から「1000500」までの5コース。「TVTありコースは」、リスクが低い順に「1000600」から「1000900」までの4コースです。
5つのコースは、投資先の2月末時点の大まかな資産配分は、次のようになっています。
表1 楽ラップ各コースの資産配分
(2月末現在、1000100~1000500はTVTなし、1000600~1000900はTVTあり)
上の表で、現金を除き、リスク性資産(株とリート)、安全性資産(債券)に分類してみます。
1000500のかなり積極型コースはリスク性資産(株、リート)が最も多く、一方で1000100の保守的コースは安全性の高い(債券)が多いことが分かります。
楽ラップは、世界最大手の投資助言会社「マーサー」の助言のもと定期的に資産配分が変わるものの、上記の傾向に大きな変化はありません。
では、各コースのこれまでの実績を見てみます。
表2 楽ラップのコース別運用成績 1000100~1000500コース
予想通りですが、保守型の「1000100」は、リスクが小さい分、リターンも小さい結果に。しかし、振り返ってみれば、2016年以降、市場は大きなリスクがなく、株式市場はおおむね右肩上がりで推移してきました。そのため、株式比率の高いコース「1000400」や「1000500」の実績が良い結果となっています。
実際のマーケットと楽ラップの比較
次に、上記のグラフに国内/海外の株式/債券の値動きを並べてみます。
表3 楽ラップのコース別運用成績と、4つのインデックスファンドの比較
(2016年7月以降、月次データより抜粋)
過去を見ていくと株式相場が右肩上がりといえども、何回かは株の大幅下落はありました。しかし、上図の点線部分のように、直後の相場である程度回復したので、結果、右肩上がりになっていることが分かります。
果たして、今回の2月から3月にかけての下落は、上記と同じように、その後戻りを試すのでしょうか?
株式市場の下落局面
リーマン・ショックから約12年が経ちます。株式市場の下落相場となった、当時の市場がどういう動きをしたか、おさらいしてみます。
表4 4つのインデックスデータ(2007年7月~2009年3月、月次データより抜粋)
注目は、国内株と海外株が両方とも下落(上記の赤字部分)したのが14回。
そのうち、8回は、上図の点線のように国内債と海外債が両方とも上昇(上記表で黒字)しています。
ラップの低リスクコースの魅力
話を「楽ラップ」に戻します。
リスクが低いコースである「1000100」の特徴はどうでしょうか。
表3の期間中で、リーマン・ショックの時と同様に、国内株と海外株が下落して、国内債と海外債が上昇したときは、過去4回ありました。
表5 楽ラップの運用期間中に国内株と海外株が下落し、国内債と海外債が上昇したケース
コロナショックによる株価急落で下落はしているものの、2%未満にはとどまりました。
つまり、「株式市場が下がった場合でも、コースの下落幅は小さく、債券市場次第では、月次でプラスも十分に可能性がある」といえます。
次に、国内株と海外株が上昇しているときは、以下のような結果となっています。
表6 楽ラップの運用期間中に国内株と海外株が上昇したケース
上表のように、国内株と海外株が上昇する場合は、リスクの低い「1000100」コースも上昇するケースがほとんどでした。「株式市場が上がった場合には、それなりに上昇についていく可能性が高い」といえます。
つまり、「1000100」コースの特徴は、「株式市場が上がればそれなりに上昇する可能性が高く、株式市場が下落しても下げは限定的で、場合によっては他のコースよりもプラスとなる可能性が高い」といえます。
解約と減額は、現金化して「安心」を得るには最適なのですが、株式市場が反発した場合には、上昇分の利益が得られないことになってしまいます。
相場の反転が早い最近のマーケット動向を鑑みると、株式相場が上昇しても下落してもある程度のプラスが期待できる「ラップのリスクが低いコース」の方が、現金よりは、期待値が高いのではないでしょうか。
上記は楽ラップの例ですが、同じように複数コースが設定されているものとしては、三菱UFJ投信の「ポートスター」、ロボアドバイザーの「THEO」、「ウェルスナビ」、「MSV(マネックス・セゾン・バンガード)」などがありますので、比較検討してみてはいかがでしょうか。
なお、既にラップの投資を行っている方は、「コース変更」で「リスクが低いコース」へと変更が可能です。楽ラップの場合には、「コース変更」は手数料ゼロで行えます。相場が不透明な状況では「リスクが低いコース」で様子を見ながら反発局面は確実に取り、ある程度相場が底入れしたような局面で、もとの「リスクが高いコース」に戻せば、より良い運用成績が得られる可能性が高くなるのではないでしょうか。
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